第233話 彼我の差

「ちと思ったんだがな。アンデッドとは言え、ありゃどう見てもスケルトン系だぞ。脳みそが腐るってのはどうかと思うぞ」

「ゴンロヤ、うるせえぞ。余計なちゃちゃ入れんじゃねえ」


 くだらない言い争いをしながらも、ランポゥの両手の指先がせわしく動く。すぐさまランポゥの魔力と鉄を触媒に百体近くのゴーレムが、それも騎士のように鎧と盾を備えた鉄のゴーレムが創生され、隊列を組むと行進する。


「相手はアンデッドだ。わかってるよな?」

「わかてるってーの。だからそんな凄むなよ。光と火はあんま得意じゃないんだけどなぁ」


 ゴンロヤはぶつくさ文句を言いながら杖を振るう。すると杖の先より赤と黄色の光がゴーレムの持つ武具を覆う。光と火の精霊の力によって、ゴーレムの持つ武器や盾が強化されたのだ。


「あー、なんだ。場所を変えるか?」


 ゴンロヤがラスへ問いかける。ラスの横ではいまだ地面に縫いつけられたままのレナの姿があった。


「貴様は羽虫が纏わりついてきたときに、わざわざ場所を移動するのか? 私は違う。羽虫ごとき手で追い払う」

「上等だっ! あとで吠え面かくなよ!!」


 ランポゥがゴーレムの軍勢を突撃させると同時に、ラスは神聖魔法第8位階『神域結界』でレナを覆う。さらに死霊魔法第5位階『骸骨創生ガ・マーチ』を発動。五百を超す骸骨の兵士が土から這い出し、立ち上がるなりゴーレムの軍勢へ向かって駆けていく。


「はんっ」


 ランポゥが鼻で笑う。

 骸骨の兵士が振り下ろした剣は、アイアンゴーレムの盾に弾かれ、または鉄の身体に傷一つつけることなく、逆に剣の方が耐えきれずに折れる。

 骸骨の兵士は数でこそアイアンゴーレムの五倍以上であったが、個々の力にあまりにも差がありすぎた。アイアンゴーレムが武器を使わずとも、その腕を振るうだけで数体の骸骨の兵士が吹き飛ばされる。さらにゴンロヤの精霊魔法で強化されている剣や盾を喰らえば、それは顕著であった。光の属性を纏った剣で斬り裂かれると、骸骨の兵士は塵となり。火の属性の盾で殴られると消し炭と化す。


「はっはー! どうしたどうしたっ!! 大口叩いた割に大したことねえじゃねえかっ!!」

「『精霊術士』『土精術士』『人形師』、三つのジョブの長所を組み合わせることによって、通常のゴーレムではあり得ない精度と動きを可能としたか」


 ランポゥは自身が展開している結界を一瞬たりとも緩めてなどいない。にもかかわらず、ラスはランポゥが就いているジョブを看破したのだ。

 しかし、ランポゥから動揺は微塵も見受けられなかった。高ランク迷宮の深部まで潜ると、人と同等もしくは上回る知性を持つ魔物や、聞いたことも見たこともないような魔法やスキルを使いこなす魔物が生息するのだ。

 数々の迷宮探索の経験を持つランポゥの勘が告げていた。恐らくは『解析』の上位スキルかそれに類する魔法の使い手だと。


「それがどうかしたか? 腐れアンデッドが――ちっ」


 骸骨の兵士を蹴散らし、前進するアイアンゴーレムの先頭が突如その姿を消した。

 原因は地面にあった。

 ラスの黒魔法第4位階『沼搦マーシュ』によって地面が沼化し、アイアンゴーレムはその自重が仇となり、沈下に抗う術がなかったのだ。

 しかし、次々と沈んでいくアイアンゴーレムの沈下が停止した。


「『氷塊のゴンロヤ』と呼ばれちゃいるがー、他の精霊魔法だって使えるんだぜ?」


 ゴンロヤの精霊魔法第4位階『硬土コール』が、沼と化した大地を元の土へと押し戻したのだ。


「もらった!!」


 ランポゥの操るアイアンゴーレムが跳躍してラスへ襲いかかる。鉄でできたゴーレムとは思えないほど軽やかな身のこなしであった。見れば、四方からもアイアンゴーレムがラスへと殺到していた。


「本気か?」


 アイアンゴーレムの攻撃は、全てラスの結界によって阻まれていた。


「どれほど精妙に操ろうが所詮は鉄の塊。本気で私を倒せると思っているのか?」

「馬鹿がっ」


 アイアンゴーレムに紛れてランポゥは三体のミスリルのゴーレムを隠していたのだ。

 アイアンゴーレムの身体の間隙を縫って、ミスリルのゴーレムが振るう穿孔機ドリルとラスの結界が激突する。


「殺った!!」


 ラスの結界に干渉し、ミスリルのゴーレムの穿孔機が結界を貫いたと思われたそのとき――


「おい。なんでゴーレムを解除した?」

「違う。俺は解除なんてしてねえ」


 三体のミスリルのゴーレムの姿は跡形もなくなっており。触媒となっていたミスリルの塊が、ラスの足元に落ちていた。


「ミスリルは魔力を通しやすい物質だ。どれほどかというと、結界に干渉するのを逆手に取って魔力操作をすれば、容易にもとの土塊に還すことも――この場合はミスリルの鉱石か。一つ勉強になったであろう」

「舐めやがってっ……」


 激昂したランポゥが両手を交差させる。本来であれば、一斉にアイアンゴーレムがラスへと襲いかかっているはずなのだが。


「なんだ!? 腐れアンデッドが、俺のゴーレムになにをしやがった!」

「愚か者め。わざわざ聞かれて答える馬鹿がどこにいる」


 全てのアイアンゴーレムが、ラスの暗黒魔法第6位階『腐蝕ヤ・ガール』によって、鉄の身体が、関節が腐蝕し、錆びてその動きを封じられていた。そのことに気づいたランポゥがアイアンゴーレムの構成を解除し、再構成するのと同時であった。


「なんだそりゃ……。俺の真似か?」


 ラスの前に、三体の骸骨騎士が跪いていた。先ほどの骸骨兵士との差異は、身体を構成する骨がミスリルであった。


「お前にっ。俺と同じようにゴーレムが操れるもんならやってみろ!」


 人体の構造を独学で勉強し、血の小便を出し尽くすほどの修練を経て、今のランポゥの精密なゴーレム操作がある。それを見よう見まねでやろうなどと、侮辱以外の何物でもなかった。


「囀るな羽虫が」


 骸骨騎士の背後には三名の男の姿が――。見事に鍛え抜かれた体つきに、数え切れぬほど刻まれた無数の古傷、しかし男たちの身体は薄く透けて見えることから実体ではなく霊体であることが窺えた。


「嫌な予感しかしねーな」

「ゴンロヤ、合わせろ!」

「はいはい。俺の相棒は、ほんっとやかましいぜ」


 ゴンロヤとランポゥの判断と行動は速かった。

 二人の周囲に数千にも及ぶ氷の槍と鉄の槍が展開される。精霊魔法第2位階『ヘイルジャベリン』に『アイアンジャベリン』である。

 一つ一つが並の術者が使う物とは比べ物にならないほど、強大な魔力が込められている。明らかに対人で使用する規模の魔法ではない。

 殺意を纏った数千の槍が、一斉にラスへ放たれた。大地に無数の穴が穿たれ、めくれ上がり、瞬く間に地形が変形していく。その間もゴンロヤとランポゥは手を緩めず、槍を展開しては放ち続けた。


「ゴンロヤっ!」

「わかったわかった」


 土煙で視界が塞がれた状態を嫌ったランポゥが叫ぶ。ゴンロヤが精霊魔法第1位階『ゲイル』を発動させる。強風が土煙を遥か彼方へと吹き飛ばし、視界が開けるとそこには――


「なんとも騒がしい羽虫共だ」


 ラスを中心に周囲三メートルだけ何事もなかったかのように、大地は無傷で綺麗なままであった。

 信じられないことに、ゴンロヤとランポゥが放った数千本の槍を、それこそちょっとした軍であればそれだけで全滅させることすら可能であろう攻撃を、わずか三体の骸骨騎士が防ぎきったのだ。


「こりゃまいったなー。

 状況から見るに、あのスケルトンが叩き落としたんだろうな」

「冗談じゃねえ。

 じゃあ、なにか。あのスケルトンが手にした剣で、俺たちの放った槍を全てたたっ斬ったとでも言うのか?」


 納得ができないランポゥがアイアンゴーレム三体を突っ込ませる。操作で自分が負けるはずがないという自負からであった。

 だが、一体目のアイアンゴーレムは唐竹割に、二体目は右薙に、そして最後の三体目は攻撃を受け流されてからの左切上に斬り捨てられる。

 三体の骸骨騎士は恐るべき腕前であった。ミスリル製の剣を持っているとはいえ、鉄の塊であるアイアンゴーレムを一刀のもとに倒してのけたのである。しかも、そのアイアンゴーレムを創り出し操作しているのは、ゴーレム操作では右に出る者はいないとまで言われているランポゥである。


「手加減……する性格じゃないわな」


 隣で険しい表情を浮かべるランポゥを見ながらゴンロヤが呟く。


「俺があのスケルトンの相手をするから、お前はあっちの腐れアンデッドを頼むわ」

「うーん、なんか俺のほうがキツくないか?」

「倒したらすぐ合流する」


 そう言うと、ランポゥはアイテムポーチからダマスカス鋼を取り出す。ミスリルのゴーレムに続くランポゥの切り札の一つ、ダマスカス鋼でできたゴーレムを十体創生する。


「たくっ。こっちのほうが大変だろうが」


 貧乏くじを引いたかのように、ゴンロヤが頭を掻きながらラスと対峙する。


「聞き間違いか? 羽虫一匹で私に勝てるとでも?」

「俺だって嫌なんだけどなー。まあ、しゃーないだろ。

 それより、あのスケルトンは暗黒魔法で召喚したんじゃないだろ? 死人を操るなんて、死霊魔法ってなぁえげつねえな」

「ゼポル三兄弟は、生前に極悪非道と呼ばれるに相応しい所業を繰り返してきた。そんな屑共が私のために働けるのだ。感謝してほしいくらいだ」

「いくら悪党だから――待てよ。ゼポル三兄弟だとっ!? 兇悪七十七凶きょうあくななじゅうななきょうに名を連ねる悪党の中の悪党じゃねえか」

「すぐに貴様も仲間になる」

「俺が獣人の後衛職だからって、侮ってると痛い目を見るぜ」


 熊の獣人に相応しい体格のゴンロヤが杖を持つ姿は、どこか滑稽であった。


「獣人だから侮っているわけではない。貴様程度の羽虫が私に抗うのが身の程知らずだと言っているのだ。

 それに私より強い後衛の獣人も知っている」

「は、はは……。俺程度か。お前みたいな化け物より強い獣人っていうと、フィルシーの大樹海にいる獣王くらいしか思い当たらねえな」

そちら・・・ではない。そもそもフィルシーの大樹海に君臨する獣の王は、典型的な前衛ではないか」

「獣王と面識があるのかっ!?」

「くだらぬお喋りも時間稼ぎも十分であろう」


 いつの間にか、ラスとゴンロヤの周囲のみ地面に霜が積もり始めていた。


「へー。そりゃ気を使わせたみたいだ――なっと!!」


 ゴンロヤが地面を強く踏み鳴らすと、地面を覆う霜が一気に分厚い氷となっていく。宙に浮くラスには、なんの効果もないのだが。


「あらよっと!」


 さらにゴンロヤが地面を踏み鳴らすと同時にいくつもの氷柱が地面から生え、ラスを檻のように取り囲む。


「余裕こいて死んでも知らねーぞっ!」


 ゴンロヤが杖を振るうと巨大な氷の刃が展開される。精霊魔法第6位階『巨刃氷残アイス・エッジ』である。巨人などの大型の魔物を対象とした魔法なのだが、それを氷の檻で身動きが取れぬラス目掛けて放ったのだ。


「本命は上か」


 ラスは迫り来る氷の刃ではなく。空を見上げる。氷の檻の隙間から、天より降ってくる氷塊が視界に入る。

 最初にラスが姿を現した際に、不意打ちで放ったゴンロヤの二つ名の由来となった魔法。精霊魔法第7位階『氷塊天墜ひょうかいてんつい』である。しかも、今度の氷塊は一つではなかった。五つの巨大な氷塊が天を覆っていた。


「逃げ場はねえぜ。だから聞いただろ? 場所を変えるかってなっ!」

「羽虫が図に乗るな」


 ラスの持つ天魔ダンタリアンの杖から神聖な力が溢れ出しすぐさま収束する。目も眩むほどの光が集まったかと思うと、天へと放たれる。神聖魔法第7位階『憤鎚金剛オ・ラルド・ムー』、全てを打ち砕く神の鎚が、ゴンロヤの作り出した五つの氷塊を一瞬にして木っ端微塵にした。

 砕かれた氷塊が雹となって大地へと降り注ぐ。


「はあはあっ。あんたならどうにかすると思ってたさ」


 莫大なMPを消費して肩で息をするゴンロヤが、最後の力を振り絞って魔法を放つ。砕かれた大量の氷がラスを取り囲み。そのまま一辺十メートルほどの氷の棺となって封じ込めた。


「ランポゥっ! あとは任せたぞ!!」


 精霊魔法第7位階『氷棺縛鎖アーイン・ドェ』で、限界を超えて魔力とMPを酷使したゴンロヤは立つことすらままならず地面に倒れ、あとをランポゥへと託す。


「おっしゃ!!」


 ミスリルの骸骨騎士達と激闘を繰り広げ、戦いを制したランポゥの全身は血塗れである。しかし、ゴンロヤが作ったこの唯一無二のチャンスをランポゥが見逃すはずがなかった。十体のダマスカス鋼で創られたゴーレムを分解、再構成し新たに創生したのは、人型ではなく、全長八メートルほどの四足歩行のゴーレムであった。しかも頭から尻にかけて、筒のような物が身体を貫いていた。

 四足歩行のゴーレムは足を地面に突き刺し身体を固定すると、筒の照準をラスへと合わせる。


「くたばれやっ!!」


 ランポゥが魔力を込めると、四足歩行のゴーレムの筒が火を吹いた。ダマスカス鋼とミスリルを融合させた砲弾が、螺旋の回転を描きながらラスへと迫る。

 砲弾は空気の壁にぶつかり衝撃波を発生させながら、さらに加速して突き進む。

 ゴンロヤが顔を上げてラスを見れば、氷の棺に封じられ指一本動かすことすらできぬはずのラスが、ゴンロヤには嗤ったように見えた。

 激しい激突音が鳴り響くはずであった。氷の棺と砲弾が衝突し、そのままラスを打ち砕くはずであった。

 しかし、その激突音が一向に聞こえてこない。砲弾はラスを避けるかのように軌道を斜め上へと変え、空に軌跡を残しながらその姿を消していた。


「さすがに今のをまともに喰らうわけにはいかない」


 氷の棺にわずかにヒビが入る。ヒビは徐々に拡がり続け、やがて氷の棺の隅々まで拡がると砕け散った。


「なので、結界で受け流させてもらった。

 私に躱す行動を取らせるとは、羽虫にしてはやるではないか。褒めてやる」

「て、てめえっ……」

「褒美だ。遠慮なく受け取るがよい」


 ラスが杖を掲げる。すると少女をかたどった黒い拷問器具が出現し、ランポゥをその体内へと優しくいざなった。


「ぎゃあ゛あ゛あああーっ!?」

「ラ、ランポゥっ!!」


 ランポゥの苦悶の絶叫が響き渡り、黒き鉄の少女の目から赤い涙がこぼれ落ちる。


「この程度でマスターに喧嘩を売るとはな。身の程知らずにも程がある。

 まさか貴様ら、ナマリにもちょっかいを出して――く、くく。くははっ! そうか。出しているのか。無駄死にだな」


 ゴンロヤの表情から読み取ったラスが嘲笑う。


「化け物がっ……」

「すぐに貴様もあとを追わせてやる」


 ラスがゴンロヤにとどめを刺そうとしたそのとき、黒き鉄の少女が中からこじ開けられる。


「で、でめ……ぇっ! な……なめでんじゃ……ねえ゛ぞっ!! ぶ、ぶ……ぶっ殺じてやる!!」


 全身穴だらけのランポゥが、息も絶え絶えにラスに向かって吠える。


「ほう。自らを鋼と化し防いだか。だが、無傷とはいかなかったようだな。

 よかろう。望みどおりとどめを刺してやろう」

「じょ……上等だっ! ごの――ぐああああぁっ!?」


 突如、荒れ狂う雷と風がランポゥを吹き飛ばした。


「……わ、私は、ごほっ。ざ……雑魚なんかじゃないっ」


 ランポゥを黒魔法第7位階『風神雷神』で吹き飛ばしたのはレナであった。


「ウソだろ……」


 レナの手を見たゴンロヤの全身の毛が総毛立つ。

 その両の手の平は真っ二つに引き裂かれていた。否、ミスリルの杭を引き抜くことができないと判断したレナが、自ら引き千切ったのだ。


「レナ殿、どうやって私の結界を――」


 ラスがレナを護るために張った『神域結界』には、人一人が無理をすれば通れそうなほどの穴が開けられていた。

 ランポゥとラスが見せた魔力を通して結界に干渉する技である。

 たった二度見ただけの技を、拙いながらもレナは使ってラスの張り巡らせた『神域結界』を内部より解除したのである。


「……ごほっ。わ゛、私に……負けた、あなたのほうが……雑魚っ!」


 次にレナはラスを睨みつける。


「……ご、げほっ。ごれ……でも、私は……ユウの横に……た、立つ資格はないっ?」


 そう言い終えると、血を吐き出しながらレナは意識を失う。

 遠く離れた場所では、ランポゥがわずかに動いているのが見えた。レナの『風神雷神』を喰らう瞬間、精霊魔法第3位階『カブルウォール』で咄嗟に石の壁を展開し、鋼糸を避雷針のように地面に突き立て、さらに自らの身体を鋼に変えて防御したのだ。それでも荒れ狂う風の力によって四肢はあらぬ方向へ圧し曲がり、完全には逃すことのできなかった雷によって、体内を焼き焦がされ黒煙を上げていた。


「判断を下すには早計だったかもしれません」


 誰に聞かれることもなくラスが呟いた。

 地面に倒れピクリとも動かないレナを、ラスが神聖魔法で癒やす。莫大な治癒の力を注がれ、レナの体内の損傷した臓器や裂けた手の平もあっという間に元通りとなる。


「レナ殿を丁重に運べ」


 ラスに召喚されたスケルトンナイトが、レナを抱きかかえラスのあとを追う。


「ま、待てっ! 俺たちを見逃すのかっ!?」


 ゴンロヤの呼び止める声にラスが振り返る。


「興が削がれた。

 それにマスターは生死は問わないと仰っていた」


 とどめも刺さずに放置され、あとを追うことすらできず。ただ去って行くラスたちの姿が消えるまで、目で追うことしかゴンロヤにはできなかった。

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