アンティクア・ノヴァ~最高のチームで最高の旅を~

きつねのなにか

案件その1。序盤をかいくぐってみよう

第2話(1話目のプロローグは削除) アズキチャンペロペロ、おいちぃ

 


「あ、起きた!」

「えっと、ここは? 私は確か気持ち悪い生物に後頭部にぽこちんを挿入されて……」

「ここは手術室。言語把握インプラントが無事に作動しているみたいね。手術ログが出るのでちょっとまってね」


 私は、1万年続いた拷問から、抜け出せたのかな?


「よかった、後頭部をメスが刺した時すごい量の血液が出たんですけどログのほとんどが良好です」

「お騒がせしました、サブの心臓があるんですよ。ほとんどの箇所なんですか?」

「なにが残ってるんだ?」

 

 頭に違和感は無い。なんだろう。というかなぜこの人たちは親切なんだ? 千載あずきちゃんわからんちんだぞ。


「えーと残っているのはGSP装置ですね。これであなたの位置を割り出して人型の気持ち悪い動物やなにかが集まってくる可能性が高いです」

「なんだそりゃ。そんなにコイツを狙う理由はなんだ?」


 多分博士だろうな。頭の中で整理して喋り出す。


「えっと、私は原始の型なので、アンドロイドでありながら私は子供が産めるんです。私のメイン開発者は博士――実名――だったんですが、だんだんと私をほしがったというか、恋したというか。私との子供を産みたがったのかな。童貞だったっぽいですし。追われた気持ち悪い生物も顔はそのまま博士の顔でした。GPSをつけて私を追い回したいのではないかと。」

「今度こそ孕ませたいために?」

「ええ、今度こそ孕ませたいために」

「きもちわるっ」



 だから私は常に追われているんだ、博士に。博士は不老不死の研究をしていた。博士の頭脳なら完成させただろう。まだ生きてるはずだ。負けただけで許してくれないのか……。


 その夜。寝るためによった村の寝床で。寝苦しいと思っていたらだんだんと声が聞こえてきた。


「……アズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャン」


「み ぃ つ け た ぁ 」


 夢じゃなく本当に、眼前に、でかでかと、浮かび上がる博士の顔。

 横に広くて、頬にニキビが一杯あって、太っていて、全体的にキモいおっさんの顔。生理的嫌悪を催す顔。一切の好意を得られない顔。

 その顔がわたしの顔をベロベロとなめまわす。


「最初の記憶を再生させてもらったよ。一匹侵入したんだねえ美味しかった? どうだった? 絶頂した?」


 舐められ、口の中に舌をねじ込まれ、され放題。でも動けないし夢から覚めない。


「ここは夢とはいえ空間が違うんだ。さあ、子作りに励もうね。今は練習だけど、再会したら毎日毎時毎秒するからね」


 空間が違う。ということは。


「フィーちゃん!!」


 フィーの名前を叫ぶ。


「バウウウウウ!」


 博士の顔が噛みつかれ、遠くへ引き離されていく!

 フィーちゃん! やっぱり!


「なんだこいつは!? 僕が作った空間に介入してくるだと!?」

「フィーちゃん、そのまま捨て去ってちょうだい!」

「グルルルル!」


 フィーは空間を破壊したようだ。

 一気に夢から覚める。農村の寝室だ。

 私達は私を封印していた遺跡から離れて村で休んでいたのだ。

 隣にはここあちゃんが寝ている。そっと頭を撫でる。


 自分の顔を触る。濡れてなかった。夢だった。


 フィーが心配して見に来る。今は小型犬だ。撫でて安心させる。


「フィーちゃん、ありがと。亜空間犬フィーちゃんなら出来ると思ったの」


 助けに来てくれたお礼に、第一アンドロイドおかー研究所所長さんが作った特製バックパックから沢山食べ物をだしてプレゼントした。ありがとう、フィー。



 ――――――――――――



「そうですか、そんなことが」

「ルカさんなら何か出来ないかなって思って」


 私はルカさんに昨日のことを相談していた。

 だって毎回あんなのが起こったら身体休まらないよ。

 場所は特定されているし毎日来るだろう。


「それでは護符とお守りを作りましょう。護符で見えなくし、お守りで侵入を防ぎます」


 ――ルカ。名字はなし。よくわからないおっさんで、身体はガングロ、黒髪黒目で身体鍛えてるなあ、というところ。50代っぽいらしい。よく考えると常に和服を着てる。なんか博識だったりお菓子と珈琲作りがべらぼうに上手かったりと掴めない人。でもヒーラーと状況支配としては最高峰だと思う。

 とはここあちゃんの弁。


「ルカってそんなのも作れるのねえ」

「専門じゃありませんが。街へ着いたら専門家の護符を作って貰いましょう」

「ミカちゃんに恋のお守り作ってくれないかしら」


 中原ミカ。ナイスバディな茶髪で黒目、背の高いおねーさん。ミカミカ、ミカちゃん。

 綺麗でしょ、でもなんかモテないんだよね。現在27歳で婚活アプリをフル活用しているんだけど全戦全敗。アンドロイドになろうかなって嘆いているところ。

 いわゆる残念おばさんってやつ。

 とはやはりここあちゃんの弁。

 ……自己紹介していたときが懐かしいな。


「ミカさんは自力でお願いします」

「えーそんなー無碍なー」

「……あたしにも作って。フィーみたく干渉できる奴。あたしにとって眠るのは娯楽。……寝なくていいから監視できる」


 そして最新最強、自己進化型アンドロイドの鶴岡ここあ。まぁじで最強。身長は140センチメートルと小さいが負けん気が強く、私としょっちゅう喧嘩する。その私との喧嘩はここあが私の土俵に立っていてくれているから成り立っているのだ。ありがてえ話だ。


 ここに亜空間犬フィーも入る。

 これでチーム恩呼知真おんこちしんが構成されている

 チーム「恩呼知真おんこちしん」に入れさせて貰えて良かった。

 私が欲しいからここに来たんだって言ってもらえて良かった。

 私が少しだけ強くなれて良かった。――総合強化インプラントがあったからだけど――


「じゃあ髪の毛を少し。フィーの毛も入れておきましょう。あとあずきさんのバックパックから魔電池を。大きい方が良いですね」

「――はい。あとは魔電池か。大きいなら――単1電池で良いですかね?」

「ええ、何本かあると助かります」


 材料を渡し、時を待つ。なに作っているのかかな。


「よし、これで良いでしょう。簡易的ですが居場所を隠す護符と、夢の侵入を防ぐお守りです。ずっと持ってないと意味がないので、背中とバックパックの間にでも挟んでおくと良いでしょう。ここあにはこれ。まずはわたくしを呼んでほしいのですが、本当に緊急時には使ってください。お守りなどを全てぶち破ります。なので危険です。繰り返しますがまずはわたくしを呼んでください」

「……わかった。肝に銘じとく」


 護符などをぺたぺた。これで良し。

 これが第二の人生の始まりであった

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