森本の駄菓子屋
やはりというかなんというか···子供が一人じゃ満足できなくて連チャンで子作りしているメンバーが大半であり、椎名一家はお腹に四人目が居るらしい。
私の予想はあくまで予想であったらしく、最初は女子が多かったが、次第に男子も産まれてきており、子供の男女比は四対六くらいに落ち着いていた。
で、北稲荷には幼稚園も保育園も無いので、必然的に母親が子供達の面倒を見ることとなり、結婚した女性陣はほぼ戦力外となった。
そのためクランの事務を担っていた三令嬢達のグループも令嬢達が、子育てで忙しくなり、事務メンバーだけでは膨れ上がったクランメンバーの給料管理ができないと言われ、外部から給料を管理する元銀行員等を明聖社経由で集め、なんとか長門や大和が小学校に上る前にクランの立て直しを終えた。
正直立て直したと言っても明聖社や探索者支部の力で無理やり立たせているって感じが強く、基盤もガタガタ、幹部人員も少ない。
というかスカーレットは子供の育児を気に入ったとか言う理由で連れてきた新人の明聖社が連れてきた大勢の混血の中から二人ピックアップし、彼女らに育児を任せていた。
まぁそれは別に良い。
明聖社が新たな秋津鉄の産出するダンジョンを押さえたことを発表し、年間の推定産出量が一千万トンに及ぶとし、業界は騒然となった。
それは明聖社が武具の製造において頭二つ以上他社よりも大量かつコストダウンをすることが可能になった事を意味し、その分だけ国内だけでなく海外への輸出へ回せると発表。
そのダンジョンがある場所を混血で集めたことで他社からの引き抜きや調略を及ばないようにした。
混血の中に普通の人間が混ざれば目立つからだ。
一部新聞社は明聖社の混血の活用方法を現代の奴隷契約と揶揄したが、逆に混血が一部地域に隔離された方が日本にとって良い効果をもたらすと学者が発表し、飛び火して私のチャンネルが燃えた。
そんな感じで北稲荷は長門が創った秋津鉄が出るダンジョン改め、岐阜県には鉄の神様を祀る南宮大社があることから、祀られている神様の名前から【金山彦鉱山】と言う名前が与えられた。
そこで採掘機を使い、採掘をしていくが、ダンジョンなので修復の力が働く。
放置していればじわじわと元に戻るので、毎日掘る場所を変えて採掘をし、掘り出された鉄鉱石をダンジョンに入れる大きさのトラック(四トントラック)に積み込み、複数台のトラックが行き来することで運搬されている。
レールの敷設も始まっており、それが完了すれば更に大量の鉄鉱石を運搬できるようになるだろう。
採掘する人員の殆どが混血で、現場監督等は純血の人が担っている。
それに対して思うことが無いといえば嘘になるが、ノウハウが無いため従っている。
明聖社としても支部長クラスまでなら能力があれば混血でも別に良いと考えており、あくまで会社に忠誠心があるかどうかで決まっているらしい。
その運び出された鉄鉱石を製鉄し、鉄や鋼へと変えていく。
巨大な製鉄工場も建設され、それらが加工工場で鉄製品、鋼製品へと変わっていく。
この工場でも混血が平社員、上の方が純血社員が占めていた。
それでも大きな会社に雇われて安全に働けるというのが難しかった混血の人達はよく働いた。
それに伴う街作りも明聖社主導で進み、国から混血者向けの小中学校の開校準備が、探索者協会と明聖社の協力で高校の開校準備が行われた。
保育園も二年以内に開園することとなり、町として機能するようになっていった。
ダンジョン【おいなり公園】が開放されても混血の子供がまだ小さいこともあり、大和と長門、椎名鈴音や佐藤初春、萩原白露等の子供達が公園を広々と扱っていた。
「えい! えい!」
大和と長門は元からレベルがあり、魔法が扱えたが、他の娘達はレベルが無く、子ワタでも倒すのに苦労していた。
大和と長門がお兄さん、お姉さんということで小さい子をアシストして、大和が『チェーンショック』という当たると近くのモンスターも麻痺する魔法や長門の『暗黙』という魔法で子ワタを盲目状態にして浮けなくし、落ちてきた子ワタを娘達が倒し、お小遣いを稼ぐというのをしていた。
「長門、大和は来年から小学生だね」
「いいなー」
「へへーん、少し早く勉強してくるね!」
「皆は小学校バラバラになるね···」
大和と長門は百合ヶ丘のメアリーヒルズに住んでいるので百合ヶ丘にある岐阜県探索者協会付属小学校に進むが、他のメンバーは北稲荷に住んでいるので、北稲荷に小学校が開校するまでは隣町の小学校に、開校したら北稲荷の小学校に編入という形を取るらしい。
「学年が二つも離れてるもんな」
「私達が四月産まれなら皆と一つしか学年が変わらなかったのにねー」
そう長門が言うが、仕方がないものは仕方がない。
「そういえばもう少ししたらここに駄菓子屋さんができるんでしょ?」
「楽しみだな!」
「お菓子いっぱい買うんだ!」
今の御時世に駄菓子屋が経営できるのかというとだいぶ厳しいのだが、北稲荷では話が変わってくる。
まず子供が爆発的に増えている為に子供をメインの客層にしたお店も必要となり、駄菓子屋、ゲームショップ、コインゲームのあるゲーセンは子供達の遊び場として必要になってくる。
そしてほぼ子供達に開放される【おいなり公園】のモンスターはほぼ無害の子ワタで、一体倒すと約千円稼ぐことができる。
ゲームソフトが約一万円のご時世だが、子ワタを十体倒せば買えると考えれば、子供でも買えるので、駄菓子屋でも十分に利益は出せる。
問題はやってくれる人が居るかという問題だが、混血の森本さんという五十歳のおじさんが手を挙げた。
「俺は最初期の混血ということで人一倍混血の闇を見てきた。もう休みたいのと、子供達の元気な姿を見て過ごしたい」
と言ってきた。
森本さんはピクシー系統の混血で、キングピクシーと言えると思う。
大きさは中学生くらいしかないが、歴戦の風格がある。
数年前にぎっくり腰をやってから、探索者業を辞めて、貯金生活をしていたが、明聖社のスカウトに乗って移住し、イブキの町内の産業説明会で駄菓子屋の開業をしてくれる人を募集したらやってやると言ってくれた。
コンビニ程度の大きさで開店時間も幼稚園や小学校が終わる十四時から子供達が帰るの十八時までの四時間営業にすると決め、ガイアクランがお金を出して家とお店が一体化している建物を建てた。
開業すると混血の大人達が連日押し寄せた。
子供の頃に味わう余裕が全く無かった彼らは失われた幼少期を取り戻そうとコンビニで買うことのできない駄菓子を食べ比べ、楽しんだのだった。
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