暴走する紀伊 手から離れた歯車
勘の良い人物たちからはイブキが子供を孕むマジックアイテムを再び使用したのではないかと言う憶測が出ていた。
そして奇跡を起こしまくる姿を見て、これはいくらなんでも様子がおかしいと気づき始めた。
多くの研究者がダンジョンの作物···特に植物系モンスターの栽培に挑戦していたが、上手くいかないのに、ドライアドの生育に成功し、佐久間教授からの発表では十五歳前後の知能を持ち、言葉を話せるだけでなく、文字を書くこともできると発表した。
モンスターは混血を除いて社会性が無いとされてきた定説が壊れた瞬間であり、再び人権団体がアップを始めたが、ドライアドの動画によりそれは沈静化した。
『ドライアドのイアです。まず色々と言われておりますが、私は混血では無くモンスターではありますが、神より知恵を頂いた為にこうして喋ることができています。紀伊というお名前でありますが、私にとって彼は神様であり、彼のみが私の様な存在を生み出せるでしょう』
と話した。
この発表にイブキは頭を抱えたが、仕方がないと手札を切った。
「天使病患者は特殊な固有能力を保有しており、紀伊はモンスターに知恵を与えるという能力を持っていたまでです。私自身の固有能力は皆さんの憶測に任せます」
という動画を投稿した。
これによりアメリカが何故天使病の患者を集めていたかという理由が日本国内で判明し、待遇が良いからアメリカに渡った天使病患者が実は凄い能力を持っていて、知らず知らずのうちに国外に国益が流出していたのではないかという話にまで発展し、外務大臣がそんな事実は無いと、発言したが、国内の天使病患者達が実は私はこんな固有能力を持っていますと新聞やテレビにカミングアウトしたことで外務大臣の首が飛ぶスキャンダルにまで発展した。
それにより天使病になれるマジックアイテムの価値が爆増し、一時魔導書よりも高価になるという事態に発展した。
ただこれにより神というのが知恵を与えたからという説明となり、本当の神様というのは隠すことに成功した。
イブキは天使病の事を知っていながら隠していたと批判され、また炎上したのだが、イブキの事を害す事を言っていた人物に、不運が襲うようになり(紀伊が悪意を感じて自己防衛の為に特に害す可能性がある人物に天罰を与えた)、イブキの固有能力が好意には利益を悪意に対しては損害を与えることなのではないかという噂が広まるのであった。
「父上暴れまわってるねー」
「そうだね四万十」
新人類とも言える東横薩摩と東横四万十の二人の胸には巨大な魔石が埋まっていた。
二人は分類的にはモンスターになるのだろうと東横雪子は考える。
何より成長速度がおかしい。
産まれた時から小学生くらいあったが、一年で高校生くらいに成長していたからだ。
「ねぇ薩摩、四万十。紀伊について二人が詳しく知っていることって無いの?」
「母さんに結構話したと思うけど、紀伊父様はまだ幼く、能力が全く制御できていませんからね。それに神は人作り伝説があるため、私らの様な存在を創り続けるでしょう。エルフやドワーフといった架空の人類種も創るかもしれませんし、新しい神を創るかもしれません。我々人類は神の気まぐれをただ受け入れるだけなのですよ」
「まだ知恵の実を創っていないだけマシでしょう。知恵の実が創られれば楽園からその人種は脱落しますからね」
「楽園?」
「神の領域···現代で言うところのダンジョンですね」
「知恵の実を食べればあらゆる知恵が身につく代わりにその種族は神の恵みを放棄したことになりますから···呪われるのではないでしょうか」
「なるほど···」
「あとは紀伊様は強力な主神ですが、母君がダンジョンを産み出す奇跡をお持ちである以上、紀伊様はダンジョンをお創りになろうとは思わないと思います。母君が創った奇跡(ダンジョン)を享受すれば良いのでね」
「···とりあえず長門と大和が戻ってこないと話は始まらないかな···早く帰ってきてくれー」
東横はさらなる混乱の前に止められる可能性がある長門と大和の帰還を願うのであった。
私ことイブキは紀伊に関してはどのように扱えば良いか凄く迷っていた。
祖母としていけない事···無闇矢鱈に奇跡を起こすことを注意したり、人やモンスターを簡単に創ってはいけないと説明するとわかってくれたのか、わからないのか微妙であるが、人を創り出す事は無くなった。(奇跡は起こしまくるが)
こんな状態なのでダンジョンに私は潜ることはできず、教育も中途半端な状態。
それでも基礎部分が苦労して整備していたので回っているが、宗教団体の様になってきていて少し怖く感じている。
北稲荷の地に住む混血が私の家族を崇拝の域に達しており、子供の名付け親になって欲しいみたいな事から、私の銅像を作ったので見て欲しいとか言われたりもした。(勿論私に無許可で作りやがった)
私が動かし始めた歯車だが、私の軌道を超えてしまった感覚がしていた。
このままガイアクランは、北稲荷は、長門や大和、紀伊は、そして新人類の薩摩と四万十は···どう動いていくか私には検討がつかない。
そんなある日、モーリシャス共和国という国の大統領が私に面会したいと外務省から連絡があった。
国の代表が私に何か用がある様には思えないが、大統領も天使病と聞いてもしかしたら神を止める術を持っているのではないかと思うのであった。
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