第26話 スキル付与
装備の購入を終え、宿屋に向かっている。ランクの低い冒険者が泊まる宿と言えば、食事なし・ざこ寝が基本だそうだが、装備を購入してもかなりの金額が余った。
俺とニーナのお金の合計は金貨:87枚、銀貨:345枚、半銀貨:58枚、銅貨:86枚だ。村の一般的な4人家族で1ヶ月で、金貨1枚あれば十分生活できる。
盗賊狩りや魔物の素材、魔玉の売却、クエスト報酬に俺の作成してたポーションの販売と、普通のランクFとEの冒険者では手に入れられない金額を手にしている。
「ユウ~お金に余裕もあるし、宿は少し良いところがいいな~」
「……お風呂に入りたい」
「わかってるよ。宿屋は個室で風呂つき・食事つきだな」
やった~と、ニーナとレナが喜んでいる。宿屋に関してもコレットさんにいくつかオススメを教えてもらっていたので、その内の1つ、1番金額の高い宿『風見鶏亭』に向かっている。
ここは1人食事つきで一泊8,000マドカと、相場より高いが食事もオススメでなにより風呂が個室についているそうだ。
日も暮れてきて、暗くなりだした頃に風見鶏亭に着いた。外観はかなり立派で中を覗くと多くの人で賑わっていた。ざこ寝の宿で1泊500マドカ、一般的な宿で3,000~5,000マドカなのに、ここがこれだけ繁盛しているということは、コレットさんの情報通り良い宿なのだろう。
「いらっしゃい! かわいい冒険者さんだね!」
カウンターに行くと元気なお姉さんが挨拶してくる。
「3人で食事つきで10日間滞在で」
「あいよ♪ 部屋は同じ部屋でいいのかい? 一緒の部屋なら一泊食事つきで1人8,000マドカ、3人で24,000マドカ。10日だと……」
「240,000マドカか、金貨2枚と銀貨4枚の支払いでいいですか」
「へえぇ……あんた見た目は冒険者みたいだけど、どこかの貴族か商人かい?」
この世界ではこんな簡単な暗算でも、商人や貴族でないと学べないのかと思ったが、横でニーナも驚いていたので、座学の時間で算数を教える必要があるな。
「いえ、見た目通り駆け出しの冒険者です」
「ふ~ん、部屋は一緒でいいのかい?」
「部屋はふ――」
「一緒の部屋で~」
部屋は別料金を支払っても分けようとしたが、その俺の発言にニーナが被せてきた。
ニーナが節約節約~と言っているが、相場より高い宿に泊まろうとしている時点で、節約もクソもない。レナの方を見るが、こいつも同じ部屋で不満はないみたいだ。
「はいよ~♪」
お姉さんがいやらしい笑みを浮かべたのが気に入らないが、ここで言い争っても時間の無駄なのでスルーした。
部屋に入ると装備を脱いで行く。村を出てからずっと着たままだったので、久しぶりの開放感に浸る。
「ニーナ、持っててもらった魔玉を出してくれ」
「魔玉って完全な方?」
魔物を倒した際に手に入る魔玉だが、ほとんどは欠片で主に魔道具の燃料扱いだ。では完全な魔玉はどうなのだろう? 今日魔道具を販売している店に行った際に、おおよその見当がついていたので早速試す。
あれだけレッセル村で魔物を狩りまくってたのに、完全な魔玉は8個しか手に入らなかった。ランク1の魔物の魔玉でも、完全な物なら金貨1枚で売れる。
前からなにかあると思っていたので、欠片は売り払っていたが完全な魔玉は手元に置いていた。
ニーナから魔玉を受け取ると、俺は魔玉にヒールを使う、いや込めると言った方が正しいかもしれない。ヒールを込めた魔玉を見る。
魔玉(ランク1):ヒールの力が込められている。
予想通りだがここからが本番だ。
「ニーナのピアスって大事な物か?」
「そんなことないよ~」
「……?」
ニーナからピアスを受け取り、魔玉とピアスで錬金術を発動する。
ニーナは今から何が起こるのかワクワクした顔で、レナも俺がこれからなにをするのか解っていないようだ。
錬金術は問題なく成功し、ピアスを見る。
普通のピアス(6級):HP回復速度上昇
「成功だ。ニーナもう1個のピアスも貸して」
もう片方のピアスを受け取り、魔玉には毒治療のポイズンセラピーの魔法を込める。
その後、錬金術を発動。こちらも問題なく成功し、毒耐性上昇のピアスが出来た。
俺がスキル付与のことを説明すると、ニーナは眼をキラキラさせながら大喜びしていた。
「……装備へのスキル付与は錬金術ギルドの秘伝。他者へは知られない方がいい」
レナも大分驚いたようで、普段の無表情が崩れていた。レナが今日購入した三角帽子を渡してくる。
「……私の帽子にも、スキルを付与して欲しい」
「レナはHPが低いし、HP回復速度上昇がいいかも~」
なぜか当たり前のように、レナの装備へスキルを付与することが決まっていたが、魔玉はこちら持ちみたいだ。ニーナの方を見るとニコニコしている。お人好しが……。
レナの三角帽子にもHP回復速度上昇のスキル付与を行う。
「……感謝」
レナが満足したようで、薄く笑みを浮かべている。そのまま次の実験に移る。
魔玉に今度はフレイムランスの魔法を込める。すると魔玉は砕け散った。
「ええ、なんで~」
「……見当はつく」
レナは解ったようだ。先ほどのフレイムランスは、第2位階の魔法で魔玉はランク1の物。
多分魔玉のランクと魔法のランクが、釣り合っていないと砕けるのだろう。
ランク2の魔玉が手に入ったら、第2位階の魔法を込めるのと第1位階の魔法を2個込められるかを実験しなくては……。もしかしたら第2位階からは『錬金術LV3』以上が必要かもしれないので、日課のポーション作成でスキルレベルを上げておくか。
その後はニーナの『鋼鉄のダガー』に、ファイアーボールを込めた魔玉で火属性を付与した。もう片方の『鋼鉄のナイフ』に関しては、属性に強い魔物がいる可能性があるので、そのままにしておいた。
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