村人もフルエレも出撃 .
「イェラ、一隊を率いて南林の伏兵に気付かれぬ様に潜め、伏兵を討つ伏兵って訳だ! お前にしか出来ん芸当だ!」
「有難い。必ず成功させよう」
長身の美女はイェラという名前の様だ。彼女は言葉少ないが、
「野郎ども
魔法瓶とは魔法力で爆発する手りゅう弾である……
「大将ーーー!!」
「うおーやってやるぜっ」
ガンガン
バシバシバシバシ!
屈強な男達は謎の雄たけびを発しながら、先程など比べ様も無い程武器をガンガン打ち鳴らす。
(ちょ、ちょっと怖い……ここにはカッコいい騎士的な人はいないのね……)
出撃直前の最高潮に達した興奮に雪乃フルエレは圧倒されるだけだった。
ガコッ
無数の鋭い木のトゲトゲが突き出る大きな正門が開け放たれる。
「よっしゃ、リュフミュラン義勇軍出陣!!!」
そう衣図が叫ぶと、開けられた門から馬出しに男どもが一斉に飛び出し整列し、ひと塊となって戦場のただ中に出撃して行く。その他の門からも殆どの男共が各橋を渡り堀の外側に出た途端に衣図ライグが叫んだ。
「各自魔法防御展開、守備力向上詠唱……突撃ぃーーー!!」
砂埃を巻き上げドドドドドドと地響きを立てて、衣図ライグの巨馬を先頭に多数の騎兵を含んだ軍勢が突撃して行く。
(うわわ、うわ、始まっちゃった!)
屈強な男達の迫力に何も言えず見ていたフルエレだったが、そこに最後にヨボヨボのお爺さん達までもが続こうとして驚いてコケた。
「わ、わしらも遅れず行くぞ~」
「入れ歯を落とすな~~」
「うひょー」
(え!?)
「あ、あの人達も、行っちゃうんですか!?」
フルエレは腕を組み割と平然と砦に残るリズに慌てて聞いた。
「病気や飢饉で死ぬのも、戦争で死ぬのもその人の自由なのよ」
優しさなのか投げやりなのか無関心なのか、よく分からない事を無表情で言うリズ。
「放っておけない、私も行く!」
早く
「ちょちょ、ちょい待ちなさいっ」
ガシッ!
リズが慌ててサイドカーのハンドルを掴む。
「私は死にたくないから行けないけど、これを貸して上げるわ!」
手首に付けていた金属のリングをフルエレに渡し、そしてそれを手首に付けろというジェスチャーを繰り返した。
クイクイッ
「貴方魔力はあるのよね? 魔力に応じて魔法と物理両用の防御魔法陣が出るリングよ、これを付けて! 爺さん共より何より自分自身を守るのよ分かった?!」
結構サバサバしたいい加減な人かと思っていたが、その目は真剣でフルエレの身を真剣に案じてくれてはいるようだ。
「有難うございます……気を付けて行ってきます」
「気を付けなさい!」
雪乃フルエレは一瞬振り返ると、構わず魔輪で戦場に疾走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます