第2話 この世界も厳しい!?

 この世界に来て早くも、1ヶ月が経った。

 1ヶ月の間にステラおばあちゃんに、こちらのお金の種類・文字・常識を教えてもらった。

 ステラおばあちゃんには、俺が違う世界から来たということを言うと、あらまぁとニコニコ笑うだけで信じているのか、興味がないのか。それ以上は聞いてこない。


 通貨の種類を聞いたところ

石貨 :        1マドカ

半銅貨:       10マドカ

銅貨 :      100マドカ

鉄貨 :      500マドカ

半銀貨:    1,000マドカ(銅貨10枚)

銀貨 :   10,000マドカ(半銀貨10枚)

金貨 :  100,000マドカ(銀貨10枚)

白金貨:1,000,000マドカ(金貨10枚)


 これ以外にも帝国領では大金貨(金貨2枚と同等の価値)などが流通しているそうだ。

 文字についてはさすがに1ヶ月で覚えることはできていないけど、徐々に覚えていけばいいと考えている。

 それにしてもこちらの世界・・も厳しい……。

 まず魔物と呼ばれるモンスターが居る。幸いこの村の周辺には強い魔物がいないそうだ。

 あと、この世界の人はほとんどが、ギルドと呼ばれる組織に登録しているようで、そこで貰えるギルドカードが身分証明書の代わりになるそうだ。

 ギルドには冒険者ギルド・商工ギルド・鍛冶屋ギルド等があるそうなんだけど、レッセル村は小さな村なので、冒険者ギルドが全て兼任している。

 今、俺は冒険者ギルドで受けた薬草採集のクエストを完了したので、報告に向かっている。

 ステラおばあちゃんの家は村から少し離れており、村まで向かうには20分ほど時間が掛かる。

 そして、この見た目はぼろい酒場だが、これでもギルドなのだ。

 ギルドに入ると早速、嫌な奴に出会した……。


「おい! なんか臭いと思ったら、黒髪のゴブリンがいるじゃねぇか」


 そう言って笑いながら言いがかりをつけてきた奴は、この村に現在いる5人の冒険者のうちの1人、確か……はげ? じゃないハーゲってやつだ。


「なに睨んでるんだよ!」


 次の瞬間、腹を殴られる。

 絡んできたから見てただけなのにいきなり殴られる。しかも12歳の子供に対して手加減なしだ……


 やり返したいところだけど、ハーゲと俺ではステータスが違いすぎる。


名前 :ハーゲ・ポッチョ 

種族 :人間 

ジョブ:戦士

LV :10 

HP :96 

MP :16

力  :46

敏捷 :12

体力 :51

知力 :7

魔力 :8

運  :6


パッシブスキル

剣術LV1

腕力上昇LV1


アクティブスキル

剣技LV1

闘技LV1


固有スキル

なし


 うん、無理だ……。

 俺の苦しむ姿を見て満足したのか、ハゲでデブのおっさんはテーブルに戻り酒を飲み始める。

 こっちもこれ以上絡まれても嫌なので、そのままカウンターに居るギルド長にクエストの報告に向かう。

 こんな小さな村だとギルド長が受付も兼任している。受付を雇う余裕がないみたいだ。


「薬草採集クエストの薬草です」


 ちなみにこの薬草クエストは毎日貼り出されている。報酬は900マドカ、銅貨にして9枚だ。


「ふんっ!」


 ギルド長、ちなみにこいつは禿げの爺だ。銅貨3枚を投げ付けるように渡してきた。いつものこと・・・・・・ながら、イラッとしてギルド長を睨む。


「なにか文句でもあるのか? お前みたいな気味の悪い奴に、一部とはいえ報酬を支払ってやってるだけでもありがたいと思え!

 それにしてもステラもどこでこんな奴を拾ってきたんだか」


 一瞬、ステラおばあちゃんの悪口を言われて頭に血が上ったが、ステラおばあちゃんに迷惑が掛かるだけなので、俺は銅貨をポケットに入れるとギルドから出て行った。

 この村全体がこんな対応だ。まず俺には商品を売って貰えない。

 薬草採集とはいえ、採集中にゴブリンに出会ったことだってある。

 護身用に道具屋で(この村では武器屋なんてない)ナイフを買おうとしたが、お前に売る物はないと追い出された。

 さらに冒険者ギルドに登録した際に貰える冒険者カードだ。

 俺の眼は集中すると人のステータスが見えるが、それは物に対しても同様だ。

 自分の冒険者カードに集中すると。


【冒険者カード:偽物】


 あのギルド長を殺してやりたい……。俺には現在、自分の身分を証明できる物がないのが現状である。


 家に帰ると、ステラおばあちゃんが夕飯を作っていた。


「ユウ、お帰りなさい。もうすぐ夕飯ができるからね」


 ステラおばあちゃんは、クエストの報酬を渡そうとしても受け取ってくれない。

 それはユウが自分で稼いだお金だから、自分の為に使いなさいと諭された。

 俺のせいでステラおばあちゃんまで、村から良く思われていないのも知っている。なんとかしないと……まずは目標を決めることにした。

 文字を覚えること、お金を貯めること、そしてレベルを上げること。特にレベルは大事だ。ゲームと一緒なら、魔物を倒せば経験値が貰えてレベルが上がっていくはずだ。今の俺だとゴブリンと戦っても負ける。

 だけど……武器も売って貰えないのに、どうやって魔物を倒せばいいのかを考えなければ。

 その日はステラおばあちゃんのシチューとパンを食べた後に、保存食の作り方を教えてもらい寝た。

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