グロテスク・クロニクル

MutagenicityReactor

小学

何かと嫌われがちであったが、印象に残っているのは何もしていないのにスカートを引っ掴んだ変態として、教室の隅に追いやられていた小学二年生の夏だ。これでもかと熱血教師に怒られ、同級生と折り合いが付かず、親には怒鳴られ、途方に暮れていた。途方に暮れていたが、己の闇を放出する手段に事欠いていた自分は“蠱毒”をつくった。下水に湧いていたミズムシ、干乾びた庭のアロエ、ありったけのアブラゼミ、教師の育てていたレモングラス、路地裏のネズミ。これらに自己の内部に巣食うあらゆる呪詛を込め、かつて天然水の入っていたペットボトルに詰めた。鈍すぎる緑色に染まったペットボトルのキャップは、発酵し変形していた。通行人に振り掛けて怒られ、掃除の婆さんに片付けられ、二代目、三代目と蠱毒は形、もとい微妙に色を変えながら世代交代していった。今では現物は作っていないが、自らのド腐れマニア具合を振り返ると、原点はここだったかもしれない。

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