狐娘の華やかな南国旅行
第22話 騒ぐのもほどほどに
「ついに来たぞ!ポポロス!」
アカネは興奮して跳ね回り、海の方を指差した。
「見て見て!マヨイちゃん!海がキラキラしてて、とっても綺麗だよ!」
「落ち着いてください、勇崎さん。」
海風に吹かれながら、私は頭の上の麦わら帽子を抑え、アカネと一緒にきらめく海を眺めた。
「確かに、とても美しいですね。夢のような景色です。」
<コメント>
『> 10,000 君こそが夢のような景色だ!』
『> 10,000 白いワンピースに麦わら帽子!黒いロングストレート!神!』
『> 10,000 マヨイちゃんのこの姿を見たら、俺はもう死んでもいい。』
『よくやった、さすが古賀家のお嬢様、服選びのセンスが抜群だね!』
『マヨイちゃんの笑顔がまぶしい。心が浄化された気分だ。』
『>5,000G あなたの笑顔に乾杯!』
『>5,000G アカネもとっても可愛いよ!』
「みんなの褒め言葉、ありがとう!それでは今日は早速活動を始めよう!まずは最も伝統的なスイカ割りから!」
アカネは木の棒を高く振り上げ、砂浜を指差した。
「そして今日のスイカ役は、レンお兄様だよ!」
「やあ、リスナーの皆さん。レンです。」
砂浜に埋もれて頭だけが出ているイケメンが、アカネの紹介に笑顔で応えた。
<コメント>
『なに!』
『レン!?』
『なぜそこにいるんだよ!』
『おおおお、あの下から上を覗ける位置に埋まっていたとは!羨ましい!』
『許せん、アカネの実の兄としてそれはどうかと思うぞ!』
『マヨイちゃんから離れろ!』
『俺のマヨイちゃんに近づくなあああああ!』
「レンお兄様、それはダメですよ!女の子を尾行するなんて変態だと思われます!」
「アカネ、さっきも言ったけど、僕も修行のためにチームと一緒に来たんだ。」
「そんな女の子を尾行する変態お兄様には、妹としてしっかりと矯正してあげないと!」
「聞いてないか。」
アカネは木の棒を持ち、上段の構えを取り、体からは赤い光が巻き起こった。
<コメント>
『さあ、アカネ!あの野郎な顔をぶちのめしてやれ!』
『いきなり超技だ!これなら行ける!』
『レンは全身を砂に埋められて抵抗できない!この一撃にかかってる!』
『もし本当に修行のために来たのなら、リリアちゃんもいるってこと?』
『おお!そうなれば他の女の子の水着姿が見れるぞ!』
『誰もレンの安全を心配していないw』
「超技!勇者の一撃!」
アカネは雷のように攻撃を振り下ろし、爆発的な力で砂を舞い上がらせた。砂が収まると、レンはわずかに頭をかわして棒の攻撃を避けていた。
「むっ!お兄様、ずるい!避けたなんて!」
「いやいやいやいや、誰でも避けたくなるでしょうよ。」
「なら、もう一度!」
「あの、愛しい妹よ?まさか当たるまで振り続けるつもり?」
「冗談はこれくらいにしてください、勇崎さん。これ以上騒ぎ続けると周りの人に迷惑ですから。」
アカネが再び棒を振り上げようとする手を私は抑えた。彼女は頬を膨らませた。
「うーむ…マヨイちゃんがそう言うなら。」
「レンさんもです。勇崎さんとこんな風に遊んでいただくのはやめてください。」
「はははは、つい。ごめんね。」
「それで、わざわざ修行を中断して私たちを探しにきたのは何かご用事が?」
「ああ。」
レンは砂の穴から飛び出し、体の砂を払った。
「こちらに来たのは、二人に警告をしたいと思って。このリゾート地はは最近それほど平和じゃない。」
王子のエメラルドのような瞳が私たちを見つめる。
「幽霊が出没しているという噂がある。」
「幽霊?」
私が疑問を投げかけるとレンは頷いた。
「近隣の住人から関連する目撃情報があるんだ。財物や器物の損失はないけど、このエリアはもともとアンデッドが出る場所ではない。何か異変が起きているのではないかと思われる。二人がダンジョンに入るときは特に気をつけてくれ。」
「なるほど。だからレンさんがわざわざ私たちに警告しに来てくれたんですね。」
「そういうこと。」
「もう!レンお兄様は心配しすぎ!私たち二人の実力なら、幽霊くらい問題ないわ!」
得意げに胸を張り、笑顔を見せるアカネに、レンは微笑んで答えた。
「そう思うよ、ただの注意喚起さ。それでは、邪魔をしませんので。」
「はい!お兄様も楽しんで!」
「ああ。この辺で失礼するよ、仲間たちが待ってるから。」
レンが手を振りながら遠ざかる背中を見つめながら、私は考え込む。
「幽霊か。今回の旅は平穏では済まなそうだ。」
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