オタクには向かない相談
私はこの辺りに半年ほど前に越してきた。だから友達もいなくてボッチだったんだけど、それを遊野先生に見つかってしまったのだ。
――そして次に現れたのが陽子ちゃん。
そのままグイグイ来る陽子ちゃんに圧倒されて、その後ろについて行ったら、江上たちがいた――という「恩」がある。
多分、江上も加奈も似たような経験があるんじゃないかと思ってる。確認はしてないけどね。
だからこそ、陽子ちゃんの相談に親身になって乗る、という方向性は良いと思う。
気休めにしかならなくても、それでも意味があると思うのよね。
だけど、私たちが相談に乗るとしてもだよ……。
う~ん……。
「……ええと、つまり陽子ちゃんは菅野と、付き合いたいんだよね? なんて言うか正式に」
正式に付き合うって何だろう?
って、自分でも思うけど、色々なアニメのクライマックスシーンを思い浮かべれば、何となくお互い告白しあうというプロセスが必要な気がする。
ただそれが現実に当てはまるのかは、当たり前にわからない。
……やっぱり加奈の言う通り、
私がそうやって迷い続けていても、とにかく始めてしまったものは仕方ない。陽子ちゃんがハニカミながら、私の質問に答えてきた。
「え? ああ、そうなるのかな……うん、付き合っているわけではないって英治くんも言ってるし」
というか、菅野はやっぱり陽子ちゃんが好きでは無いんだろうなぁ。幼馴染みだから好きになれ、と押し付けるのは絶対違うし。
ただこれがややこしいのは、オタクはどうしても、
「幼馴染みは負けフラグ」
という先入観がどうしても働いてしまうという事だ。
東山さんの声にプラスして「幼馴染み」までついて回る状況では、私たちはどうしても暗い未来を想像しがちだ。
「じゃ、じゃ……ええと、そうだ! その菅野くんは具体的なことを言ったりはしてる?」
「具体的?」
「簡単に言ってしまうと、どんな女の子がタイプなのかって……そういう話はするもの?」
おお。
加奈が頑張って話を先に進めたぞ。
何だか全力で地雷を踏みぬいたんじゃないかという感じはするけど、親身になって相談するってことは、こういう聞きにくいことも確認することが必要……だと思う。
そして、陽子ちゃんの反応は――
「そう! そうなのよ! それがまた大変で!」
「大変?」
思った以上の反応が返ってきた。
それにしても「大変」ってどういう言葉の選択なんだろう? 思わず渋い声でおうむ返しにしてしまった江上の気持ちもわかる。
「小澤さんはね! 英治君の好みピッタリなの! だから大変なんだよ!」
あ~~……それは確かに大変だ。
陽子ちゃんの恋の行く末も、私たちの相談の行方も。
かなり壊滅的な予感がする。
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