2024年5月19日(日)

「コトネちゃんー、ご飯買ってきたよー!」


 看護師さんがコンビニ袋片手に病室に入ってくる。


「…すいません、お腹空いてないので」


 スマホの画面を見たまま答える。

 お医者様が言うには両足の骨折で全治3ヶ月という事だった。

 特に後遺症が残るようなこともなく、高階層から落ちた割には奇跡的なほど軽症らしい。


「御飯食べないと、点滴がいつまでも抜けないよ!」


 そう言うと私の視線の先にサンドイッチやプリンを差し出す。


「…机に置いといてください」

「ん、分かった」


 看護師さんは柔らかい声で返事をして、袋の中身を出していく。


「お友達と学校の先生がずっと廊下で待ってるけど、会わないの?」

「…会いたくないです」


 看護師さんがそっかと小さく呟いた。


「そういえば雲野正和さんは無事よ。特に後遺症が残る事もないって」

「そうですか」


 一瞬、看護師さんが誰の事を言っているか分からなかった。


「うん。じゃあ私は行くけど、何かあったらすぐに呼んでね」

「はい」


 看護師さんが病室を出ていく。


「うぅっ…。うっ…」


 結局その日も円香のラインを1日中見ていた。

 しかし、ラインに既読がつく事は無かった。

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