狐娘に転生したら聖剣を護る一族でした。金のために勇者と共にダンジョン配信を行う。
浜彦
狐娘ダンジョン配信者の産声
第1話 朝の仕事は鬼退治です
「その狐耳と黒髪、お前は噂の門番か?」
この世界に転生してから既に十年以上が経った。好きでなくとも、多くのことに慣れてしまった。
しかし、殺気というものだけは、どれだけ経験しても耐え難いものがある。
「はあ。」
ほうきで落ち葉を一箇所に集める作業を止め、大きくため息をついた。
鳥居をくぐり、階段を上がって来たのは、悪意を漂わせる「鬼」だった。
頭に生えた大きな角、錆びた鎧、ボロボロのマント、血の付いた金棒を手に持っている。
遠くから見ても、良からぬものだと感じた。
特に知性を持っているように見えることが、さらに厄介だ。
私のため息を肯定と取ったのか、鬼は目を動かして周囲を観察した。
「しかし、不思議だな。この霧は。ここに来てから、部下との連絡が途絶えた。」
「まあ、そういう結界だからね。」
「なるほど。つまりワレは既にお前の術の中にいるわけか。面白い。」
「厳密には私の術じゃなくて、ババ様の術だが……まあ、そういうことだ。どう?そのまま引き返せば、見なかったことにする。」
「はっ。」
鬼は獰猛な笑顔を見せ、金棒を肩に担ぎ、突進の準備をした。
「お前一人くらい、ワレ一人で十分だ。」
「はあ。後悔するぞ。」
「安心しろ。あまり苦しませない。」
「話が噛み合わないな……だから鬼は嫌いだ。」
再びため息をつき、ほうきを置いて、目の前の鬼と向き合う。
その間、鬼は静かに待っていた。
我々の間に沈黙が広がった。
山の朝特有の冷たい空気が、風と霧と共に私の体を撫でた。
先に動いたのは鬼だった。
足元の石畳を踏み砕き、鬼の巨体が突進してきた。高く持ち上げた金棒が私の頭を目掛けて振り下ろされる。
死を意味する質量が一瞬で迫った。
まあ、甘い。
私は軽く一歩滑り出し、金棒の攻撃範囲を前に出て逃れ、同時に鬼の胸元に飛び込んだ。
鬼が一瞬驚きで目を見開いたのを無視して、私は力の流れに沿って、相手の肘に手のひらを軽く置いた。
パチン。
鬼の両手が関節の逆方向にねじれた。鬼が反応する前に、私の手刀が相手の喉を切り裂いた。指先には確かに気管が断裂する感触があった。鬼の目には驚愕と困惑が浮かんだ。
「だから言っただろう。後悔すると。」
金棒が地面に落ちる音が鳴ったと同時に、私は肘打ちで鬼を階段から飛ばした。
霧の中で相手の姿が消えるのを冷ややかに見守り、私は再びほうきを手に取り、金棒を蹴って階段から下へと落とした。
「はあ。これはどうすればいいんだろう。」
踏み砕かれた石畳を見て、私は再び大きくため息をついた。
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