夢水さんの黒歴史
夢水 四季
ブラック企業
私は貴重な新卒カードをドラッグストアの社員になることに使った。
眠気との戦いの座学研修が終わると、実店舗にいきなり配属となった。
場所は自宅から車で約一時間半の僻地の店舗。
複雑なレジ業務、社員教育、薬の販売者の資格である登録販売者試験の勉強、新店応援、リニューアル応援など、日々あくせくと働いた。
うちの会社は新陳代謝が早く、上司がコロコロ変わった。
二人目の課長は、とても熱心に指導をしてくれた。
仕事の指示も的確だったし、登録販売者の資格が取れるよう勉強の声かけも熱心だった。
朝5時まで勉強して、眠気眼で朝7時に家を出たこともあった。
課長の声かけと私自身の頑張りのお陰で、一年目に登録販売者の資格に合格できた。
一年目、二年目は多少の残業もやりながらも、概ね普通に過ぎていった。
しかし、二年目の後半から私は焦りを覚えるようになる。
昇進できないのだ。
平社員の一つ上はチーフと呼ばれる。
私は三年目にはチーフになれると、勝手に思っていたが、そんなことはなかった。
何故こんなに頑張っているのに昇進できないのか、私の焦りはピークに達していた。
ついに上司に直談判し、それが効いたのか分からないが、私はチーフに昇格した。
チーフになり部下もでき、責任感に溢れた私は新店のチーフを任されるようになる。
終わらない品出し、終わらない棚替え、日々の業務、この頃から私は帰りが午前0時を過ぎるようになっていた。ちなみに終業時刻は9時である。タイムカードを押した後も働いた。
そして、やってくるダメ上司。
その上司の元でやっていくのは休日出勤をするしかなかった。
自分も、その上司のようにテキトーにやっていっても良かったが、私の責任感が、それを許さなかった。休日に来て上司がやらなかった分の棚替えをしたり、次の日の自分が楽になるように前倒し作業をやっていた。
こんなのが店長をやっているなら自分でもできる。
私は、そう思うようになっていった。
その頃、一年目に熱心に指導してくれた課長が私の頑張りを認め、店長に推薦してくれた。
晴れて、私も店長だ!
しかし、ドラッグストアの店長はブラックだった。
重点販売品のノルマ、部下教育、シフト作成、上司からの指摘の直し、その他諸々。
重点販売品のノルマに届かなければ自分で買い、そのストレスで辛かった。
部下はやる気なし、仕事もできないので、私が尻拭いをするしかなかった。
ただパート、アルバイトの皆さんが優秀だったのが救いだった。
4年目の春、ダメな部下と優秀な部下が交換され、新卒ガチャにも勝利した私は順風満帆に仕事をこなしていった。残業は続いていたが、可愛いものだった。
その生活に暗雲が立ち込めてきたのは、私に新店店長の辞令が下りた時だった。
本当に一から店を作っていく、パート、アルバイトさんは皆新人で何かと世話を焼いた。
ここも部下が優秀だったのは救いだった。
しかし、上からの人時縮小。
人が少なくて回らず、私は上とよく口論をするようになっていた。
あの時の主張が間違っていたとは今も思わない。
残業量は増えていった。
あの頃の私は、どうかしていた。
長く働くことを何よりの美徳とし、サービス残業をしまくっていた。
休日出勤、有給出勤など酷いものだった。
そして私は上からの理不尽さ、日々の業務の疲れから退職をした。
あの頃の生活を黒歴史と一括してしまえば、それまでだが、あの生活があったからこそ今があると言える。登録販売者の資格も取れたことだし、またいつかドラッグ業界に戻ることもあるかもしれない。その時は社員ではなくパートとしてだが。
皆さんの想像する黒歴史とは毛色が違うと思うが、あのブラックな日々を、ここで吐き出せて良かったと思っている。
夢水さんの黒歴史 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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