第17話
「あれ、宝箱じゃん。よっしゃ! 開けようぜ! ってグエッ!?」
「待て」
如何やら、先頭を歩いている遊矢が宝箱を見つけたらしい。早速駆け寄って宝箱を開けようとしていたが、同じく先頭を歩いていた石塚副会長に洋服の首根っこを掴まれて止まる。
「宝箱がこのダンジョンで見つかるなど、珍しい事もあるのだな。 このダンジョンでは滅多に宝箱が見つかる事がない為、他のダンジョンでの実習時に説明されるだろうが折角だ、説明してやろう」
如何やら、石塚副会長が宝箱の説明をしてくれるらしい。僕達は宝箱から5メートル程遊矢を連れて離れている石塚副会長の元へ集まる。
「宝箱からは皆も考えている通り金や武器や防具、アイテムやモンスターから落ちるドロップアイテム等が出てくる。何故、宝箱などという人工物にしか見えないものがダンジョンに置いてあるのか。まぁ色々な学説があって語りたいのは山々だが今はおいておこう。宝箱は三つの冒険者が稼ぐ方法の一つだ。残りはクエストの遂行、モンスターのドロップアイテムやダンジョン内で採掘出来るの鉱物等の売却だな。因みにこれはテストに出てくるから覚えておくように」
そう念を押した後、石塚副会長は一息つき続きを話し始める。
「だが、宝箱には注意すべき点がある。それは罠とミミックの存在だ。罠については、睡眠・痺れ・毒・石化・爆発・転移の五つがある。因みに爆発と転移は触れた瞬間に発動し、石化のみ難易度が高いダンジョンのみ出現する。そして、宝箱一番の脅威。それがミミックだ」
「え? 罠よりも怖いんですか?」
「そうだ望月。ミミックは基本的に宝箱から出てくることはない。まぁ稀に足が生えて逃げ回り、見失いやすい代わりにとんでもない宝を抱えるレアミミックもいるらしい。だが、通常種のミミックは宝箱の中で冒険者やモンスターを捕食しようと潜んでいる。万が一ミミックの出す触手に捕まったが最後、引きずり込まれてとんでもないダメージを受ける。20レベル以下なら即死する事もあるだろう」
「マジかよ、怖……」
「そこで、低レベル帯で誰も敵感知スキルや魔法を持っていない場合は、五メートル程離れて小石等を投げてみる」
そう言って石塚副会長は石を投げるが、反応は無い。
「これでこの宝箱はミミックではなく、爆発と転移の罠ではない事が分かった。罠については罠解除のスキルを持っている人間がいると便利だな、だが状態異常に関してはダンジョンに潜る以上対策はしているだろうから基本的に掛かっても問題ないだろう。この様にミミックに関しては対策が分かっているから、なにも考えずに開けて齧られる奴は死ななくても、暫く馬鹿扱いされて周りから笑われるだろうな」
……ははッ。たまーに低レベルの内に説明スキップしたせいで対策が解らず、ゲームでミミック引き当てて死んでたなぁ。あれってゲームオーバー後に陰で笑われたりしてたのかなぁ。
「さて。確かめたからもう開けて良いぞ、望月」
「はい! じゃあ早速……ってなんだこりゃ」
そうして、宝箱を開けた遊矢が掲げたのはボロボロの人形だった。
「それは致命避けの人形だ。一度だけ致命傷を防いでくれる人形、結構なレア物だぞ。因みに宝箱から出たアイテムは、ダンジョンから帰還後にしっかりと話し合って誰の物にするのか決めるように」
とりあえず、致命避けの人形はひとまず遊矢が持つことになり先に進んだ。
「それにしても、ダンジョンの攻略速度ってどれくらいなんですか?」
あの後宝箱をもう二個ほど見つけ、ダンジョンの3層に差し掛かって直ぐ。疑問に思い、僕は凛子さんに問いかける。
「ダンジョンによって違うな。例えば、このダンジョンは行こうと思えば一日で10層まで行ける。まぁ、道中のワーグに勝てないんだが。その場合。他のダンジョンはマッピング済みの上層であれば割とサクサク行けるが、マッピングされていない部分に差し掛かると極端に攻略速度が下がる」
「そうなんですね……」
「未攻略の階層は難易度も高いが、代わりに得られるリターンも高い。後、難易度の高いダンジョン、階層であればある程宝箱の出現確率が高くなる……な」
そう言った後、凛子さんは考え込み始める。
「どうしたんですか?」
「いや、さっきから薄々思っていたのだがやはりおかしいんだ。このダンジョンで宝箱が見つかる事自体極稀なんだよ。ここの難易度は極端に低いからな。なのに、もう既に二つも見つけている。学園ダンジョンだから、イレギュラーな事など起こりえないと慢心していたが、これは……」
教団がオークを強化してるから難易度が上がってるとか? ……あれ。それでも、ゲームの中では宝箱は3層と5層、7層に10層のボス戦後の宝箱だけだった。ここまで宝箱多かったっけ? ゲームと現実の違い? けど、話を聞く限り違いそうだよな。
「スエヒロ君、なんとなくで申し訳ないが嫌な予感がする。私は石塚君とも話して、今すぐ……」
「前方からモンスターが来ます! けど、あれはなんだ?」
「……は? ワーグに……黒いオーク!? そんな馬鹿な!?」
レベルが上がって索敵スキルらしいものを手に入れた遊矢がパーティーに報告、それを見た石塚副会長の上げた声を聞いて、僕と凛子さんはそれぞれ違う意味で驚愕に目を見開く。
「なんでオークがココに!? それに、黒いオークだと!?」
確かにオークが3層にいる事もおかしい、ゲームですら起こりえなかった事だ。だけど、それだけじゃない。どうして、ボスとして10層で待ち構えている筈の強化オークがこんな上層に居るんだ!?
そんな混乱した状況の中、僕達は戦闘状態に陥る。拭えない不安感を胸に抱きながら。
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一日が何故24時間なのか……。36時間位欲しい今日この頃。
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