第1章3話:料理の技術

(これが……俺の、前世……)


前世の記憶が怒涛どとうのごとく流れ込んでくる。


あまりの情報量じょうほうりょうに、頭がふらつく。


しかし。


俺は歓喜していた。


俺が前世で、料理人として努力してきた記憶。


学んだ知識、習得した技術。


それらはラング・グレフィンドたる俺の脳にも流れ込んできている。


そして。


俺は気づく。


(前世の知識があれば、俺のスキルが活かせるぞ!)


俺が得たユニークスキル――――【料理錬金術りょうりれんきんじゅつ】は、料理の過程を省略してくれる力を持つ。


本来なら機械を用いないとできないような加工や調理も、可能となるスキルだ。


貴族令息だった俺には、役に立たないスキルだったが。


古井耕太ふるいこうたの記憶を得た、現在の俺には――――


めちゃくちゃ有用なスキルだ!


このスキルがあれば。


マヨネーズも醤油しょうゆ小麦粉こむぎこ片栗粉かたくりこも。


なんでも作り放題だ。


まあ材料があれば……だが。


とにかく前世の料理はだいたい製作が可能になる!


俺は興奮した。


「ど、どうしたんですの?」


そんな俺の様子に、キルティナは困惑していた。


俺は、言った。


「キルティナ!」


「……なんでしょう?」


「俺に執事ではなく、料理人をやらせてもらえないだろうか?」


「……え?」


キルティナは困惑を強めた。


彼女は聞いてくる。


「あなた、貴族令息だったのですから、料理なんてできないでしょう?」


「いいや、できる!」


と俺は断言した。


「俺が料理人であることを証明してみせる。だから、一度俺が作った料理を食べてみてほしい」


「……」


キルティナは困惑しつつ、答える。


「まあ、食べるだけなら構いませんけれど……」


「ありがとう!」


かくして、俺はキルティナていへとお邪魔することになった。

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