第3話 第1研究室


 入学式でクラス分けも発表され、生徒達はそれぞれ悲喜こもごものの顔をしている。


 箱根魔法学園はまがくは今のところ日本唯一の魔法使いの為の学校である為、能力に目覚めた子供の比率でいえば少ないのだが、日本中から集められた高等部の生徒数は三千人近くにもなる。


 1学年につき16クラスもあるので新発田しばた あきらは幼なじみでもある水上 真凛みずかみ まりんと同じ1組となったことで内心ではとても喜んでいた。


 1組での最初のホームルームが終わると真凛まりんが話しかけてきた。


あきら君、久しぶりに同じクラスだね♪」


「そうだな。 俺は箱根魔法学園はまがくだと完全にアウェーだから1人でも知ってる人がいて嬉しいよ。 真凛と同じクラスで良かった」


「クラス名簿を見た感じだと、1〜4組に文魔両道の人が集められてるみたいだよ。 明君の魔法もレアケースだから目をかけられてるみたいだね」


「まだ何も成果を出して無いのに、いい方のクラスにってのはちょっとこわいな。海人かいとおじさんの力かな?」


「学園生の生徒達の中では攻撃魔法使いが一番偉いみたいな風潮があるけど、先生含め理事会の人達や国はむしろ無属性の特殊な能力の方が評価が高いみたいだよ。 ほら自然現象の発露なんかは科学でも代用出来るものが多いじゃない? 使えるのは凄いことではあるけれど」


「なるほどなぁ」


「あっ、まだ文代ふみよちゃんも残っているから紹介してあげるね」


 そう言うと真凛は、黒髪を三つ編みにした委員長然とした、めがねの女の子の所に行った。キリッとした雰囲気の美人さんだ。


文代ふみよちゃん紹介するね。 私と同じ小学校に通ってた新発田 明しばた あきら君。  明君、前に話した加藤 文代かとう ふみよさんね」


「「はじめまして。」」


「新発田君ね。 第1研究室に来るつもりなら、明日から早速空いてるから、ここじゃ話せないこともあるし詳しい事は、明日そっちでお話ししましょう。 水上さんも来る?」


「私は委員会の広報の仕事が有るから行けないかな」


「あれ? 真凛も第1研究室に入っていたの? 聞いてないけど」


「あ〜、私は委員会の方が忙しくってほとんど幽霊部員なんだよね。 だから言い忘れてたのかな。 今年からは明君もいるし、出来るだけ研究室の方も行くよ」 


「それじゃあ今日はこのくらいで解散しましょう。またあとでね」


 


 明は2人と別れると、割り当てられた自分の寮[玄武げんぶ寮]へと向かった。


 そして道すがら土田変なやつに絡まれたが事なきを得、玄武寮へと着いた。ちなみに土田イタい奴は明とは別の寮のようだ。


 寮は全員個室であり、特に当番制なども無い。自分の個室の清掃のみが義務となっている。

  

 事前に職員によって部屋へと運ばれていた荷物の簡単な荷解きをした後、新寮生へと向けたオリエンテーションに参加し、寮母さんと寮監(生徒代表。最高学年の男女1人ずつ)から説明をうける。


「寮監の大地 奈央だいち なおです。常識に則った行動さえしてくれれば、寮での生活に特に縛りはありません。 詳しくは入寮のしおりをよく読んでおくように」


「男女は右棟と左棟で完全に分かれていますのでお互いに違う性別の棟には入ってはいけません。 談話室と食堂は中央棟にあり男女共用です。 これは他の3寮も含めて同じルールなので、多寮に遊びに行った際も絶対に守るように。 破った場合は重い処分がくだされます」 


 明は寮のオリエンテーションが終わると、早速食堂でご馳走をがっついた。今日は入学記念でいつもより豪華らしい。前情報通り、かなり美味い。


 知らなかった事だが1組、5組、9組、13組はクラス単位で全員玄武寮らしい。クラスも寮も一緒なら出来るだけ仲良くしよう。


 美味しいものを食べながらだと会話もはずむものらしい。新入りの明だが食事が終わる頃には、同じクラスの生徒とだいぶ打ち解ける事ができた。




 新学期2日目


 今日から授業が始まる。

 一般教科プラス魔法科の授業である。

 

 魔法科の座学は常識的な事ばかりであった。


 魔法を用いて他人を傷付けた場合は、一般人が刃物を用いて行った傷害罪に匹敵する事、魔法使いは箱根魔法学園はまがくの高等部の卒業が義務(親の、ではなく本人の)である事等である。


 放課後となり、いよいよ第1研究室で研究を開始する事となった。

 

「顧問の円山 勝利まるやま かつとしだ。

 君達の魔法研究のサポートとして主に演算処理を補助している。 後は数学の担任もやっている。 よろしくな」 


新発田 明しばた あきらです。『魔法開発』魔法が1月からの使えるようになりました。 よろしくお願いします」


「あらためまして、加藤 文代かとう ふみよよ、私は付与魔法が使えるわ。『魔法開発』だなんて凄いじゃない! 夢が広がるわね!」


「加藤さんも付与魔法なんて凄く良い魔法じゃないか、真凛が言っていたようにこれは協力しがいがあるな」


「新発田はもう自分の魔法の発動の仕方や、使用は自由に出来るのか?」


「いえ、発動の仕方や、概念がいねん的な事はわかるのですが、BOX庁でおどかされまして練習はあまりやってないので、自由にとはいきません」


「具体的に『魔法開発』魔法とは何なのだ?」


「今のところわかっている事だけなのですが、既知きち、未知に関わらずに、あらゆる極小の『魔法の種』を組み合わせたり、育てて大きくしたりする事が可能なようです」


「あら、凄いじゃない! それを私の魔法と組み合わせれば、専門の魔法使いじゃなくとも魔法の現象が再現できる可能性があるわね! 楽しみだわ!」


「それでですね、事前に考えてきたロードマップをみていただいて一緒に研究できたらと思うのですが・・・」


「速くそれを見せて!」

「速くそれを見せなさい!」


 ①鑑定魔法の開発

 特記事項○○○

 ・・・

 

 ②・・・

 特記事項○○○

 

 

 


 

 


 

 

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