第3話 気づき

 ある日海は体重計に乗った。最近腹が膨らんできて、だらしなく感じることが増えたからである。するとやはり体重が一キロほど増加している。

 海は少しショックを受けて、夕食の際二人に話した。


 ちなみにこの日の夕食は朔担当で、海の出産後から二人が交代で掃除や洗濯などの家事をしてくれている。調子が良い時は二人の手伝いをしたり、テレビを見たりするなど、この時点の海の心の調子は落ち着きつつあった。


『本当か!?』

 二人は海の方を弾けるように見てそう叫んだ。

 なかなか大きな声で話さない冷静な二人の大声に海は驚いた。

「いや、本当だけど。どうしたの?そんな驚くことじゃないでしょう?」

「いや、うん、そうだな。驚くようなことじゃないよな。ほら、産後海の体重が減ってるような気がしていて心配だったから。」

 朔は必死に誤魔化した。


「でも心配だから一度病院に言った方がいいんじゃないか?一キロって大きいぞ。今週末精神科の予約もあることだし、三人で病院に行こう。」

 修斗は何かと二人に流されやすい海をうまく丸め込み、見事病院に連れていく約束を取り付けた。


 海は大きな違和感を感じ取っていた。二人の大きな声、いつもとは違う饒舌さと落ち着きのなさ。それに病院に行くことをかなり強引に勧められてしまった。海は馬鹿ではなかったし、空気の読めるタイプだった。


「何かがおかしい。」

 海はボソッとつぶやいて靴を履いた。昨日の夜、二人に感じた違和感。それを払拭するために3人で向かうより先に1人で病院へ向かうことに決めた。平日で、家には海以外誰もいなかった。2人には内緒の、秘密のおでかけだった。


何もないならそれでいい、何もないに違いない、違いないんだけれど。

 海の心は不安でいっぱいだった。


 一方朔と修斗のスマートフォンには一件の通知が来ていた。

「玄関のドアが開けられました。」

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