ささくれについて

千瑛路音

ささくれについて

 ささくれはいたくてやだ。かさぶたとささくれはちがう。うーん。指先にできたささくれを反対側のツメで取ろうとするがとれない。よくそんなことがある。爪を切った時にできたり、いつの間にかできていたりする。そのちょっとしたぴょこんと出ている皮膚ヒフ一所懸命イッショケンメイ爪と爪の合わさる部分で、ピンセットみたいにささくれを取る努力をする。だが取れない。つるつるすべる感じだ。指先で取るのは論外ロンガイだ。大きすぎるし、柔らかすぎる。爪がいい。刃物を使うという選択肢もあるが、できればけたい。爪切りで皮膚を切るとき、痛くはないけどなんかヤダ。ハサミを使うのは論外ロンガイだ。ただ、爪でささくれが取れたとして、多分に根本から取れると存外ゾンガイ痛い。皮膚の内側が見えていたりする。

ささくれは形が、竹の葉に似ているからやっぱりささくれなのだろうか。竹の節から出てくる葉が、ちょうど爪のわきの皮膚が飛び出ている感じにそっくりだ。

ささくれの登場トウジョウからだいぶたつのにまだ、ささくれが活躍カツヤクすることはある。気が付くとそこにいるのだ。指の本体から少し剥離ハクリされているので、意外イガイツクエなどにこすると存在を主張シュチョウしていく。目の上のたんコブという言葉があるが、あれよりはかなり自己主張が弱いと思われる。

ささくれの登場から引退までの生涯をコマ送りのように見ていると、「ああ、間違って皮膚まで切っちゃったよ。」、「なかなか取れないな。」、「ほっとくか。」、「ああ、ささくれがなんかこすれて気になるな。」、「やっぱり爪切りで切ってしまおう。」、「切りすぎちゃった、少し痛いな。赤くなっている。」みたいな感じ。あとはいつの間にか忘れ去られてしまう。文字にすると、その人生が少し哀愁を与えてしまうささくれに、少しだけ関心を寄せてしまった。自分の心の啓蒙ケイモウすら与えてくれる出題者に感謝カンシャです。何はともあれ、このままささくれの話題を終了させることができる安堵感アンドカンでほっとしているところです。こんなものでいいのであろうか。

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