(二)-5

 男は拳銃を手にしたまま「俺は……」と慟哭している。

「お前の奥さん、下野警部は我々にとっても優秀な上司だった。残念だ」

 市波は親指で後部座席を示して乗るように促すが、男は左手を見せて断った。そして歩き始める。

「おい、どこへ」

「自分でケリをつけてきます」

「おい、待て!」

 下野警部補は走ってコンテナの谷間にできた通路の先に消えていった。

「クソっ! アイツ、先走りやがって。六条、あとつけさせろ」

 助手席の六条は慌ててスマートフォンを取り出して電話する。

「私たちはどうするのかね、市波刑事」

 後部座席の公安の男が尋ねる。

「予定通り、秋葉原へ行きます。車はまだしばらく借りますよ、佐藤さん」

 そういうと、市波は車を急発進させた。


(続く)

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