第5話 奪う者 奪われる者
「俺の拳はどうよ? ギャハッ」
俺の腹に拳をめり込ませながらハーゲが笑う。
「グフッ」
吐瀉物をまき散らしながら蹲る。
すぐに闘技を纏うが、ハーゲはお構いなしに蹴りを打ち込んでくる。 闘技を纏っている俺に対して、ハーゲは気にならないのか? もしくは見えていない? 俺の目が特別なので見えるだけなのか?
色々な事を考えている間にも、容赦なく振るわれる暴力。死ぬ前の事を思い出す。
目が気に入らない、食べ方が気に入らない、声が気に入らない。
理由なんて本当はない。理不尽な暴力を振るいたいだけ、義父に毎日振るわれていた虐待が、逆にこの状況で俺を冷静にしてくれる。
今までもなんだかんだと難癖付けて殴られてきたが、ここまでの暴力は振るわれてこなかった。
きっと誰かに、言われてやっているはずだ。
武器は持っていないとはいえ、相手は冒険者だ。その腕力は相当のもので、普通の人間なら意識を失うか死んでもおかしくなかったが、闘技を纏っているのでダメージは軽減されている。
ハーゲが胸ぐらを掴み、片手で俺を持ち上げ俺の耳元で囁く。
「俺だって、こんなことやりたくないんだぜ? これも
やっぱりかと思いつつ、誰が依頼したのかを考える。
「気になるよな? 誰が仕事を依頼したのか? ――だよ?」
一瞬、頭が真っ白になる。こいつはなんて言ったんだ……。
ハーゲだけじゃなく、周りの取り巻きも一斉に嗤いだした。
「だからぁ~全員だよ全員! 村の奴ら全員が黒髪、黒目の気持ち悪いガキをなんとかしてくれって依頼してきたんだよ! ギャアハハハッッハハハッ!!」
俺がなにをした……ここまでされるくらいに俺は存在してはいけないのかよ。
「安心しろよ。命まで取ろうってわけじゃねぇ……村に金輪際入らなければいいんだよ。おめぇはあのババァと一緒に村の外で縮こまって、暮らしておけばいいんだよ!」
ギルド長がこちらをチラッと意味ありげに見てきた。その視線に気付いたハーゲが頷く。
「おめぇの持ってくる薬草、あれを今後は村の入口に毎日――――いいか? 毎日、籠一杯に入れて置いてくんだ。わかったな? ギルド長に礼を言うんだな」
あの爺……今後はタダで薬草を持ってこさせる気か。
俺はハーゲを見る。
「その目が気に入らねぇんだよ! 自分の立場がわかってねぇみたいだな! おめぇは俺等に黙って搾取されればいいんだよ!」
搾取? ……奪われる?
「素直にならねぇと、ステラってババァにも同じ目にあってもらうぞ?」
ス……テラ…………おばあちゃん……にも? ふ……ふざけるな…………ステラおばあちゃんが村に何をした? 俺が……俺が…………何を…………した? 搾取……奪われる? …………嫌だ……奪われるのは…………嫌だ……なんで?奪われるだけの…………存在? ……俺が…………一生…………嫌だ嫌だ嫌だ!!
頭が痛くて、おかしくなりそうだった。
目の前のこいつから、全てを奪いたいと殺意を込めて睨む。
ハーゲは服従しない俺が気に入らないようで、殴り続けるが俺は睨み続ける。
ハーゲのステータスを見ながら、こいつの全てを奪ってやりたいと睨み続ける。
その時あることに気付いた。ハーゲのステータスから、
名前 :ハーゲ・ポッチョ
種族 :人間
ジョブ:戦士
LV :10
HP :96
MP :16
力 :46
敏捷 :12
体力 :51
知力 :7
魔力 :8
運 :6
パッシブスキル
腕力上昇LV1
アクティブスキル
剣技LV1
闘技LV1
固有スキル
なし
『剣術LV1』が消えていた。まさかと思い自分のステータスを見る。
名前 :ユウ・サトウ
種族 :人間
ジョブ:なし
LV :1
HP :1
MP :3
力 :3
敏捷 :4
体力 :5
知力 :22
魔力 :2
運 :1
パッシブスキル
剣術LV1
アクティブスキル
闘技LV1
固有スキル
異界の魔眼LV2
強奪LV1
なんだこれ…………ク…………クフ……クフフ。
「アハハ…………アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!」
自分でも気持ち悪いと思えるくらい、嗤う。
「こいつ…………おかしくなりやがった…………」
ハーゲは自分が殴り過ぎておかしくなったと思ったのか、俺を降ろした。全身ズタボロで動けない俺から金を奪い取り、ギルド入口へ捨てられる。
全身の痛みで動くのもきつかったが、今は心地良い位だ…………
この日、俺は
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