第16話
宿屋に帰宅し、夜が明けるを待つ。
スミレちゃんは今頃、ヴォルス君達と一緒に過ごしているだろう・・・それは良い。
──それよりも問題は此方にあるだろう。
「・・・あの、なんで一緒の宿屋にいるの、レオ君?」
「宿無しだから仕方ないだろっと」
「いやいや。私が言えた事じゃないけれども・・・君、すごく目立つからね?
別の部屋にしようとかなかったの?」
「元々、あんたの事を迎えに来る事だけが俺の仕事だったからな。追加業務に関しては仕方がないぞっと」
「いや、それだけなら私も何も言わないよ──けれども、いま、やっているこれは本当に必要な事なの?」
私はレオ君がノートパソコンでハッキングする宿屋の亭主のアーティファクトを見ながら、手慣れた手つきで業務を遂行する彼に質問する。
その手足は抵抗出来ぬように分解されている。
「朝までに直せば、問題ないだろ。それよりも、前に自分の身の回りの事を心配したらどうだぞっと」
「うん。君の言う通りにナビを飛ばしたけれど、確かに周囲を監視されているね?」
「一口にアーティファクトの技師と言っても色々いる。この街を牛耳っているバカは制作技術者としては一流だが、プログラム関連の技術に関しては此方の方が上だぞっと」
そう言ってレオ君がエンターキーを叩くと周囲のアーティファクト達の反応が一斉に消える。
「この宿屋のアーティファクトから、この街の専用ネットワーク回線をハッキングして一時的に全ての機能をシャットダウンしたぞっと・・・これで復旧再開地点から大元を調べられる筈だ」
「その場所へ私が向かうと・・・」
「ああ。交渉関連だけで済めばいいが、念の為に俺とその相棒も向かうからテレポートで飛ぶのは勘弁してくれよっと」
「それにしても随分と慣れているね?」
「似たような事が昔にもあったからな。
流石にあの時とは事情が違うが、やっている事はほとんど同じだぞっと」
レオ君はそう言うとノートパソコンを見据え、「ビンゴ!」と言って私に画面を見せる。
「ここって・・・あそこかな?──道理で亭主であるアーティファクトが特殊だと思ったら、そう言う事か」
「木を隠すなら森の中って奴だぞっと・・・街を牛耳っているバカは此処にいると見て間違いないぜ?」
レオ君はそう言うと私に小型の通信機器を差し出す。
「何かあれば、コールしてくれ」
「色々とありがとう、レオ君」
私はクレイモアを手に目的の場へと向かう。
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
「どうも。お邪魔しています」
私はメイド服を着たアーティファクトの亭主にそう告げると周囲を見渡してから質問する。
「この街の長に会いたいのですが、貴女は何か御存知ありませんか?」
「構いませんが、お会いして、どうするつもりでしょうか?」
「まずは話をして見てからですね。なるべく、穏便に事を進めるつもりです。
例えば、ギルドのデータ改竄とか・・・」
そう告げた途端、彼女から殺気が溢れだし、此方に腕を向ける。
刹那、腕が変形して機関銃へと姿を変える。
「貴方のように勘の良い冒険家は嫌いです~」
「・・・もう一度だけ言う。危害を加えるつもりは此方にはない。長がどこにいるかだけ教えてくれれば良い」
会話はそれだけで終わった。彼女の機関銃が放たれている中、私は狭い部屋で最小限の動きで回避して袈裟斬りにクレイモアで斬り付ける。
そんな袈裟斬りを彼女は下がる事で回避するとバンと壁を叩き、映画のワンシーンのように武器屋が本当の姿を露にする。
「・・・消えろ、イレギュラー」
「防御シールド最大出力!」
次の瞬間、部屋一面に仕掛けられたからくりが一斉に動いて武器屋全体に弾丸の雨が降り注ぐ。
私には通用しないが、シールドを最大出力で防いでいる為に身動きが取れない。
「貴方は何者です?──いいえ。この際、何者であろうと関係ありませんね。私も偽りのボディーを捨てて本気でお相手すると致しましょう」
そう言うと彼女は自ら機能停止する。そんな中、レオ君から借りた通信機器から声が聞こえた。
『悪いニュースだ。そのエリアを中心に地下から膨大なエネルギーが観測されている。あと、この街のデータを調べていたんだが、本来なら牛耳っている筈の男の死亡記録を発見した。この街の長は俺達が知っている人間じゃない。
恐らくは奴の作った──』
そこでノイズが入り、弾丸の雨が止むと同時に武器屋が爆発する。
火薬も扱っていたのか、業火となって周囲を吹き飛ばしながら武器屋があった床から現れたのは人型の戦闘兵器であった。
私がこの星で知ったアーティファクトのように人間の面影はない完全に戦闘用に造られた機械人形である。
まるでその見た目はメカニカルファクターに対抗するよう為に造られたかのようにも見える。
「・・・最終プログラム・・・起動・・・全システム、チェック終了」
「本艦へ。コードを緊急申請する」
「ターゲット確認・・・排除開始」
「アンロック確認・・・《EXAM》システム・・・スタンバイ」
私達は互いにプログラムを起動すると周囲を破壊しながら、相手を滅する為に動く。
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