流行!!箱風邪

悪本不真面目(アクモトフマジメ)

第1話

「ボックス、ボックス。」

「ああ、この咳の症状は恐らく箱風邪ですね。」

医者は大きなあくびをした。医者の仕事は大変なので寝不足とかになってしまうんだろうが、目を瞑るにしても私はこの医者は失礼だと思う。なんか目つきがいやらしいような気がする。

「それではもう少し詳しく視るので、さっき私があくびしたくらいに大きく口を開けてください。」

まるで医者があくびをしたのは意図があってやりましたよと言っているみたいで、この医者をどうも信用したくない。しかし、箱風邪を親に頼ったところなので、医者を頼るしかない、今私は喉がいたい、熱もあるっぽいし、とにかくしんどい。私は口を大きく開けた。すると医者は私に口を開けさせたまま、ポッケからスマホを取り出してカメラでパシャと口の中を撮りやがった。

「ああ、これは箱風邪ですね。」

だからそうだと言っている。口の中を写真で撮るなんて失礼じゃないだろうか。医者の職権乱用でしょう。

「こちらを見てください、すごいでしょ、最新のスマホはこんなにもくっきり見えるんですよ。」

CMですか?そんなのはいいんだ、早く治療をしなさいな。

「ああそうですか、ボックス、ボックス。」

咳が止まらない。せめてゴホゴホとかゲホゲホとか従来の咳になってもらいたい。医者はスマホの写真を指でズームにした。その様子は極めてセクハラといっても良いほど不愉快だった。

「こちらを見てください、ほら喉です。この形何に見えますか?」

「え、えーと箱ですか?」

「そうです、立方体です。」

じゃあ立方体風邪という名前にしろ。そしてリッポウタイ、リッポウタイという咳に変えさせてくれ。しかし、自分の喉がこのように箱型になるなんて、恐ろしい。

「じゃあついでにお腹の様子でも診ますか?」

「いえ、それはいいです。」

さすがに、これ以上は嫌だった。とにかくどうやって治療するか早く教えてほしかった。全く、この医者を箱に入れてどこか遠いところに送り届けたいわ。

「そうですか、じゃあ本日は以上になります。」

「あの~、どうやってボックス、ボックス、治療するんですか?」

「ああ、治療したいんですか?」

「ええそれはそうですよ。」

なんで治療をしたくないと思ったのか謎だった。お腹を見せない人には治療なんかさせてあげないとスネているのだろうか。

「じゃあお腹診ます!」

医者は手を上げて宣誓した。拒否をしたら治療が出来ないっぽいので、ここは我慢して診てもらうことにしよう。

「じゃあお願いします。」

私はお腹をめくった、するとへその形が箱型になっていた。恥ずかしかった。医者は私の出ベソもとい出箱を見ないで、またスマホを取り出して、写真を撮りやがった。

「このスマホ最新で、なんとレントゲン機能まで付いてるんですよ。」

「あ、そうですか・・・・・・。」

え、普通に凄い。でも日常的に使うことがない。 

「胃の中に箱が溜まってますね。」

「箱が溜まってるんですか!?」

驚いた。箱風邪は私の中に箱を生成しているようだ。 あ、今度は鼻がムズムズする。喉の次は鼻までもか。

「ハ、ハ、ハッコション。」

いやいや、これは無理があるでしょ。ハッコションって、じゃあハッコション大魔王になるのかよ。でもそんなことより驚くことになってた。なんとクシャミをしたら箱が出てきた。

「箱が出てきましたね、これはショートサイズですかね。グランデサイズだともっと大きいですから、まだ初期段階ですね。」

なんで箱のサイズを某カフェチェーン店風な言い方なのかは置いといて、箱が出てキた。黒い色をしているが、汚くは見えない。ちょうど友達のお土産でもらったスノードームぐらいの大きさだった。そうだ、あのスノードーム飾る気がないからこの箱に入れればいいわ。けれど、この箱を開けるのは怖かった。

「良かったら開けましょうか?」

気をきかせたつもりだろうが、自分の体内から出た箱を他人に開けられたくはなかったので断って自分で開けることにした。目を瞑り、ゆっくり開けていく、そしてゆっくり目を開けて中身を見た。

「え!?小さい私!?」

なんと、眠っている小さい私がいた。私の中にある箱なのだから、あり得なくはないのかもしれない。というかこれが現実だ。不思議な感覚だ。

「眠ってますね。」

医者はなれなれしく私の体内から出た箱の中の小さい私の寝顔を見てそう言った。まるでこの小さい私があなたと私の子供とでも言いたいようだった。小さい私を見ていると、小さい私が起きだした。

「おはようございます。」

私に似ず妙に丁寧でおりこうさんみたいで、可愛い。小さい私は誕生した喜びかクルリと回りだした。

「わーい!」

可愛い。

「わーい!」

可愛い

「わーい、ムズムズ。」

「え!?」

「ハ、ハ、ハッコシュン。」

小さい私から小さい箱が出てきた。

そして医者は何やら注射を打ちだした。すると医者は急にクシャミをしだす。

「ハ、ハ、ハッコショーン。」

ショートサイズの箱が出てきた。中から小さい医者が現れた。小さい医者は小さい私にこう言った。

「これは箱風邪ですね。」

そして小さい私から出てきた箱から・・・・・・。

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流行!!箱風邪 悪本不真面目(アクモトフマジメ) @saikindou0615

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