ささくれた2人
ゴシ
2人の距離は近からず遠からず
12月24日の正午、世間がクリスマスイヴで浮かれ気分の中、俺は教室の端っこで窓の外を眺めていた。
冬休みに入る前のホームルームがだるくて外を眺めているわけではない。かといって道ゆくカップルが羨ましくて見ているわけでもない。じゃあ何でかってなるよな?
隣に座ってる
「……なあ
「…………」
……え?何で?無言でめっちゃ見てくるんだけど。見てくれるのは嬉しいけど、その睨むような目はやめてくれよ。
「
「……………!」
「えっと、……何してんの?」
何も答えてくれない
「
いつも無口な
まさかこんな急な展開が訪れるとは。でも違うんだ。違うんだよ
「こら、まだホームルーム中だぞ!何やっとるか!!」
教壇に立つ先生の怒鳴り声が聞こえる。怒る気持ちはわかる。教壇からは見えない机の下でじゃれあっていると思っているのだろう。
俺は先生に言わなくては。よし、勇気を出して大声で言おう。
「先生ーーー!
先生は
「なんだったんだよ急に。怒られたじゃんよ」
「……手」
「ん?…手?……手が何?」
「手……出して」
「え?指切るつもり?」
なんか怒らせることしたかなと思いながらも、俺は
「手なんか握って何するつもりだよ……ッツ!何すんだよ!!」
「……取れたよ」
「えっと…………ささくれ?」
俺の左薬指のささくれをちぎって嬉しそうに見せる
大人しいとは分かっていたが不器用にも程があるだろ。ささくれ取るのに無言でハサミ向けてくるとか。
笹倉との初絡みがこれか……先はまだ長そうだ。
「……触っちゃった」
「ん?なんか言ったか?」
顔を背けて耳を赤くする笹倉。その時の俺には笹倉の考えてることなどわからなかった。
隣同士に座る俺と
近いようで遠い2人を後に近づけてくれたのはこの『運命の白いささくれ』が始まりだった。
ささくれた2人 ゴシ @54540054
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