インフルエンサー
修行の成果
久しぶりのラーメン···楽しみにしながら朝からラーメンをやっているチェーン店のラーメン屋に車を停めると、店から豚骨の独特な臭いが漂ってくる。
今日の服装はダンジョンに向かうのでつなぎを着ているが、これからお腹が更に大きくなったら妊婦の服を購入しなければならないと、少々頭を抱えている。
「らっしゃっせ〜」
見慣れない顔なので、私が半年間修行している間に入った子なのだろう。
厨房で先輩の指示で長ネギを細切りにしている。
「テーブル席が空いていますのでそちらにお座りください。前掛けは使われますか?」
「そうだね借りようか」
話しかけてくれた女子大生のバイトの方も前までは黒髪だったのに金髪に変わっていた。
メニューは期間限定以外は変わりなく、私は迷わずにネギラーメン大盛りとご飯大盛りを注文する。
これで千百円なのだからありがたい。
スマホをいじりながらニュースを見ると、私の配信の中で出てきた人工的なダンジョンは生成することが可能なのかとか、魔法を理論化することが可能なのか有名な大学の教授が複数否定的な意見を述べていた。
「ふーん、まぁ赤っ恥かくのは彼らだから良いか」
張本人である私は気にすること無くラーメンを待つ。
ラーメンが到着し前掛けを着用してから割り箸を割って
「いただきます」
ラーメンを啜る。
口の中に豚骨醤油とニンニクの濃厚な味わいが広がり、秘伝のタレに絡めた白ネギと麺を絡めるとご飯が進む進む。
口の中で『吸う』をもう無意識にしているので飲み込む前に、全て栄養として体に吸収していく。
吸収した栄養は活力だけでなく、適切な筋肉をつけるのにも役立っているし、子供達への栄養にもなる。
この『吸う』を覚えてから体重は子供を抜きにしても重くなったと思う。
ただ脂肪ではなく質の良い筋肉がついたという意味だ。
魔力を全身に巡らせることで筋肉が活性化し、筋肉が付きやすくなっていた。
お陰で素の力が上がった気もする。
「マーちゃんが言ってたっけ、レベルが上がると体内に蓄えられる魔力総量が上がるから、無意識に体から漏れ出る魔力が肉体強化をしているって言ってたっけ。だから異常な力でも魔力で肉体が保護されているから筋肉が壊れることは無いらしいね」
レベルが上がれば力や体力が増えるカラクリはそうらしい。
まぁ長い期間魔力を浴び続けると筋肉が変質していき、肉体強化無しでも凄い力を出せるようにもなるのだとか。
巡らせると纏わせるを常に行って数年単位で続ける必要があるらしいし、マーちゃんは戦士職じゃなかったので実際に効果を体感する前に肉体を捨ててしまったらしいが···
「ふぅ、ご馳走様」
栄養だけを吸収しているので満腹感は無い。
いくらでも食べようと思えば食べられるが、そうはせずに食事を終えて、店を出る。
今の私にとって食事は味を楽しむ物であり、栄養等の偏り等は二の次である。
『吸う』を上手く使いこなすことで好きな物を好きなだけ吸収しても体に不調をきたすこと無く、より健康的になるのが良い点だろう。
「さてと、ラーメンを食べたし、ダンジョンに行きますか!」
行くダンジョンは決まっている。
おっちゃんのダンジョン【シグナル】だ。
「おっちゃん久しぶり」
「おう、昨日の配信見たぜ。無事に戻ってこれて良かったな。あと子供はおめでとうで良いのか?」
「良いんじゃない?」
「なんで当人が疑問形なんだよ···しっかしコメント大荒れだな。人工ダンジョンに魔法理論、子供ができるマジックアイテムの存在···子供がお腹に宿ってると聞いて発狂したコメントも散見されたな」
「そんなガチ恋勢なんて私の配信にはほぼ居ないでしょ。ガチ恋させる前に失踪してたんだから」
「まぁ掲示板とかで落ち着いた雰囲気だったのはたぶんそれが原因だな」
「おっちゃんも掲示板利用するんだ」
「まー嗜む程度にはな。で、今日は潜るのか?」
「オークに魔法の試し打ちがしたくてね。お腹に子供もいるから無理はしないよ」
「わかった。無理はするなよ」
おっちゃんと別れてダンジョンに潜り始めた。
修行の成果かレベルが上がったからかライトアローでもゴブリンを一撃で倒せる威力になっていた。
胴体か頭部に命中すれば確殺、手足に当たっても出血多量で直ぐに死んでいく。
スライムなんかは横を被っただけで死んでいく。
「初めの頃に比べてだいぶ強くなったな」
威力もそうだが、六基を覚えたことで連射速度···いや同時展開能力が跳ね上がった。
前まではライトアローを一発放つのに約一秒ほどかかっていたが、今ではライトアローを十発同時に放つことができる。
まぁこれは練習を繰り返せば誰でもできるようになることなので、魔法理論を理解していることで修行時間を短縮したと思えば良いか。
「魔法の精度が格段に上がったからな」
攻撃魔法もそうだが、一番精度が上がった恩恵を受けたのはサーチの魔法だ。
今まではなんとなくここらへんにモンスターがいるなー程度だったが、今では自身からの距離、数、相手の魔力量が明確にわかる。
しかも範囲が自身を中心とした半径約一キロメートルもあるのでモンスターや他の探索者がどこに居るか手に取るようにわかる。
「やっぱりボスの反応だけは大きいか」
魔石の大きさもあるだろうが、オークの居る部屋の反応は一つながら所在感が感じられる。
ボス部屋に到達し、中に入ると、オークがこちらに気が付き、のそのそと動き始めた。
「サンレイ」
空中に複数個の魔法陣が出現し、オークに光の束が突き刺さる。
一撃で倒せると思っているが、角度を変えた追撃を二発同時に放つ。
オークは体に大穴を空けられて死んでいた。
「流石本来上級上位以上で覚えられる魔法···利便性が段違いだ」
射速、貫通性能、拡散収束の切り替え、純粋な威力、魔力消費量、どれものバランスがとても良くできた完成された魔法だ。
マーちゃんはこれの最大の特徴は拡張性の高さと言ったが、これで十分に完成されていると思ってしまう。
オークに空けられた三ヶ所の穴を調べ、あれだけ苦戦したオークをこうもあっさり倒せる新たな力に興奮した。
「···もう少し稼ぎの良いダンジョンを探さないと」
その日はゴブリンの素材を十体分とオークの魔石を売却し、家に帰るのだった。
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