百葉箱の暴走
pyてょん
百葉箱の暴走
その箱は、100年ほど前に作られた。
202x年、東京都のとある小学校にそれはあった。
その箱の起源はおよそ1000年前に遡る。
当時、人々の信仰を集めた神木がこの地にはあった。
しかし、落雷によりその神木は大きく損傷し、命を終えようとしていた。
辛うじて損傷なく残ったものは100枚の葉だけだったとされる。
そこで、当時の人々は残った100枚の葉を後世に残そうとし、箱を作った。
その箱の名を百葉箱といった。
箱は100個作られ、そのそれぞれに葉が一枚ずつ入れられた。
葉には魔除けの効果があると信じられたため、現在ではその周辺に学校などの教育機関が設置されることが多くなっている。
百葉箱は周囲の気温、湿度、天候に応じて多様にその箱の文様を美しく変化させ、見る人々を楽しませていた。
季節ごとに百葉箱を見る「箱見」なる行事も開催され、その小学校では恒例の行事となっていた。
しかし、その百葉箱も1000年の時が経ち魔除けの効果が逆転し、しだいに周囲に悪影響を及ぼすようになった。
ここ数年のことである。
そして先日、その影響がこれまでとは比較にならないほど拡大することとなった。
箱を中心として周囲の気温が20度ほども上昇したのである。
その時点で、この地域の観測史上最高気温を記録した。
周辺の花壇の花は全て萎れ、ビオトープの水は干上がった。
空を覆っていた雲も箱の上空の円状の部分だけ消えてなくなった。
箱に近づこうにもあまりの暑さに近寄れず、防護服を着用したなら今度は蜃気楼が邪魔をする。
それならばと自動車で接近が試みられたが、箱から数10メートル地点で突然発火し、残骸を残した。
この異常事態に対し、1000前の神木の管理者の子孫は一つの言い伝えを口にした。
「百葉箱が暴走した時、暴走をおさめるための箱がある」
この1000年間、それは厳重に保管され続けてきた。
その箱の名は、零葉箱。
焼け残った神木の幹で作られた箱である。
かくして、暴走した百葉箱との長きに渡る戦いが始まった。
百葉箱の暴走 pyてょん @nononomura
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