第158話 ナマリの日記 前編

 ○月X日

 オドノ様から日記帳をもらった。紙はきちょうだから大切に使えってラスに言われた。言われなくても大切にするにきまってるのに。

 毎日じゃなくても日記をかけば字のれんしゅうにいいって言ってた。

 モモとトーチャーが俺の字をめずらしそうに見てくる。恥ずかしいからやめてほしい。


 ○月X日

 今日も、ち、ちょうほういんをオドノ様が捕まえた。色んな国のちょうほういんがオドノ様をかんししているみたいで、オドノ様は少し怒っているみたいだった。今日捕まえたやつは、デリムテイ国って大きな国のちょうほういんだった。ラスは殺しましょうって言ってた。ラスは人族が嫌いだからすぐ殺す殺すっていう。トーチャーは殺さずに欲しいって言ってた。この前もトーチャーがちょうほういんを欲しがって、なんどもごうもんしては回復させてたけど、見てたら嫌な気持ちになったからモモと一緒にオドノ様のところに逃げた。オドノ様はデリムテイ国のちょうほういんとすこし話すと、殺さずに逃がしてた。今回はなんで殺さなかったんだろう?


 ○月X日

 オドノ様がすこしでかけるって、あの不思議な魔法でどこかに行った。戻ってきたオドノ様はすっごく怖い顔で、モモとラスは近づかないようにしてた。トーチャーはよくわかっていないみたいで、オドノ様の近くにすわってた。俺はオドノ様が悲しそうに見えたから、どうしたの? って聞いたらお家を燃やされたって言ってた。あと、いたいが盗まれたってすっごく怒ってた。いたいってなんだろう。その日からオドノ様は変わったと思う。なにが変わったのかはわからないけど、ずっとガマンしてたのをガマンしなくなったと思う。だってその日からオドノ様はどんどん強くなったから、俺にはわかるんだ。でもたまに目が痛いみたいでどこかに行くときがある。ラスは心配だって言ってたけど、来るなって言われているからガマンするんだって。


 ○月X日

 今日はオドノ様のあとをついていった。いつもならすぐ気づかれるのに、今日は気づかれなかった。オドノ様はすわりこんで目をおさえてた。いつもならうでとか足が取れても平気なのに、目が痛くてガマンできないみたいだった。オドノ様は痛いのがガマンできないみたいで、自分の目をとっちゃった。戻ってきたオドノ様はいつものオドノ様だったけど、きっとオドノ様はびょうきなんだ。俺が守らないといけないと思った。


 ○月X日

 オドノ様があたらしいけんとよろいができたって、よろこんでた。こくりゅうのつのやウロコからつくったんだって、まっくろでオドノ様のかみの色みたいだった。


 ○月X日

 今日もいつもみたいにありの赤ちゃんを捕まえて、れ、れべりんぐをした。とちゅう人族のラリットっておじさんが、ラスに殺されそうになってた。オドノ様のお友達みたいで、ラスはオドノ様に怒られて落ち込んでた。からかったらラスに追いかけられた。トーチャーはごうもんしたかったみたいで、残念そうに帰っていくおじさんを見てた。


 ○月X日

 今日はハーメルンって国のビクトルってしょうにんが、オドノ様に会いにきた。弱そうなのにすっごく嫌な感じがした。モモもけいかいしてたから、あやしいのはまちがってないと思う。あとでオドノ様にそのことを言ったら、あれはぎたいだからだまされるなよって言ってた。ラスが殺しましょうかって言ってオドノ様に怒られてた。トーチャーはごうもんできなくて悲しそうな顔をしてた。


 ○月X日

 いままで捕まえれなかったちょうほういんを捕まえた。ラスがまどうぐのつうしんをぼうじゅしたってえらそうにしてた。これが役に立つってことだって言ってきたから、お腹にパンチした。すっごいふっとんだ。モモに頭を叩かれた。ラスのせいだ。

 捕まえたちょうほういんは、オドノ様が質問してもなにもしゃべらないからトーチャーがごうもんすることになった。ごうもんしているあいだ、モモと俺は島でおるすばんだってオドノ様につれていかれた。島はヒスイお姉ちゃんとシロががんばっているから、いっぱい木が生えて森がふえてた。戻ってきたらちょうほういんはいなくなってて、オドノ様は黒いスライムを持ってた。聞きたいことは聞けたの? ってオドノ様に聞いたら、なにも知らなかったって言ってた。どこの国のちょうほういんかもわからないって言ってた。やっかいな敵だってオドノ様は言ってた。


 ○月X日

 今日は変な人族を助けた。ローブで顔をかくしてて、ラスは冒険者じゃないって言ってた。変な石の板を持ってて、オドノ様とむずかしい話をしてた。人族が嫌いなラスが、オドノ様にお願いして安全な場所まで送るって言ってた。めずらしいこともあると思った。



 ○月X日

 今日はふかいのエンリオだとレベルが上がりにくくなったから、おうとのあくまのろうごくに移動することになった。ラスのしょうかんした大きな鳥にのってお空の上から下を見ると、すっごいけしきだった。モモは寒いからオドノ様のぼうしの中に隠れてた。とちゅうでオドノ様がきゅうけいするって言って地面におりた。

 ご飯を食べて休けいしてると、獣人の兄妹をひろった。お兄ちゃんの獣人が自分は食べてもいいから妹は殺さないでって言ってきた。俺は獣人なんて食べないぞ! オドノ様のところにつれて行ったら、ラスがよけいなモノを拾ってくるなっていやみを言われた。足にキックしたら怒っておいかけられた。獣人の兄妹はお父さんは獣人で、お母さんは人族なんだって。そのせいで獣人と人族から嫌われて追いだされたって言ってたけど、なんで追いだされるの? ほかにもいっぱいそんな獣人たちの村があるんだって。


 ○月X日

 獣人を拾ってからオドノ様は歩いておうとにいくことにするって言ったら、ラスはなぜですかっておどろいていた。俺はなんでかわかった。モモもわかったみたいでうれしそうな顔をしてた。休けいしてたらオドノ様があっちの方で遊んでこいって言ったから、なにかあると思ったら、思ったとおりそっちには獣人の村があって、人族のきしにいじめられてた。戻ってオドノ様に教えたらきしたちを殺しちゃった。ざ、ざいむだいじんの手下だからいいんだって。獣人たちはオドノ様にいっぱいありがとうって言ってた。なんだか俺もうれしい気持ちになった。

 獣人たちは行くとこがなくてこまってたから、俺がオドノ様に島でかっていいかって言ったら、イヌやネコじゃないって怒られた。ラスがいっしょに怒ってきてうるさかった。獣人の長って呼ばれている人とオドノ様が、むずかしい話をしてた。ほとんどの獣人が島にくることになった。兄妹の獣人もよろこんでた。やっぱり俺はまちがってなかったから、ラスにあっかんべーしたら追いかけられた。トーチャーが獣人たちを見ながら目をキラキラさせてたから、あれはごうもんしちゃだめだよって言ったら悲しそうな顔になった。


 ○月X日

 今日は魔物におそわれてた小人族を助けた。小人族の村に行くと、肌の色が白い小人族がいっぱいだった。ラスがあれは白いんじゃなくて、青白いっていうんだってうるさかった。助けた小人族たちは太陽の光にあたると肌がやけるみたいで、おなじ小人族からもだーく族って言われて嫌われてるんだって、オドノ様にお願いして島につれていった。ラスがぐちぐちと小言を言ってきたけど、ラスはわかってない。


 ○月X日

 今日はドワーフを助けた。魔人族の俺がめずらしいみたいで、なんでって聞いたら、昔ドワーフと魔人族とのあいだに生まれたのが自分たち、ま、まらく族だって言ってた。肌の色が俺とにてたから、なるほどって思った。まらく族も人族にいじめられてたから、オドノ様にお願いして島につれてった。ラスがいいかげんにしろって怒ってきたけど、やっぱりラスはわかってない。モモはうれしそうに俺の頭の上で、オドノ様を見てた。モモはわかってるなって思った。


 ○月X日

 おうとのあくまのろうごくについた。

 ふかいのエンリオより魔物がずっと強くて、天魔族がいっぱいでてきて大変だった。オドノ様がここだとトーチャーより強い魔物が多いから、ナマリが守るようにってたのまれた。ラスが大丈夫かって心配そうに聞いてきたから大丈夫! って言っといた。


 ○月X日

 天魔族が強くてモモとトーチャーがケガしちゃった。オドノ様が、あくまのろうごくの四十九層でたおしたあくりゅうを俺の中に入れた。すっごく強くなったから天魔族も簡単に倒せるようになった。ラスが強くなった俺に、力をちゃんと使いこなすようにってこごとを言ってきた。ラスはカムリみたいだ。でもケガをしたモモたちを心配してたからほんとうはいいやつだと思った。


 ○月X日

 モモがランクアップした! ランクアップってなに? あんまり見た目は変わってないよねって言ったら、頭をぺしぺし叩かれた。羽が少し大きくなっただけだから、あんまり変わってないと思った。


 ○月X日

 今日は五十六層のまがんのゾフィーヌと戦った。強かった。俺は三回死んで、ラスも体が半分ふっとんでた。モモとトーチャーはオドノ様に言われてけんがくしてた。もっと強くならないといけないと思った。


 ○月X日

 七十四層でこりゅうと戦って負けた……。

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