箱庭の中の住人たち

佐倉明人

箱庭

 箱の中は庭。そこで暮らす住人たち。彼らの世界は、箱の中で完結している。行き着く果ては、壁の世界。なんだか不思議な壁の世界。

 時々、天変地異が起こる。

 天地が、ひっくり返っては、また元の位置に戻るのだ。そのたび、住人たちは皆、毎度、宙を舞う、はめになる。毎度、それは突如に起こる。

 なぜ、天地がひっくり返るのか。住人たちには分からない。なぜ、この現象が起こるのか、住人たちには分からない。

 そして、知るすべすらなかった。なぜなら、住人たちは皆、外側の世界を知らないからだ。

 ある時、住人たちは考えた。外の世界へ出てみよう。度重なる天変地異は、住人たちには、酷だった。しかし、不思議なことに、誰の死者も出ることはない。毎度、なんとか助かっている。

 どうやらこの世界ではギリギリ死ねないらしいのか。


 くるりと回転してみては、また元の位置に戻る不思議な世界。時折り、激しく揺さぶられては、また、元に戻る不思議な世界。

 粉雪が、キラキラ舞う。


 ある日のこと。住人たちは皆、逃げ出した。激しい爆音とともに、急に壁が壊れたのだ。激しく水が外に出る。

 住人たちは、今、初めて外の世界を垣間見た。

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