第16話 村を出るぞ!
「ステラさん、今言ったことは全て本当なんですね」
「本当よ……。私はユウに恨まれこそすれ、感謝される人間じゃないわ……。
ニーナちゃん、ユウを守って……ううん都市カマーまででもいいから連れていってあげて……」
ステラの言葉に力はない。すでにいつ限界がきてもおかしくない状態だ。
「ステラさん安心してください! ユウは私が守ります。お願いされなくても私はユウの友達ですから」
「ありがとう……ニーナちゃん…………ユウ……あなたとの生活は……私の人生で……1番……せ……な……時……った……わ……」
そのままステラは息を引き取った。その表情はとても幸せそうであったが、ニーナは涙を堪えきれなかった。
「う……う……ズデラざ……ん……が…………死ん……じゃ…………っだ……」
ステラが息を引き取って8時間後に、ユウは戻ってきた。部屋で泣きじゃくるニーナと、微動だにしないステラを見ると膝から崩れ落ちた。
「間に合わなかったのか……まだ…………間に合うはずだ」
ステラの死を信じられないとユウは、戻ってくるまでに創ったポーションを飲ませようとするが口から垂れてくる。
「ばあちゃん……飲んでよ……頼むから……」
ステラから返事はない。
「くっ……」
ヒールをかける。通常のヒールではありえない量の魔力を込めてヒールをかけ続けるが効果はない。ヒールは肉体の損傷を回復させる魔法であり、
MPがなくなると、ユウはそのまま床へ座り込む。
「ユウ……ズデラざん…………が……うぅ…………」
こんな状況でも涙が出ない自分に、ユウはやっぱり自分の心が壊れているんだと自覚する。しばらくしてニーナも落ち着き、今後どうするかを話し合った。
「グスっ……ステラさんのお墓を作ろう」
まだ目が真っ赤なニーナが、座り込んだまま反応しないユウに話しかける。
「ステラさんは、ユウと一緒にいて幸せだったって最後まで言ってたよ」
「そっか……ばあちゃん、そう言ってくれたのか…………苦しんでなかったか?」
「ううん、最後まで笑顔でユウのことをお願いねって言ってた」
「わかった。いつまでもばあちゃんをこのままにするわけにはいかないからな、ただ明日まで寝かせてあげたいんだ……」
「うん」
「これからどうすればいいんだろうな」
「都市カマーに行こうよ! あそこなら亜人も多いし、ユウだって冒険者になれるよ。それにステラさんからも頼まれてるし」
「そうだな……ばあちゃんのいないこの村にいる意味もないしな……ニーナも行くのか?」
「当たり前じゃない。私はユウの友達だよ?」
ユウたちは、その日は寝ずに旅の準備をした。朝になりステラの墓を造り、そのままステラとの別れを済ませる。
「ばあちゃん行ってくるよ。たまには墓参りで戻ってくるから、土産話でも楽しみにしててよ」
「ステラさん、ユウのことは任せてください。どこに出しても心配ない冒険者にしてみせます!」
「……俺に鍛えてもらってるやつが言うセリフか?」
「私はユウより年上!」
また意味のわからないことを言いながら、ドヤ顔をしてくるニーナを見ながらユウは内心でお礼を言う。ニーナがいなければもっと取り乱していたし、こんなに早く立ち直ることもできなかったと思うユウであった。
歩き始めると、村のほうからギルド長と数人の村人がこちらに向かってくるのが見えた。
「お前たち、その格好と荷物はなんだ。まさか村を出るつもりじゃないだろうな?」
村から叩きだしておいて、こいつらはなにを言ってるんだと思ったが、何かいつもと様子が違う。それにニーナが今まで見たこともないくらいに表情が険しい。
「ばあちゃんが死んだから、もうここに用はないからな、あんたらも俺を追い出したがっていたし、よかったな」
「勝手に村を出ていくなんて誰が許した! 今、この村では冒険者が不足しているんだ。
昨日、調査に出したサーマットも戻って来ない。お前が出て行くのは勝手だが、ニーナ、お前は残るんだ」
ニーナは返事もせずにギルド長たちを睨んでいる。
「それにばあちゃんとは誰だ?」
最近、ばあちゃんがずっと体調が悪いことを知っていて、こいつらは
「ステラばあちゃんだよ! いい加減にしろよ!!」
「ステラ?」
ギルド長たちの様子が変だ。まるで――――
「ユウ! 行こう」
やっと喋ったと思ったら、ニーナが俺の手を引っ張って連れて行く。表情は相変わらず険しい。ここからすぐに離れたいようだ。
「ま……待て!」
俺たちは無視してレッセル村から出ていった。
「あいつら勝手なことをしおって。恩知らずが! それにしても……お前たち、ステラとは誰だ?」
「さぁ、
「ニーナ、もういいだろう手を離せよ」
「ユウ、あいつらの言うことなんて気にしちゃダメだからね」
「さっきはムキになったけど、もういちいちあんなの気にしてられるか」
「そう……ならいいんだけど」
「ニーナ、冒険者になるからには最高ランク目指すからな」
「私とユウの力をもってすれば簡単ね♪」
「どっからその自信はくるんだよ!?」
地球から異世界のレッセル村に来て約1年、俺は冒険者になるために村を出た。
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