出会い スターマインa .
―少し前、現代日本。
今夜はガラス窓の外側の遠く向こうが騒がしい気がする。浅い眠りの中で道路がある方向から感じる振動や、人々のざわつく気配に多少の嫌気が差してきた。でもだからと言って煩わしくて何が起きているのかをわざわざ調べる気もしない。ただ繰り返されるいつもの夜の様に深く眠る為、再び心のスイッチをオフにしようと努めて眼を閉じた。
ーその外側の道路。
まだ肌寒い季節に深夜の日本海側某県の幹線道路では、赤く点滅する誘導棒を持った警備員が一定間隔ごとに立ち並び、その道路に誰も入らない様に警戒していた。そしてやがてその道路を、大きなタイヤが何輪もある巨大なトレーラーが、荷台に何トンもある様な大型ロケットを搭載し、人がゆっくり歩く様な速度で進んでいく。
どこで情報を得ているのか、所々こういう物が好きな人々が長いレンズの付いた黒く大きなカメラを両手に構え、神妙な面持ちで深夜の暗闇にバチバチとフラッシュを焚き撮影していた。
「この辺りは市街をかすめる、常時周囲に気を抜くなよ」
「そうスね」
自衛隊から昇格した陸上自衛軍の制服を着た上官ぽい中年男が若手部下っぽい運転手に注意を促すが、若い運転手は歩く様な速度で進む大型トレーラーに何の恐怖も警戒心も抱いていないのか、上官の言葉もうわの空で適当に返事をしている。
キラッ!
「え、今の何?」
「何だ?」
2人が同時に何か言ったがそれは二人同時にハンドルや計器周辺に、小さな星の瞬きの様な物がチカチカ流れながら光ったのを見たからだった。実際にハンドルを握っている若い部下は、優雅な流れる光の曲線すら何本も見えて幻覚かと目をぱちぱちとしてみた。だが異変はその直後に起こった。
「ややばいです、急にハンドルもブレーキも効かない! アクセルも踏んでないのにぐんぐんスピードアップしてるっス」
若い運転手が先程とはうって変わり、切羽詰まった表情で悲鳴の様な声を上げる。
「サイドブレーキを引け!」
「動きません!!」
こわばる表情の二人を無視する様に、大型トレーラーは下り坂でも無いのにさらにどんどんスピードを上げる。当然道路横で誘導棒を振っていた警備員達も騒ぎになり始め、無線で本部に連絡する者、なんとか走って追いかける者など、現場は混乱の極みになっていた。
「あぁ曲がり切れない、ヤバイもうルート外れそうです!」
若い運転手が効かないブレーキを突き破る勢いで強く踏み締め、ハンドルをぐりぐり動かしまくるが、無情にも当初曲がる予定だった交差点を突破し、バシバシと赤いコーンを何個も弾き飛ばしながら幹線道路から予定外の市街の一般道路に出てしまった。
このままでは市街中心部に入り込んでしまうだろう。もし市街中心部で衝突や爆発事故でも起こせば目を覆うような大惨事になりかねず、二人は顔面蒼白となった。
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