クラン創設
「イブキさん···またできちゃったっぽい」
九月のある日、椎名華澄がそう言っていた。
どうやら二人目を妊娠したらしい。
「おめでとう! 良かったじゃん!」
華澄はまた復帰が遠のいた事を気にしているのかもしれないが
「華澄はチームよりも家庭の事を第一に考えてもらえば良いよ。それこそ毎年子供作っても私は別に祝福するだけだから。その代わりちゃんと愛情を注いで育てるんだよ。いいね!」
とは言うものの、こうもポンポン子供ができるのも、大和の固有能力による物かもしれない。
マーちゃんこと辻聖子の話では大和の天使···いや、神としての能力は縁らしい。
縁がどこまでの範囲を示すかわからないが、御縁の全てを内包していた場合、子宝を意味する縁も含まれている。
良縁がよってくるのはあるが、知らず知らずのうちに効果を付与されている可能性が高い。
(ただ大和の能力で子供ができやすいとか言うのは無粋か)
私はそうなると男性メンバー以外は戦力にならない可能性も考慮しないといけないと考え始めるのだった。
十月、全員が準中型の車の免許を取得し、私含め全員が上級下位のレベルに到達したことにより、いよいよクランの設立を決める。
クラン名はチーム名から引き継いでガイアであり、初期構成メンバーは十七人。
メンバー全員に同意書を回した。
クランになることの一番の違いは金の支払いであり、今までは全員参加のダンジョンアタックは基本均等に分配していたが、今後はチームとして動くことになり、東横から既存のクランの報酬情報から年俸制を採用した。
イメージは昔流行っていたプロスポーツ選手への給料形態に近く、まず入団初期は手取り三十万の年収三百六十万円を最低年俸とし、そこからクランの運営状況によるが、毎年十二月に年俸更新を行う感じになる。
で、クランの指示でダンジョンアタックする場合の金額は一旦クランが全額預かる。
それを再計算し、個人査定を出して年俸を出す感じだ。
クランの初期資金は銀行の融資やスポンサーから出してもらう形で、大抵のクランは十から二十億の初期資金で始まるのだが、私達のバックに明聖社と探索者支部が付いていることもあり、銀行七社から合計百億近くの融資を受け取ることに成功した。
好景気で銀行側が貸出に強気というのもあるが、支部長が根回ししてくれていたらしい。
これで初期資金にこまること無くクラン運営ができる。
ちなみに計算ソフトで私達の収益をざっくり計算すると週三ダンジョンに潜り、基準を【関ヶ原】ダンジョンだとすると一日平均三千万(マジックアイテムが複数個ゲットできたら更に二千万近く上がる)にし、計算すると年間で四十二億稼いでいる計算となる。
勿論換金の際に税金を支払っているので粗利益がこれになる。
こっから給料を差し引いたり、車のローン等を引いていく感じだ。
チームとしては異常な利益になっている。
これを更に個人査定をすると椎名洋介が最高額の三億円(家庭持ちということで査定を基準より上げている)。
次いでリーダーの私と東横が一億五千万。
松田、萩原も佐藤と佐倉を家庭に含ませて一億三千万。
県外組の五人が約八千万から九千万(前衛組が危険度で少し高い)、残りの新人組四人が各三千万で合計すると約十四億五百万となる。
なので約二十八億円はクランへとして使える資金になる。
再計算結果は皆納得していて、今までが貰いすぎであったという意見が大半で、余剰資金は老後にダンジョンに潜れなくなった時の年金みたいな感じにしたいとか、マンションの購入、建造資金や混血で事業を起こしたい人への資金にしたいと色々な意見が飛び出した。
「クランを創設するにあたり、今年は追加で十四名雇いたいと思っている。四月に約束した探索者高等学校を卒業した残りの十一名と土岐先生から紹介してもらっている女性三名だね。総人数が三十名、実働人数が二十七名になるから、九人チームを三つ創るよ」
「教官がチームに一人つかないといけないから私のAチーム、(椎名)洋介のBチーム、松田と萩原のCチームに分ける。補佐として私の所はスカーレット、山姫、月精を、Bチームは東横、小風と南波、内藤を、Cチームはドナルド、ロドリゲス、池田で初動は回そうと思う」
「で、車が必要になると思うから初期資金でミニバンを三台購入して、各自の車では乗り切らない分はミニバンで移動するようにしようか」
「上級ダンジョンはどうするの?」
「下が育って新しいリーダーが指名できるようになったら十二名くらいで上級ダンジョンアタック用にチームを再編するよ。まぁ当分は無理だね」
東横の問に答える。
「じゃぁ当分は【関ヶ原】ダンジョンに引き続きっすか?」
「うーん、収入は落ちるかもしれないけど【関ヶ原】、【サザン海】、【フラワータウン】の百合ヶ丘でメジャーな草原タイプの中級ダンジョンをローテーションしながら挑もうと思う。飽きてきたっしょ【関ヶ原】」
「まぁそれは確かにそうっすが」
ロドリゲスの言葉に皆頷く。
瘴気が漂う【関ヶ原】ダンジョンより海があり、明るい【サザン海】や花畑が広がる【フラワータウン】の方が気持ち的に楽だからだ。
「他にも細々としたクランの決まりを作るけど、クラン創設に反対する人はいる?」
全員が賛成を表明する。
「じゃぁガイアクラン始動!」
と私はクラン創設の書類の代表者サインの場所に名前を書くのだった。
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