長門妊娠

 大和と長門が四年生にあがり、夏頃になった時。


「オゲェ」


 ここ数日というか数週間、長門の調子が悪い。


 吐くことが多く、頭痛、腹痛、下痢、腰痛と原因不明の体調不良に悩まされていた。


 お医者さんも


「風邪からくる体調不良でしょう。薬を出しておきますから学校は休んで安静にさせてください」


 としか言われず、私はクラン運営を月精達一軍メンバーに任せて看病を続けていた。


「長門、大丈夫かな?」


「大和は大丈夫なの?」


「うん、僕は元気だよ」


「風邪···にしては長引いてるなぁ。食あたりって可能性も捨てきれないけど···一体なんだろう」


 今まで長門が体調を壊すことがなかっただけに心配になったが、病院に行ってから数日後には体調が良くなり、問題なく学校に登校できるようになった。


 それから三ヶ月後···


「長門お腹出てない?」


「ん?」


 ポッコリ···いや、明らかに太ったという感じではないお腹の膨れ方をしている。


 私はもしやと思い薬局に行き、妊娠検査キットを購入し、長門に使わせてみると


「陽性···」


「「···」」


 長門も大和も黙っている。


 その沈黙が答えだ。


 こいつら兄妹でヤッタな。


「大和、長門···どっちから誘った」


「···私からです」


「え? 長門からなの!?」


 意外や意外、長門から大和を誘ったと暴露した。


 事の経緯は約五ヶ月前、四年生になり、性教育を受けたらしく、女性の体の変化について色々授業を受け、そこで子供の出来方も軽く触れたらしい。


 一方大和も早熟故に実は精通しており、運動をすることでムラムラを発散していたらしいが、次第に我慢ができなくなっていったらしい。


 で、興味を持ったムッツリスケベの長門と、性欲をどうにかしたい大和が私がクランメンバーを鍛えていたり、仕事で家を空けた時にこっそり行為に及んでいたらしい。


 それも一回ではなく複数回に渡り···結果がご覧の有り様である。


「確かに長門も大和も早熟で、既に高校生並みの体型はあるけど···あちゃー、兄妹でやっちゃうかぁ」


 デキてしまったものは仕方がない。


 じゃぁどうするのかが問題だ。


 家系図に表すと一から二に分かれてまた一に収束するというハプスブルク家(外国の近親相姦しまくった王家)もびっくりな様相になっているが、マジでどうしようか。


 明確なスキャンダルであるし、私が配信をしている以上隠すこともできない。


 親としては墮胎が喉元までこみ上げてきたが、グッと飲み込んでどうするかを話し合う。


 まず長門を病院に連れて行くのは確実、クランのメンバーにも説明、配信は孫が産まれてからになる。


 こんなことを仕出かした大和と長門はもうクランでしか働くことができない。(子供の過ちと言えば聞こえは良いが、生命が関わってくる以上、アウトのラインは超えてしまっている)


 クランのリーダーを世襲させるのも怪しく思えてしまう。


 ああ、マジでどうしようか···


「とりあえず病院に行こうか」


 長門を連れて病院に行くのだった。









 病院での検査結果は母子共に健康、もう少し成長すれば大和の優性遺伝子によりこの子も天使病で産まれてくる事になるだろう。


 そうなればお腹に輪っかと翼が浮かび上がってくる。


 私の時もそうだったように。


 そうなれば隠すことは不可能となる。


 病院の先生は


「うん、肉体的にはほぼ問題なく産めると思うよ。ただ墮胎するには赤ん坊の育ちが早いから、決めるなら早くしたほうが良いよ」


 と言われた。


 長門はどうしたいかと聞いたら


「産む」


 と即答。


 小学生が妊むなんてどこの戦国武将だと言いたいが、それも口の中で、咀嚼し、飲み込む。


 クランの幹部を集めてこの事を話すと山姫と月精はアチャーみたいな顔をしており、スカーレットは


『新たな子孫誕生をお祝いします。おめでとうございますとスカーレットは言います』


 と普通に祝福。


 椎名(洋介)は


「まぁ神様だから仕方がない」


 とどうしようもなかったと諦めている。


 他の幹部メンバーは微妙な顔をしていたが問題なければ産むんでしょという風に受け入れていた。


 そして大和と長門のクランリーダーの世襲は白紙に戻したいと話した時のほうが反応が大きく、全員からそれは辞めてくれと言われた。


 理由としては子供達がいる人達は子供達が大和と長門に懐いているから、下手に白紙にして混乱を生じさせるよりは公言しているのは取りやめで良いが、暗黙の了解で大和か長門に世襲させて欲しいと言われた。


 子供が居ないメンバーからは大和と長門が私に次ぐクランの象徴的存在であり、逆に言えば三代目が早めに産まれたことでクランのリーダーの交代を比較的円滑にすることができると利点を話された。


 私が長い事リーダーをやるのは負担も大きい為、早めに院政(会長職に就き、実権は若い人達に任せる)を敷いて欲しいらしい。


 まさかの反応をされたが、大和と長門の学校の方でも意外な反応をされたと言われた。


 先生はこの事を重く受け止めていたが、子供達は喜ぶと同時に祝福され、クラスだけでなく学校全体で祝福されたと二人に言われた。


 高校生の中には大和君の性処理を引き受けたいと言ってくる娘も居て、私は軽い恐怖を覚えた。


 そして改めて理解した。


 この地域では私達は王族の様な扱い···混血にとっての象徴になっていることを···


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