電子魔導書
「皆に質問だけど、もし私が使う魔法で覚えたい魔法ってある?」
私が配信中にふと皆に質問をした。
皆強力な攻撃魔法である『サンレイ』や万能防御魔法である『シールド』を覚えたいのかなって勝手に思っていたが、アンケートを取ってみると『ショック』の魔法を覚えたい人が多数だった。
意外だったので理由を聞いてみると、モンスターを鮮度の良い状態で殺したり気絶させるのに私が多用している『ショック』が便利に見えて仕方がないらしい。
視聴者達も探索者である人も多く、強くなるのも、稼げるから強くなるのであって、強くなることを重きを置くよりも稼ぐ事の方が重要だ。
私の視聴者は私という成功例を見て自身の活力にしている節があるので、私から有益な情報を得ようと必死だ。
なので彼らが求めるのは効率の良い稼ぎ方で、魅せる戦い方ではない。
シーサーペントとの戦闘の動画も視聴率は取れたが、それよりもカニやエビ狩りの方が視聴回数が取れていた。
「となるとショックを改良した魔法を生み出した方が求められている?」
私は空き時間で『ショック』の魔法の仕組みを解析し、それにインパクトを混ぜた『ノッキング』という魔法を編み出した。
この魔法は生物の鮮度を保つ効果があり、何より血管にアンモニアが混入しない仕組みになっている。
生物が死ぬとアンモニアの匂いや肉が血生臭くなってしまうので、それを防ぎ、外傷が無ければ高く素材を買い取ってもらえる。
剥ぎ取りが下手でも金になる。
これを早速本に纏めて万能防御魔法と一緒に岐阜県探索者協会に提出し、動画作成の許可を求めた。
一応実地テストとして六基を完全習得していない松田と萩原を除いたメンバーに覚えさせたところ、『ノッキング』は元の魔法の『ショック』が下級下位や下級中位で覚えられるため、数日の練習で全員が習得し、万能防御魔法は複雑ながら、練習をすれば二週間程度で習得することができた。
探索者協会で六基を覚えさせた人員に、私の解説動画と魔導書のコピーを配布したところ、九割の人員が二週間以内に、残りも三週間で全員が二つの魔法を覚えることができたと報告が届き、動画配布と魔導書の配布許可も降りた。
ただ魔導書の配布はちゃんと金を取れと言われた。
理由としては無料配布をした場合、既存の魔導書の価値が低下するという推測が働く可能性があることや、無料配布という例を一回でもやれば次の魔法も望んでしまい、そこから誹謗中傷に繋がる可能性がしてきされた。
「まぁ有料でも叩く人は叩くだろうけどね」
アンチの書き込みを見ているとただ人気者を叩きたいとか、成功しつつある私を僻んでいるからどんなことをしても嫌味を書き込んでくるんだわ。
実害が無いので無視を続けているが、毎回コメ欄が燃えるのはいい加減学習してくれないかな···
ちなみに重要配信でもあるのでメンバー限定の配信で告知し、概要の説明をして投稿することと、この動画の一切の切り抜きを禁止する警告を通達するつもりだ。
無いと思うが魔導書を曲解した場合魔法が暴走し、効力が反転する可能性がある。
そうなった場合万能防御魔法は害は無いが、『ノッキング』は自身の身体に『ノッキング』をしてしまう可能性がある。
「まぁどうなっても自己責任だからな···こればっかりは」
私は配信の準備を進めるのだった。
私がメンバー限定配信にて六基の次の段階···応用として人工的とは言わずに特殊な魔導書を使うことで多数の人に魔法を覚えさせることができることを話し、二つの魔法を公開した。
『ノッキング』は二万円、万能防御魔法の『シールド』は三万円と強気の値段設定にしたが、ダウンロード販売開始と同時にアクセスが集中し、あっという間に二万ダウンロードを突破した。
配信終了後に解説動画を配信するとコメント欄がやっぱり地獄とかし、金の亡者とか言われていたが気にしない。
ネットニュースにも早速取り上げられ、掲示板ではお祭りの様相を見せていた。
【天使のイブキ 特殊な魔導書を公開】
天使のイブキがまた驚くべき行動をみせた。
魔法理論である六つの基礎(吸う、練る、放つ、巡らせる、纏わせる、交わる)を覚えた者しか読むことができない電子魔導書の販売と解説動画が公開された。
切り抜き動画の転載を本配信に限り全面禁止し、破った場合法的処置が行われると脅しとも見られる発言をしていた。
公開された電子魔導書にはモンスターを外傷がない状態で気絶させる『ノッキング』という魔法と、万能防御魔法というあらゆる攻撃に一定の効力を持つ天使のイブキが得意とされている魔法であった。
筆者も六つの基礎は習得済みなので、魔導書を読むことができたが、六つの基礎を覚えていないスタッフに確認すると魔導書を読むことができないらしい。
平均習得日数は長くても二週間半らしく、筆者も挑戦してみることにした。
天使のイブキは魔法業界に革新を齎すのか、それとも社会に混乱を齎すのか···まだそれは筆者にはわからない。
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