あなたは砂緒(すなお)a .
「う、うう」
背中から木の幹に打ち付けられでんぐり返しの恥ずかしいポーズで頭から着地し、気を失っている二番目の子分格の男が不意に苦し気にうめき声を上げる。どうやら一命は取り留めた様だ。
「まだ動いていますね、潰しておきましょう」
地面に散らばる割れた瓶などを見ながら過去を思い出して少年が、やおらすくっと立ち上がるとまた素肌がみるみる大理石の乳白色に変化して行き、ずんずんと倒れ込む男に向かって行く。そのまま事も無げに片足を引き上げ頭を踏み潰しにかかる。
「ダメっ! 酷い事しないで」
突然少女が叫び、少年は片足を持ち上げたストレッチ運動のポーズの様な状態のままぴたっと静止する。そしてそのまま振り返り、叫ぶ少女を見て怪訝な顔で聞く。
「何故?」
「何故って可哀そうだよ!」
「今さっき損害を与えられた相手ですよね」
「その人達もう充分に罰は受けたわ、それ以上はやり過ぎよ助けてあげて」
少女は見ないようにしていた、額に少年が投擲した柄頭が突き刺さり動かなくなったリーダー格の大男を一瞬だけちらっと見る。
「それに貴方はきっと良いゴーレムさんね、せっかく荒んだ過去を忘れ良い人間になろうとしているのにもう出来るだけ悪い事はして欲しく無いの」
少女の頭の中で既に謎設定が完成している事に驚いたが、いちいち突っ込まない。
(荒んだ過去を忘れ良いニンゲンになろうとしている?)
「なる程。しかしまた動き出せば軽く制止しますよ」
少年は商品の所有者の少女がそう言うならば、殊更自分が制裁を加える必要はもう無いなとあっさりこれ以上の暴力を止めた。すると再びみるみる乳白色が消え肌色が回復して行く。
少女は少年を最初恐ろしい化け物の様に考えていたが、余りにもあっさり引き下がるので割と話が通じる相手だと感じて少し恐怖が和らいでいく。
「しかし……この者が復活すればまたややこしくなるでしょうし、逃げた者が仲間を呼んでこないとも限りません。すぐに移動した方が良いでしょうね」
「え、う、うんそうだね」
「それなら
「わ、わたしこそ一緒に来てくれると凄く安心する。お礼もしなくっちゃ」
少女は最初一瞬だけ少し迷いの色を見せたが、しかしすぐに明るい表情を取り戻して快諾した。
「わたしは行商人見習いのフルエレ、
「フルエレ……雪乃フルエレ? なんだか上品なお婆さんの様な、とても良い名前だ」
上機嫌になった所にいきなりお婆さんの様だと言われ、一瞬ムッとするがこの先を考え何も言わないフルエレ。
(ちょっと感覚がヘンな子……)
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