日本政府とイブキの決断
グラスノー大統領が日本から去って数日後、日本政府より私は召集された。
招集理由は勿論私の子供達が神であるということである。
通訳が私とグラスノー大統領の会話を上に報告した結果、政府に神の存在がバレたことになる。
テレビで見たことのあるおじさんおばさん達が並んでいる。
「さて、国家の安全上重大な問題となりうると判断し来てもらったが···本当に神は存在するのかね?」
と聞くのは我が国の首相である。
国のトップになるような男故に無能ではないのだが、前政権がスキャンダルにより与党内の反対派が弾劾し、与党の議席を守った形であるため、政権支持率は高くなく、場当たり的な政策を幾つかしたのみで時間だけが過ぎていた。
かれこれ今の政権になって三年目にもなる。
この場にいるのは各大臣達である。
揃い踏みであると壮観であるが、私の胃はキリキリ悲鳴をあげている。
天使病になるまで底辺の男が今では国の中枢と会話ができるようになったと考えれば出世したなぁと思ってしまう。
「神は存在しますし、新人類も既に産まれています」
「後藤伊吹、詳しく調べたところ息子と娘の二人の子供にその幼い子供達の···君からしたら孫に当たる子がいる。そしてその子が土塊から人を創り、その子供達は友人に養子として差し出している。日本の行政を甘く見てもらっては困る。不審点を調べようと思えば個々人では隠し通す事は無理だと思え」
と法務大臣が言うが、首相は
「まぁまぁ、過ぎたことを責めても仕方がないでしょ。彼女の世間体もある。···神について我々に教えてはくれないかい?」
「···はぁ、わかりました。私の息子の大和は縁を司る能力があり、長門はダンジョンを生成する能力です」
「なるほど、岐阜の北稲荷地域でダンジョンが複数箇所出現したのはそういうことですか」
「ダンジョンを自由に創れるとなると日本経済のさらなる飛躍が期待できますなぁ」
「ああ、そうなれば与党の支持率や我々の得票率にも影響する」
大臣達の中でも老人達は思った事を喋ってしまうらしい。
それだけ質が低いとも言える。
「···」
私は必死に今後の事を考える。
神の存在がバレてしまった以上、今までのように活動することは不可能だろう。
大和や長門は私が必死に人として育ててきた為に人らしい一面もあるが、紀伊は人ではなく本物の神だ。
私自身制御できるとは思っていない。
人が崇めれば恵みを与える神であるが、一歩間違えれば悪神に普通になりうる危険性を孕んでいる。
その危険性を私が説明しても大臣達は楽観視している。
現実に存在する以上、神であろうと人の意見は聞くだろう。
何より親である君の言うことは···と。
「なに、もし我が国に害するのであれば然るべき人員を送る」
「···それは脅しですか?」
「いやいや、神様を一個人が抱えるのがおかしいとは思わないかな?」
「な!? それは肉親を引き離すのと同じことではありませんか!」
「確かにそうかもしれないが、悪神になるようであれば国のために動かなければならないだろう」
私はこいつ等は正気かと疑った。
自分の地位と投票数、政権支持率等のとても国家戦略を担うような存在には話していて思えない。
何より神を都合の良い様に見ているのがとても気に食わない。
私の血を分けた子供達なのに、それを保護···言い換えれば監禁すると平然と言う。
私の中にあった愛国心がどんどん下がっていくのがわかる。
そして私は急速に今後の事を考え始めた。
このままでは色々と私の家族は危険であり、今の地位を捨ててでも逃げる必要があるのではないかと思い始めていた。
せっかく育てたクランも、発展してきた街も、親しくしてきた皆との縁も···それらと大和や長門、紀伊の安全を天秤にかけ、私は子供達を取った。
政府からの事情聴取に従順に聞かれた事を話していき、彼らは薔薇色の未来を思ったのだろう···が、私の中で既に見切りをつけた。
解放され、そのまま岐阜のマンションに戻ると、私は書き置きを残して紀伊を連れて【ヘブン】ダンジョンへと逃走を試みた。
「まぁそういう場合もありますよね」
「後藤さん、困るんですよ···そういう事をされると」
炎上する車、黒を基調とした迷彩服を着た性別のわからない人達が私の車を攻撃した。
紀伊を抱き寄せて横転した車から出ると、謎の人達に囲まれていた。
「政府の上はお花畑かもしれないですがね、国防を考える下の者は今後あなたが出るであろう行動を予測しなければならないんですよ。まぁあんなお花畑の連中の話を聞いたら身の危険を感じて逃亡を図るのはわかりますがね」
リーダーと思われる人物が私に語りかける。
「おっと動かないでください。あなたのレベルでは我々には勝てません。大人しく連行されるのが身のためですよ」
と言う。
私は車が横転したときに腰を強く打って痛みを緩和するために体内で治癒魔法をかけ続けていたし、何故か動かない紀伊を不気味に思っていた。
私が腕に抱えていた紀伊を奪おうと謎の人達が私を押さえつけて、紀伊を取り上げる。
「対象確保し完了しました」
「フェーズツーに移行。対象を施設へ」
「了解「死ね」あ? ゴボ···」
紀伊を抱えていた人物が体中から血を吹き出して倒れた。
「「「真田!?」」」
紀伊は浮かび上がると頭のリングを弄りながら、謎の人物達に指をさしていく。
「バンバンバンバン」
と言うと、謎の人物達の体に大穴が空いたり、上半身が消し飛んだりして、気がつくと五人いたはずの人物達は亡骸になって転がっていた。
「神罰」
と言うと紀伊は私の腕の中に戻り、すやすやと眠り始めた。
私は私よりもレベルが高いと思われた人物を一瞬で殺し尽くした紀伊に恐怖を覚えたが、謎の勢力が私達を狙っていること···恐らく政府の諜報機関か防衛省の特殊部隊当たりだろうが···を理解し、姿を消す魔法を使い、飛行してヘブンダンジョンに通じるダンジョンに向かった。
ダンジョンに到着すると黒服達がダンジョンの入口を固めていた。
先回りされていたか別働隊が抑えていたのかはわからないが、強行突破するしかない。
気が付かれないようにそっと入口に浮かびながら近づくが
バンと私に発砲した。
「天使さんよぉ。姿を消す魔法はサーモグラフィーにはバッチリ反応するんだぜ」
狙撃されたため、私は防御魔法を展開し、防ぐが、紀伊は直ぐに狙撃した男に神罰を下した。
狙撃した男は持っていた銃が暴発し、指から順々にコブができ、それが風船の様に膨れ上がり、全身が肥大化して破裂した。
あまりに凄惨な死に様に黒服達が動揺し、その隙にダンジョンの中に潜り込む。
私の危機であるので私にマーキングをしているマーちゃんも異変を感知しただろう。
巨大な墓石が出現し、地下への道が開けた。
私と紀伊は地下通路を通って【ヘブン】へと続く転移トラップを踏むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます