笹クレッ!

みちのあかり

「笹クレッ!」


 寺の坊主に子供が乱暴に声をかけた。


「下さい、せめてそのくらいの言葉遣いはできないのかい? そうか。明日は七夕か」


「そうだよ。だから七夕飾りを下げてゲーム機下さいって書くんだよ」


 坊主は溜息をついた。

 ここら辺で、笹が生えているのはこの寺くらいだ。お寺はいくつかあるが、他はみんな境内地はコンクリートで固めてある。檀家が少ないこの寺は、無駄に境内地が広かった。


「いつから七夕はクリスマスになったのかねぇ。うちは浄土真宗だから言うけど、神様や仏様にはお願い事をするもんじゃないよ。まったく」


「あっちの神社でもむこうのお寺でもお願い事させるじゃん」


「浄土真宗……いや、本来の仏教はそういうものじゃないんだけどねぇ。世も末だねぇ」


「何言ってんのかわかんない。いいからちょうだい、じゃないや、下さい! これでいいんだろ」


「まあ、くれてやるのはいいが、七夕がどんな祭りか知っているのか?」


「知らないよ」


「これだから……。では、七夕の話を覚えてからだな。話を聞いたら笹はやろう」


「仕方ないな。手短にしろよ」


「ああ。サクッとはなすよ」


 そうして、坊主は織姫と彦星の話を始めた。

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