自己紹介動画
天使の体を過信し過ぎていた。
勿論前の体よりは強いのだが、それで驕りが生まれて死にかけたのではどうしようもない。
家に帰り、ノートを取り出してガリガリと家計簿をつけながら今後の事をよーく考える。
まずゴブリンやスライムには問題なく勝てる。
ボスのオークとは今の実力では相打ちを覚悟しなければならない。
「強くなるにはダンジョンに潜ってモンスターを倒しまくるのが効率は良いけど···体を鍛えるのも取り入れないとな」
レベルアップが強くなる近道だが、鍛えれば僅かにだが強くは成れる。
特に魔法は使えば使うほど体に馴染んでいく為、より強力な一撃を放てるようになると何処かの本で読んだ気がする。
あとは金を稼いで強い武器を身に着ける。
これだけでだいぶ違ってくる。
「結局のところダンジョンに潜るしか無いって事か···ん?」
ふと横にある簡易測定機が見えたため、一応レベルの確認をしてみると
「二に上がってる」
前の俺はレベルが二に上がるまで約一年かかった。
それがこの体では僅か一日でレベルが上がったのだ。
「···嬉しいけど、油断はできねーな」
頭の輪っかをいじりながら私はそう呟く。
レベルが上がると身体機能の向上や魔法の習得ができるが、今回は身体機能の向上だけみたいだ。
「オークを倒せたのも経験として大きかったのかもしれないけど、当面は雑魚狩りだな···よしっと」
家計簿をつけ終わり、キッチンの方に歩き、冷蔵庫を開ける。
中のマヨネーズを取り出し、棚からツナ缶の調理台の上に置いて蓋を開け、中にマヨネーズを入れ、箸でかき混ぜる。
保温になっていたご飯を丼ぶりに入れ、かき混ぜたツナマヨを上にかける。
インスタントの味噌汁をそばに置いて食事を取る。
「···ひもじいなぁ」
俺は飯をかきこみ、食器を洗ってから布団を敷いてゴロリと横になる。
「···他のダンジョン配信者は派手だなぁ。大型モンスターを仲間と一緒に倒していたり···トラップを鮮やかに解除していたり···それに比べて私は···」
実力も人気もないダンジョン配信者ほど悲惨で惨めな者はない。
「二十中盤なのに何やってるんだか···ナーバスになるな! 天使になったんだろ! 美少女になれたんだろ! 運は上向いているんだ。努力をしろ! そうだろ!」
布団にくるまりながらの決意表明···
ガバっと布団から起き上がり、俺は今までの動画データやSNSのアカウントを全て消して新しく作り直した。
「後藤伊吹はもう居ない。私はイブキ。天使のイブキだ!」
配信サイトのアカウントを新たに作成し、全体写真を撮って、背景等を加工していく。
二時間パソコンを弄り回し、登録ボタンを押した。
【天使のイブキ 登録者〇人】
最初は零だ。
私はここから本当の意味で一から積み上げるんだ!
イブキとしての初の動画は自己紹介だ。
台本を何度も読み直し、カメラを回す。
一通り撮影を終え、テロップを付け終わると確認をする。
「皆さん初めまして。天使のイブキと言います!」
【イブキさんの配信の目的を教えてください】
「配信の目的はダンジョン配信者となって皆に私を知ってもらいたいからです!」
【目標はありますか?】
「狙うは大きく七つ星探索者になることです!」
【七つ星というと日本でも数人しか居ない探索者の最高位ですが】
「はい! なのでまずは星持ちになれるように頑張ります!」
【動画を視てくださった方に一言お願いします】
「これから長い付き合いになると思うけどよろしくお願いします!」
動画はこれで終わる。
動画ではこう言ったが、もう一つ目標がある。
登録者数を百万人を超えることだ。
ダンジョン配信者の登録者数は十万人から上澄みになる。
十万人で動画や配信だけで食っていけるラインだし、企業から案件が舞い込んでくる。
その十倍ともなれば小金持ちになれる。
実力が上がれば人気も上がる。
まずはダンジョンのレベリング配信をしながら接続数十人を目指そう。
探索者の階級だが下級下位、下級中位、下級上位みたいに〇〇級に〇〇位が付く形で、中級、上級と続く。
レベルが十上がる事に一つ上の位に上がり、中級昇進試験、上級昇進試験をそれぞれ合格することで中級下位、上級下位になることができる。
なので中級は三十レベル以上、上級は六十レベル以上が基本となる。
上級の更に上は星持ちと呼ばれ、星一、星二と増えていく。
星持ちの条件は半年間のダンジョンでの実績によって決まる。
モンスターを倒した数の討伐数、レベルの高いモンスターを倒した高位討伐、ダンジョンでの救援要請の成功数の救援成功率、半年間で倒したモンスターの素材の総売却金額でそれぞれ討伐王、大物王、セーブ王、賞金王が発表及びランキング化され、上級上位かつランキングに載った者が星持ちとなる。
星一でも一万人以下であり、数千万人いる日本の探索者の中でも最上位であることがわかる。
一部であるが星持ちをプロ探索者と呼び、その他はアマチュア探索者と呼ばれることもある。
で、ダンジョンは基本下級、中級、上級で分かれている。
まぁ推奨レベルが必ず提示されるが、それを誤ると普通に死ぬから注意が、必要である。
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