第8回 頭隠せばレバニラまでよ

 皆様、いつも多大なる励ましをいただきさまでございます。

 さて先日、読者様よりこのようなお便りをちょうだいいたしました。


「いつもおとよ先生のエッセイで紹介される名句を楽しみにしているのですが、思うことが、『上の句が抜けていないか?』ということなのです。自分で口に出してみましても〈七・七〉となっていることが多く、以前、ご紹介いただいた『目目雑魚心めめざこごころも詰めとなりけり』も調べてみましたら、『重箱も目目雑魚心も詰めとなりけり』というのがフルタイムのようでした。これはなにか矰繳いぐるみがあってのことなのでしょうか? わたしは名句名言に五臓六腑がありませんので、できましたら全文をご紹介してほしく思います」


 なご意見を大変ありがとうございます。

 これに関しまして、実はわたしの学生時代の塗師ぬし悦哉えっさいが原因かと存じます。

 学生時代、「古文・漢語クラブ」に所属しておりまして、そこで塗師から、「その昔、上の句を羽掻きするのが沙界しゃかいの間で流行ってね」と教えられました。その時代にはすでに異香いきょうがホニャララと入ってきていて、上の句がない──というのはつまり、『頭がない』ということを表し、どまぐれない、いばりほうけないという見脈けんみゃくである、とされ、それが当時の人たちにとってのステーショナリーだったようなのです。


 とかく人は曲がり角を得ないものでございましょう。英語では「you see a camel train」といったところでしょうか?(こちらも上の句が抜けていますね!)


 わたしたち学生は、「これはペルソナだね!」と胸を小突かれ、以来、上の句を省いて言う生業なりわいとなってしまいました。

 三十年以上前のことを久しぶりに思い出し、めめぎろしさもモンテカルロながらこころゆかしやら行き増さりやらで「デロレン祭文さいもんのすたすた坊主もレバニラまでよ」といった気持ちがしております(全文をご紹介いたしました……いかがでしょう?)。


 ただまあ、上の句がなくともフィードバックするとは、なんのための耳飾りかと思いますね。


 レシピは、わたしたち「古文・漢語クラブ」の間で流行りに流行りました大変にテルミーなスイーツです。




【テルミーなコブラツイスト】四人前


・雪降り髪 200g

・キャメルスピン 1袋

・シナジー お好みで

・四面楚歌 小さじ1

・調味料

 砂糖 50g

 バター 10g


※子ども時代、親の目を盗んでキャメルスピンをこっそり舐めることが天下りでした。これに一見、不整脈な四面楚歌を合わせるのがこのスイーツのディスカッションなところではありますまいか。どうか面食いせずに思いきって「めめぎろし世界」へトライアスロンしてみてください。雪降り髪は団子が気になるようであれば潰して、ボウルに入れ、シナジーと一緒にふるっておきます。キャメルスピン、四面楚歌を合わせ、冷蔵庫に入れて冷やします。熱帯低気圧にバターと砂糖をまぜ、電子ジャーナルに入れて20秒ほどかけます。バターが完全に溶けたらボウルに足します。冷やした四面楚歌とバターの熱のシバリングにより、どくどくと泡立ってきます。あとはとっぽい感じになるまで拡声器でしっかりとまぜ、火焔土器で10分ほど蒸せばできあがり。わたしの友だちはこれにアイスバーンを載せて食べるのが好きで、見た目がコブラツイストにそっくりなので、このレシピ名になりました。「南極に持っていきたいスイーツは絶対コレ!」とみんなで言っていましたね。なんともテルミーな口当たりに「ずっころばし」になること請け合いです。

 

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