借りに出た香理

葵羽

第1話 上京

「もう〜!加梨、早く支度しないと飛行機乗り遅れるわよ」

「はーい!」


今里香理いまざとかりはそう言われ、空港に行く用意をしていた。

私は地元である福岡県内の高校に通う3年生。先日、高校の卒業式を無事に終え、来月からは大学に進学することが決まっていた。


しかし香理の進学する大学は福岡から遠く離れた東京都内の大学。つまり私は『大学進学と同時に上京する』ことになっていた。



私はこれまで一度もひとり暮らしの経験がなく、ずっと実家暮らし。父親は私の小さい頃に天国へと旅立ってしまい、母親の梨夏子りかこと2人で暮らしてきた。


今回私が上京したら大学の近くのアパートを借りて初めてのひとり暮らしをすることになる。今日は私が初めて実家を出て東京に引っ越す日、つまり上京する日。

私はもう高校も卒業したし、1人で飛行機に乗って1人で東京に行くつもりだったのだが…


初めて親元から離れてひとり暮らしをする娘にきがきでなかった梨夏子は、加梨と一緒に飛行機で東京に向かうことにしたのだ。

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