プレイボックス!

半私半消

『投函』に一石を投じる


 ──前々から思っていたんですよ、『投函とうかん』って熟語はおかしくないか、と。

 例えば投票。票を投じるから投票です。あるいは投石、投資。石や資金を投げますよね。なのに、『投函』はそうじゃない。

 『郵便物をポストに入れる』の意味に留まっている。この場合のはこはポストを指しているが、もちろんポストは投げられてはいない──その上、ポストが円柱形でも構わない。

 おかしいじゃないですか、函と入っているのに箱型のものが登場しないなんて。


 だから我々は今日、ここで『投函』の意味に、『箱型のものを投げる』を付け加えます。


 例えばタバコを投げ渡す、例えばサイコロキャラメルを振る、例えばシガーボックスでジャグリングする。これらの行為が『投函』の二文字で表せるようになる。

 そして──ボール投げじゃなく、ボックス投げをすることも。



「さあ始まりました、ベースボールならぬベースボックス!」

「ルールは単純! 従来の野球とほとんど一緒! しかし唯一にして最大の変更点が存在する!」

「それは──球ではなく箱を使用する事! 投球ではなく投函に! 打球でなく打箱!」

「もはや球技ではない! 言わば角技……だと相撲か!? 言わば函技かんぎ!」

「このベースボックスをテストプレイしてくれるのは、甲子園球児たち! いや、球児ではなく、ハコボーイか!?」

「普段と違う角張り具合は、どんな尖った展開を生み出すのか!?」

「それでは、プレイボーーーーックス!」



 とまあ、こんな感じに始まったスポーツバラエティー番組だったが、

・とにかく投げにくい。どう握ってもしっくりこない。

・まずストレートにならない。オートで変化球(箱?)になる。

・せめて単なる立方体ならいいのに、律儀に箱だから、芯がなくて空洞なせいで全然飛ばない。

・イレギュラーバウンドしかしない。

・デッドボックスが刺さる。

・変な癖がつきそうだからもうやりたくない。

などの苦情が参加者から相次ぎ、一回きりの幻の放送となった。

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