第5話 祝福の義へ参る

 皆から見送ってもらった後、馬車の中で予定確認という名の地獄を味わった…。

 ほんと、マジで何回、目の前の景色が暗くなった事か…

 だが、安心して欲しい。

 うちにはアカ先生がいらっしゃる!

 僕が覚えきれないことは全てアカ先生に聞けば大丈夫なのだ。

 と言うかだ、そもそも、数十人の特徴と名前をフルネームで覚えること自体、4歳児には無理な話なのだ!


 《マスター?ちゃんと自分でも覚えることはしてくださいね》


(分かってるって。ほんとに…)


 さて、僕は今、祝福の間という所にいる。

 ここは、祝福の儀をする専用の部屋らしく、地面に巨大で難解な魔法陣が刻まれている。

 先程、父と別れこの部屋で王女様と司祭様が来るのを待っている状況だ。


(あのガラスとか凄い綺麗だなぁ。前世で見た事のある教会とは別の美しさがある)


 祝福の間は王城のはなれにあり、きらびやかな教会って感じだ。

 周りを見てみると、派閥の集まりらしきものがちらほら出来ている。

 すると、ちょっと遠くから、1人の子供が近づいてきた。


「初めまして。私、アベル・ベリーと言います」


 そう言って、僕に挨拶をしてきたのは、髪は金髪のイケメン君である。

 身長は僕と同じぐらい、イケメンで周りがキラキラ輝いている気がする。

 チッ、イケメンが。


「えっ〜とー…」


 《マスター。王城で財務長官をなされているクリフ・ベリー様の一人息子ですよ》


 ちょっと、呆れ気味に言われた。

 分かってるって、ちょっと思い出すのに時間かかっただけだから。

 いや、マジで、ほんとに!!


 《・・・》


「初めまして、アベル殿ですね。僕は、レン・ドル・グラナータと言います。よろしくです!」


 僕は、飛びっきりのニコニコフェイスで手を差し出した。


「・・・」


 あれ?間違えたかな?

 え…、もしかして、僕、握手拒否されてる?

 え…、せっかく勇気出したのに?


「あっ、すみません。こちらこそよろしくお願い致します」


 数秒止まって、驚いたように慌てて手を出してくれた。

 良かったー。握手拒否されなくて。


「いやー、話しかけてくれてありがとう。なんか、みんなピリピリしてて、ちょっと怖かったんだよね」

「そうですね、今日は王女様がいらっしゃるので皆さん緊張していらっしゃるのでしょう」


 それにしても、アベル君は無茶苦茶硬い。

 もうちょっとフランクに話そうぜ。


「アベル君、僕達同い歳なんだから、タメ語でいいよ」

「えっとー、そうですね。この話し方は、父の癖が移った様なものでして、気にしないで頂けると…」


 う〜む、なるほど。

 財務長官ともなると私生活まで硬くなってしまうのか。


 それから、数分アベル君と話していると、外の方が騒がしくなってきた。


「あ、レン殿。王女殿下が到着したようですよ?」

「おぉ、やっとか」


 これで、遂に自分のステータスが見れる。

 それから数分と経たずして、祝福の間の扉が開かれ、男女1名ずつが入ってきた。


「あ、来られたみたいです。あの先頭を歩いている女性が、この国の第2王女。ルーキュリテ・スペランシアー様。と、その後ろを歩いているお方が、護衛のヴァリエンテ・シュッツ・エスコティエ様です」


 王女様は、金髪碧眼でとても可愛らしい。まだ、4歳だが、高貴なオーラを纏っており、将来かなりの美人になりそうだ。


 一方、護衛の方も、茶髪でキリッとしていて、真面目そうだ。それに同じ4歳のはずだが7歳ぐらいに見える程体が大きい。

 ちなみにこの護衛も僕と同じ四龍英雄テトラヘロスの子供みたいだ。


「かぁー、さすが王女様。なんかオーラあるなぁ」

「そうですよね。生で見ると、王女殿下の迫力で圧倒されてしまいます。噂では現段階で、既に王族の中で一番魔力があるとか無いとか…」


 へぇー、それはすごい。

 ん?ていうかも魔力量とかって、正確に分かるものなのか?


 《・・・マスター。この話、今朝の馬車でお父様が言ってましたよ》


(あははは、冗談だって。覚えてる、覚えてる)


 確か、最近共同開発された魔道具を使うことで、分かるようになったらしい。

 今日も、この後玉座の間にて、僕達、四龍英雄テトラヘロスの子供と王女様がこの魔道具を使いデモンストレーションを行うみたいだ。


 王女様も入ってきたので後は、司祭様が来るだけなのだが、王女様が入ってきてからと言うもの、王女様を巡って、ずっと挨拶合戦が繰り広げられている。

 子供と言えど王族と貴族と言った所か…。


「アベル君は、挨拶行かないの?」

「いえいえ、僕なんて行った所で、他の方の邪魔をしてしまいます…。それに、今行ったら王女殿下のご迷惑でしょうし」


 挨拶合戦が収まった頃、見計らったかのように司祭様が入ってきた。


「それでは皆様、これから祝福の儀を行います。それぞれ魔法陣の中にお入りください」


 とうとう、始まるみたいだ。

 聞いた話によれば、魔法陣が輝き祝福の間の装飾も相まって幻想的な光景になるのだとか。

 僕達、子供が全員入ったのを確認して


「では、始めたいと思います。途中で、魔法陣の外に出たりしないようお願い致します」


 そういうと、司祭様は膝をつき、小言で何やらお祈りをし始めた。

 数分それが続くと、司祭様はいきなり立ち上がり手を広げ僕たちの方を見た。


「我らが神よ、何色にも染まらぬ無垢な子供達に祝福を!!」


 司祭様が言った瞬間、魔法陣が輝きだし、魔法陣から粒子みたいな物がフワフワと可憐に舞いだした。


(なるほど…。これは凄い。現実の光景とは思えないほど綺麗で素晴らしい)


 粒子が可憐に舞い、僕たち子供の周りをまるで踊る妖精のようにフワフワする幻想的な現象が1分ほど続いた時、舞っていた粒子がいきなり、全ての子供達に吸収されるように入っていった。

 それから数秒、全ての粒子が無くなったタイミングで魔法陣の輝きも収まり、辺り一面シーンとした音が聞こえる程、静寂に包まれた。


 子供たちは、あまりの光景や出来事に、呆気に取られ余韻に浸り、司祭達は今回の主役である、子供達を邪魔しないように静かにただ待った。


「皆様、これにて祝福の儀が終了致しました。これより皆様は、世界に認識されステータスを得ました。ステータスと言ってみてください。皆様の目の前に現れるはずです」


 司祭様が放った言葉を皮切りに、周りの子供たちは、興奮したように、我先にとステータスと唱え始めた。


「ステータス」


 ――――――――――――――――――――


 名前:レン・ドル・グラナータ

 種族:半龍人精霊族ハーフドラコーンエルフ

 称号:邪神の呪いを受けし者、転生者

 魔法:神・結界魔法 (ユニーク)、神・召喚魔法、神・空間魔法、火魔法

【ユニークスキル】

 〈魂の柱廊アニマ・ストラーダ〉〈世界之禁書目録ワールド・インデックス

【スキル】

  〈計算Lv.10〉〈並列思考Lv.10〉


 ▼メッセージがあります


 ――――――――――――――――――――


 おぉ!!

 凄い、ほんとに出た!!

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