第8話 シーフのニーナ②

 パンッ! パンッ!


「痛っ……い…………あ……」


 青空の下、乾いた音が響き渡る。


(どうしてこうなったのか私にもわからない。

私の名前はニーナ・レバ、ここから2日ほど歩いたビビット村出身のLV12のシーフだ。

 私がこの少年を見かけたのは、一ヶ月ほど前になる。

 レッセル村の人達にひどい扱いを受けていた。少年は私と同じ目をしていた……気付かれないように見ていたんだけど、この前見つかってしまった。

 LV1とはいえ、スキル『潜伏』持ちの私が見つかるとは……。

 少年の名前はユウというらしいが、目が合ったが私に興味がまるでないようで、その時はそのまま行ってしまった)


 パンッ! パンッ!!


「くぅっ! ……いぃ…………」


(この村に来たのは、ビビット村から逃げて来たからだった。ビビット村で組んでいたパーティーメンバーが、迷宮で私に襲いかかって来たからだ。

 思えば、最初からそのパーティーメンバーはいやらしい目で私を見ていた。

 なんとかその場を切り抜けて、村に戻って事情を説明したが、私が悪いと言われた……冒険者ではよくあることで、男性だけのパーティーに入れば、こんなことは当たり前だと言われてしまった。

 私を襲ったパーティーメンバーは悪びれもなく、私に戻って来いと言ってきた。冗談じゃない!

 女というだけで、こんな扱い耐えられるわけがない。

 誰も信じられなくなった私は生まれ育った村だったけど、その日の内に村を出た)


 パンッ! スパッーーン!!


「あんっ!」

「えっ!?」


(同じ目をしていたユウは、村の人たちに酷い扱いをされていることや、ギルドでも暴力を振るわれていることも知っている。

 私はあなたの気持ちがわかるから、仲間にならないと伝えたところ、黙ったまま無表情だった。

 村から家の話題に変えようと、家でもステラとかいうおばあさんに、こき使われているんでしょ?)

 と言った瞬間に、ユウが怒り出した。


「お前に、ステラおばあちゃんのなにがわかる! 謝れ!!」

「ま……待ってそんなつもりじゃ」


 ユウは私の腰に手を回し抱えると、ズボンを一気に降ろした。


(私はパニックになった。まさかビビット村のパーティー連中と同じように、いやらしいことをするつもりなんじゃ!?)  


「ステラおばあちゃんから女には優しくしろと言われてるから、これで勘弁してやる」


 ユウはそう言うと思いっきりビンタをしたのだ。私の……臀部・・に――






 そう、私はお尻・・を叩かれている……

 とても少年の力とは思えない力だ。最初は痛かったが、今は気持t……いえご褒b……ゴホン、耐えられない痛みではなくなっていた。


「おい……牛女、こ……これに懲りたらもう……ステラおばあちゃんの悪口は言うなよ!」


(そう言うと、ユウは怯えたように走って行ってしまった。なんでだろう……

 牛女? 確かに私の胸は大きい……こればっかりはどうしようもない。

 私はあきらめない。まずは謝罪と誤解を解くことから始めよう。

 ハッ! 名前を名乗っていなかった)




 家が見えてきたところでユウは立ち止まる。


(さっきの女、確かニーナって名前だったか……前にステラおばあちゃんが言っていた、痛みで従わない人間もいるってやつか)


 初めて別の意味で恐怖を覚えたユウだった。


「ステラさん、のこぎり・金槌・釘を買って欲しいんだけど」


 俺が行っても、村で物を売ってもらえないので、ステラおばあちゃんにお願いする。


「ユウ、それは構わないけどなにか作るのかい?」

「それは出来てからのお楽しみだよ」

「まぁ、それは楽しみに待っているわ」


 お金は薬草採集で稼いでいた分から出す。取り敢えず鍛冶屋スキルを上げる為に、家の外にお風呂でも造ろうと考えている。幸い、近くに湧水があり、そこから水は引張ってこれるから、なんとかなるだろう。

 錬金術に関してはポーションを創ることにしたが、レシピが必要みたいだ。錬金術のレシピは大きな街に行かないと売っていないみたいなので、なんとか手にいれる方法を考える必要がある。

 明日からは、ゴブリン狩り、魔法の練習、風呂造りと一気にやることが増えた。

 薬草採集はレシピが手に入るまで、一旦ストップすることにした。

 ご飯を食べたあとは日課の文字の勉強をして寝た。

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