第29話 2ndジョブ

 深夜の特訓に加えて、ニーナへの説教でほとんど寝ていない。ニーナが使っていたスキルは、暗殺者の『暗殺技』スキルの『暗歩』に『隠密』『潜伏』と、三つのスキルを併用していたそうだ。


 朝食はベーコンと野菜を挟んだサンドイッチと飲み物にミルク、十分に腹が膨れた。

 食事後、冒険者ギルドへ向かう。昨日の特訓で倒した魔物の素材で、アイテムポーチの中がパンパンなので、売却しスペースを開けたい。


 冒険者ギルドに着くと、カウンターに複数いる受付の1人コレットさんと目が合う。満面の笑みでこちらに手を振ってくる。それを見た男性冒険者たちがこちらを睨んでくるが、相手にしてられない。


「ユウさん、今日はどういったご用件ですか?」

「素材の買取とレベルが20になったので、2ndジョブに就きに来ました」


 ニーナとレナが驚きの表情でこちらを見る。なぜかコレットさんも若干引いた顔をしている。


「確か昨日でレベル19だったので、今日20になっててもおかしくはないと言えば言えるんですが……素材は昨日買取しましたよね?」


 コレットさんは、やっぱり純真なのか天然なのかすぐにボロを出すな。


「私のレベルが19っていつ知ったんですか?」


「あっ……それは……その…………」


 コレットさんが、自分の失言に気付づき慌てている。あんまりイジメても可哀想なので話を進める。


「素材は量が多いので、転職部屋で併せて買取して頂いてもいいですか」

「は、はいっ! もちろん大丈夫です」


 コレットさんと話していると、1人の冒険者が近づいてくる。


「よっ! 昨日は大変だったな」

「お人好しのおっさんか」

「誰がおっさんだ!」


 丁度いいのでニーナに『暗殺技』を見せてほしいと頼むと、お人好しのくせに渋る。


「昨日、あのあとどうなったか知りたくない?」

「むぅ……気になるな」


 ラリットが食いついてきたので、さらに譲歩する。


「全部見せろとは言っていない。レベル1まででいい」

「そのくらいなら……それにしても俺が暗殺者ってよくわかったな」


 俺もコレットさんを馬鹿にできないな。当たり前のように、頼んでしまった。


「あんた有名だからな、他の冒険者に聞いたらすぐ教えてくれたよ」


 ラリットも満更ではないようで、心なしか胸を張っている。


「確かに1FでCランクに1番近いって言われているからな」


 やっぱりこのおっさんは、そこそこ有名みたいだ。


「ニーナ、俺はその間に転職と素材を売却しておくから、しっかり学べよ」

「わかった。レナはどうする?」


「……ユウについて行く」


 っち……レナに俺の2ndを知られてしまうのは避けられないか。

 早速、転職部屋で水晶に手を置くと、新しく就けるジョブが増えていた。


 『モンク』『魔法拳士』『付与士』『魔法騎士』『暗殺者』


(よし、付与士がある!)


 狙っていたジョブが表示されたことに、思わず手に力が入る。

 『付与士』とは後衛ジョブで、主にパーティーメンバーの補助をするジョブだ。付与魔法で、ステータス能力を向上させたり高レベルの付与士になると相手の能力を逆に下げる魔法も使える。


「し……しし……新ジョブ!?」


 コレットさんが変顔で、水晶を覗き込んでいる。


「……面白い顔」


「コレットさん、落ち着いてください」


 コレットさんは、落ち着くどころか更に興奮して俺の顔間近で喋る。


「新ジョブですよ! 落ち着けるわけないじゃないですか」


 唾を飛ばしまくるコレットさんの話を纏めると、新たに増えたジョブの1つ『魔法拳士』は今まで発見されていないジョブで、新しいジョブの情報は冒険者ギルドにとって喉から手が出るほどほしい情報らしく、情報の提供だけで金貨10枚、取得条件の情報を提供でさらに金貨20枚も貰えるそうだ。


「そうなんですか。まあ、なる気はありませんがね。今回は付与士になります」


 そう伝えると、コレットさんは見るからに落胆した顔になったが、付与士もパーティーに必須のジョブで、さらに数が少ないので人気だから仕方がないと諦めてくれた。『魔法拳士』になる条件は、おおよそ見当がついている。


 もう1度水晶に手を置き『付与士』と念じる。

 見た目は変わっていないが、しっかり2ndに『付与士』が表示されている。

 相変わらずジョブに就くだけで、ステータスは大幅に上がっていた。




名前 :ユウ・サトウ

種族 :人間

ジョブ:魔法戦士・付与士

LV :20

HP :436

MP :562

力  :189

敏捷 :163

体力 :204

知力 :184

魔力 :206

運  :1


パッシブスキル

剣術LV6

腕力強化LV4

索敵LV5

短剣術LV2

身体能力向上LV2

敏捷上昇LV4

統率LV2

棍術LV2

体術LV1

夜目LV1


アクティブスキル

剣技LV3

闘技LV4

白魔法LV5

黒魔法LV3

鍛冶屋LV2

錬金術LV3

盗むLV1

隠密LV1

鑑定LV1

短剣技LV2

棍技LV1

魔法剣LV2

格闘技LV1

付与魔法LV1

咆哮LV2

魔拳LV1


固有スキル

異界の魔眼LV3

強奪LV2

眷属従属LV1



 昨日の特訓でスキルを強奪したのと『付与士』に就いたので大分スキルが増えている。体術は素手での戦闘、夜目は深夜での戦闘、魔拳は体術と魔法を組み合わせたから増えたと思う。あと強奪のレベルが上がったので、固有スキルも強奪出来るかを試すと、見事に奪うことができた。

 『眷属従属』――俺は種族が人間なので、人間を従属できるのか今度試してみよう。『腕力強化』は名前つきのゴブリンジェネラルから奪った。その後ステータスを見ると『腕力上昇』が消えていたので統合されたみたいだ。明らかに腕力は上がっていたので間違いはないはず。


「コレットさん『付与士』についてはある程度知っていますので、素材の買取をお願いします」


 昨日ジョブについての情報は購入しているので、改めて説明の必要はなかった。

 アイテムポーチから100キロ近くの素材を出すと、コレットさんがまた固まった。


「あ、あの~これはもしかして、ゴブリンジェネラルの耳ですか?」

「そうですが何か拙かったですか?」

「いえ、拙くはありませんよ! ただ、ランク3の魔物の素材が出てきたので驚いただけです」


 売却した素材は全部で金貨4枚と銀貨2枚になった。ゴブリンジェネラルの耳が、錬金術の触媒として需要があるそうで高く売れた。


「……魔玉の欠片は売らないの?」

「欠片は今後売らない。使い道ができたからな」 


 無事2ndジョブにも就き素材も売却したので、ニーナがいる修練場に向かう。

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