車納車 サザン海ダンジョン 一
クリスマスの十二月二十五日···男性陣が動いていた車が駐車場に並んでいた。
「マイカー!」
「うーん、自前の足があるのやっぱり良いなぁ」
チームの車選びをする中で、松田と萩原も車を購入していた。
二人は一括払いではなくローンを選んだみたいだが···
駐車場に並んだ私達の車は六台、私の軽自動車と東横の支部から借りているバン、椎名一家のファミリーカー、そして新車の三台である。
まずは松田の車から。
松田の車はコンパクトカーでハイブリットの赤い車だ。
松田の場合趣味でキャンプをすることがあるので遠出した時に燃費が良い車を選んだ感じらしい。
またコンパクトカーとは言うものの積載量は多めで、買い物にも適していると言える。
続いて萩原の車はターボ付きの軽自動車で、私のよりも加速性能が良く、普段使いしやすいのが特徴的な車だ。
バスで行きにくい場所とかにスイスイっと行ける都市向きの車とも言える。
まぁ萩原は本買って飾ったり読むのが趣味なので古本屋に通う用に足が欲しかったのだろう。
佐藤と佐倉はバスで行ける範囲で満足しているし、男共を上手く使うので車は要らないのだろう。
そしてチームの車はバスコンと呼ばれる物で、結局大型免許が無いと運転できないが、シャワーにトイレが完備されて就寝人数が八人、乗車人数が十人の動くホテルのような車を購入していた。
「幾らしたん?」
「一億五千万の頭金三千万の二年ローンです」
「つまり月約五百万稼がないといけない感じね」
「そうなるな」
「高すぎだろ!」
私が突っ込んだが当面はこの車のローン返済をしながらの活動になるだろう。
(椎名)洋介は奥さんである(椎名)華澄に耳を引っ張られていた。
そりゃ子供が産まれるのにこんな高い買い物したら怒るわ。
私達女性陣? の予想では高くても五千万くらいだろうと思っていたらこれである。
ちなみに内装を詳しく見るとシャワールーム、トイレ、装具の大型自動洗浄装置(食器洗浄乾燥機の馬鹿でかいバージョンと思えば良い)、テレビが三台、二人用ベッド、ソファーベッド四人分、二人用ソファーが二つ、四百リットル冷蔵庫一台、電子レンジ、IHコンロ三箇所、シンク及び作業台、湯沸かし器、各テレビと繋がっているブルーレイレコーダー、高性能のカーナビが付いていた。
収納スペースも各所に散りばめられており、そりゃこんな値段になりますわと納得した。
ただ移動基地としては十二分の性能をしており、これさえあればホテルに泊まる必要は無いと断言できる。
辺境のダンジョンとかでも快適に過ごせること間違いなし。
それを踏まえても高いし、現状大型免許を持っているのが洋介だけなので何人かは大型を取る必要がある。
「一月から週三必ずダンジョンに潜っていくぞ! 稼がないとローンで破産するわ!」
「「「おう!」」」
威勢の良い男性陣だった。
ダンジョン都市に中級ダンジョンも複数箇所ある。
【サザン海】ダンジョンは内陸の岐阜県なのにダンジョン内は海の様な広い湖に繋がっており、カニやらイカやらサメの様なモンスターが生息している。
【関ヶ原】ダンジョンは鎧武者や足軽というモンスターが大量に湧いてくる。
モンスター同士で毎日合戦をしているダンジョンでもある。
【フラワータウン】はピクシー系列の上位種であるクイーンピクシーが多数生息し、オークナイトやオークポーンといったオーク種もいる普通の中級ダンジョンだ。
【百合大森林】は森林ベースのダンジョンで草原タイプでは無く天井があるので洞窟タイプのダンジョンに分類される。
植物系モンスターの宝庫かつ宝箱から出る物も植物の種が多く、食べると能力が僅かに上がる不思議なきのみだったりストレス軽減等に多大な影響が出る香木だったりと一貫している。
他にもダンジョン都市の百合ヶ丘の近くには中級ダンジョンが車で四十分圏内に幾つもある。
今まではレベルアップ目的で不人気ダンジョンばっかり潜っていたが、お金が必要なので、今日からはダンジョン都市内の儲かるダンジョンである四つを重点的に潜っていく。
今回潜る【サザン海】もそうだが、ダンジョン都市のダンジョンは中級ということもあり、駅みたいになっている。
アイテム屋と換金所があるだけでなく、装具を十分で洗浄してくれる自動洗浄装置に銭湯まで施設内にある。
近くにはレストランや治療を直ぐに受けれる診療所、タクシーやバス乗り場等の施設が一通り揃っている。
ただ都市のダンジョンなので駐車場は広くないので、松田がリヤカーを牽引する車以外はバスに乗ってダンジョンに向かった。
入口近くにはゲートがあり、駅の改札口みたいに探索者証明証をかざさないと入れない。
松田がリヤカー用の大型ゲートから、私達は普通のゲートから内部に入り、潜っていくと、燦々と太陽みたいな光源が照らす真夏の海辺みたいな場所だった。
「おお、本当に海だ」
「モンスターがうようよいなければ海浜公園みたいな活用ができるんですけどね」
と萩原が言う。
ただよく見るとサーフボード片手に波乗りしているグループもある。
「ああいうのは上級探索者で余裕があるので遊んでいる感じだね」
と東横が言う。
サーフボードから落ちてサメに食べられているが、サメを内部から破壊して出てきた。
そういう人種達なのだろう。
「さて、事前情報だとこのダンジョンには魚介系モンスターが五十種類以上生息しているらしく、値段も全然違う。一番高いのはクジラみたいなモンスターだけど、私達には運搬できる能力が無いから見つけたら位置情報をこのダンジョンの有料掲示板に書き込んで情報料を得る感じで、狙いはカニとエビね」
このダンジョン、一番稼げるのは釣りなのだが、専用の釣具が一式百万円以上するので今回は見送っている。
ただ海岸にも巨大なカニやエビみたいなモンスターがいるので、そいつ等も一体五十万という金額で買取をしてくれる。
リヤカーの容量と私の翼を使ってもせいぜい二体の運搬が限界だが往復する時間を考えればなかなか稼げると思われる。
「それに私はサーチがあるからね!」
と早速サーチの魔法を使うと、砂浜から無数の反応がした。
「え? なんか足元からも反応があるんだけど···」
足元を見ると小さな穴が空いている。
試しに流木の枝を突っ込んで見ると何かに当たる感触があった。
「ん? 嬢ちゃん達このダンジョンは初めてか?」
と先ほどサメに食われていた男性が話しかけてきた。
「はい、初めてですが、サーチの魔法を使ったらこの穴に引っかかって」
「あーマテ貝のモンスターの穴だよ。塩を穴の周りにまくと出てくるぞ」
「えっと···ジャンボマテ貝···一体五キロで値段が三千円か!」
「塩巻けばボコボコ出てくるから小遣い稼ぎにはなるんだよ。中級だからカニ倒した方が金にはなるがな。じゃ! 死なない程度に頑張れよ〜」
とめっちゃ日焼けしたおじさんはサーフボード片手にどっか行ってしまった。
「まぁ私のサーチ技量なら分別がつくけどね」
気を取り直しサーチで探してみると大きめの反応が幾つかあった。
その場所に向かってみると、カニのハサミが砂浜から出ていた。
「これ隠れてるつもりかな?」
「めっちゃバレバレじゃん」
「どう倒します? 素材を傷つけるわけにはいきませんし」
「任せて」
椎名が笛を吹くとカニがモコモコと砂浜から出てきて、そのまま腹を出して泡吹いてジタバタしている。
「音波攻撃には弱いよね〜じゃ、イブキさんトドメお願いします」
「あーなるほど。理解した」
私がショックの魔法で巨大なカニに触れると感電して動かなくなった。
「音で混乱させてイブキさんがトドメを刺す。あとは氷漬けですかね」
「稼げるけど動画映えは全くしないね」
「まぁ稼ぐための探索ですからこれで良いんじゃないですか?」
私がサーチで探す、華澄が笛の音色で混乱させて、私か東横がトドメを刺すコンボが決まり、他のメンバーは買ってきた塩でジャンボマテ貝を集める作業をしてもらった。
四時間で巨大カニ十二体、エビ二体、マテ貝五百キロ分集まり、換金すると約七百三十万稼ぐことに成功した。
それを人数プラス車のローン代で九分割にすると一人当たり約八十一万となった。
「次から釣具買いましょう。俺達暇ですもん」
「そうだね。三組ぐらい釣具あったほうがいいかもね」
とりあえずこの日はそれで解散した。
「釣り対決みたいにすれば動画映えするか?」
私は動画の撮影の事も考えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます