第2話
衝撃の事実から暫く。僕は名残惜しそうな愛華と、ちょっとふてくされてる勇獅と別れて教室に向かっていた。ちなみに僕は1-Aで愛華達の1-Bとは別クラスで、そのことを知ると残念そうだったが『けど同じ学校だったなんて嬉しい! これから三年間よろしく!』なんて言ってた。……逃げちゃダメですか?
そんなこんなで教室に着いた。どうやら同じクラスになった新入生同士で交流し合っているらしい。
きっとこの機を逃したらボッチ確定になるだろう、違いない。なのでもう既に机に突っ伏して、幼少期の己の迂闊さについて小一時間反省会を開きたい気持ちを抑えていざ机から立った矢先、誰かに肩を抑えられた。
「よう、アイドルでS級美女の宮崎愛華とクラス分け掲示板の前で抱き合ってたとんでもない新入生ってお前の事だろう? 俺の名前は
「んな……」
僕はその声を聞いた瞬間、驚愕した。
望月遊矢。主人公、勇獅と同じクラスでギャルゲーに1人はいる親友ポジション的なキャラクター。メインヒロインを攻略する上で、重要な好みや噂を教えてくれる重要なキャラなのだが……。
「え、えっと。望月君?」
「遊矢で良いぞ、友よ。んで、どうしたら初日から国民的アイドル様とああなれるんだ?」
「偶々幼馴染だっただけなんだけど……。遊矢は同じクラス?」
「そりゃそうだろ? ここに居るんだから。いくらなんでも登校初日の入学式前から、自分のクラスから抜け出してよそのクラスに行ったりはしねーよ。それよか偶々幼馴染とか羨ま死ね」
「そ、そうだよね……あ、あははは。いや今しれっと死ねって」
おかしい、絶対におかしい。本来であれば望月遊矢というキャラクターは1-B所属なはずなのに……。なんでだ。僕っていう転生者が居るから何かがズレたのか?
「おい見ろよアレ! セイントヴァレー王国のお姫様だぜ! この学園に来るってマジだったんだ! くうー! 生で見てもやっぱり別次元なレベルで美人だな!」
僕が悩んでいる間にどうやら我がクラス所属、嘗ての勇者の出身地のセイントヴァレー王国という国のお姫様。
銀髪碧眼ロング、三大要素を兼ね備えた完璧美人でメインヒロインの内一人であらせられるアイリス・セイントヴァレー様がお越しになられたらしい。
「うん、やっぱりリアルで見ると超絶美少女だねー」
関わり合いたくないけど。
「いやーこの学園やっぱレベルが違うわ、中学とは段違い! 早く彼女欲しいー!」
遊矢がそんなことを僕の机を叩きながら大声で話し、僕は苦笑した。そんな時だった、そのアイリス姫様と目が合った気がしたのは。
「お、え? お姫様コッチ見てね? マジかよ! まさかの俺っちの時代来たか!?」
その噂のお姫様は目が合った後瞠目し、周りの談笑していた生徒たちに一礼するとこちらに小走りで近づいてきた。
「あ、え? マジ? マジで俺目当て!?」
遊矢を素通りして。
「有馬末広君、ですよね?」
「……え、アッハイ。そうですけど」
なんだなんだ? なんで僕の名前を知ってるんだ?
「私の事、覚えてないですか?」
「お、お恥ずかしながら……。えーっとアイリス様?」
「アイリスで良いです。そうですよね……。あの時は偽名でしたし、男装もしてましたもんね。けど長年夢見てた身としてはもう少しなんというか、そちらから気づいてくれたりとかロマンチックな感じを想像してたんですけど」
再会? 偽名? 待て待て待て待て、なんかすっごく嫌な予感が。
「仕方ないですよね。もう最後に会えたのも随分前になりますし……」
アイリス様、いやアイリスか。アイリスはそう言って目を伏せると、徐に周囲に呼び掛けた。
「申し訳ございません! 誰か! 誰か部活で使うようなキャップをお持ちの方おられませんか!?」
「おう! 俺中学の先輩から、嫌だろうがなんだろうが野球部の勧誘手伝わないと殺すぞって言われてたから持ってる!」
ありがとうございます。と断りながらアイリスは野球帽を入学式すらまだなのに、部活が確定してしまっている可哀想な丸刈り頭の生徒から受け取ると、しゃがみ込んで何やらゴソゴソしだした。そして。
「じゃーん! これならどうだ! 少しは思い出したか? 『ヒロ』」
ば、バカな。そのキャップ! その僕を呼ぶ時の呼び名! そしてそのスカしたキメ顔!
「な、う、噓だッ! そのスカした殴りたくなるようなキメ顔! まさかアーサー君ッ!」
バカな! あの確かにちょっとドジっ子な所があってメインヒロインなアイリスと、アーサー君が同一人物だと!? いや、思ったよりも共通点あったわ。
「え、反応する所そこ? しかも殴りたくなるようなって! 私そんなこと思われてたんですか!?」
アイリスのショックを受けたような顔を尻目に、僕の脳内は絶賛宇宙猫状態だった。
「な、なななな?」
「えっと、ほら。ヒロも知ってると思うんですけど、母が日本人だから昔一時的に里帰りしていたんです。だから変装した上で家を抜け出してたんですけど、家の事と日本語をしゃべれなくて一緒に遊びたくても遊べなかったから、遠巻きに見てたらヒロが一緒に遊ぼうって誘ってくれたんですよね」
「え、ああ。うん」
「あの時はすっごく嬉しかった。家に籠っているのも嫌で、だけど外に出ても誰とも一緒に遊べなくって……。それに、家の事情で男の子ともほぼ会った事もなくて、女の子とも距離があってヒロが初めてだったんです! 私っていう個人とちゃんと向き合ってくれたの!」
と瞳をとじて回想に浸るアイリスを見ながら、野次馬がどよめく。
「は、初めてって」
「おい。入学早々だが今晩の生贄、お前な」
そこ、野次馬うっさい。
「だからね、ずっとまた会えるかなって思ってたんだけど夢みたいで……。これから三年間またよろしくお願いします!」
「あ、うん。ヨロシクネ」
その後。驚愕のあまり生返事を返す僕を尻目に、アイリスが思い出語りを始めたので僕は今朝の凛子さんの呼び出しに応じる為に、断ってから教室を後にした。
そして重くなる足を引きずりながらも到着した生徒会室。
「はぁ……」
よし、もう現実逃避はよそう。ここはもう流れ的にきっと……。というか中学時代からなんか閃きかけてたのを蓋してたというか……。
「失礼しまーす……」
「フフフ! よく来たなスエヒロ君! どうだ驚いたか! この私高田凛子改め!
茶髪ポニテに平らながらもすらりと伸びた美脚が魅力的なメインヒロインの内一人、鈴木凛子が僕の眼前でドヤ顔をしながらその薄い胸を張っていた。
「知ってたッ!」
「ひうッ!?」
このポンコツ生徒会長はッ!
涙目になりながら驚く凛子さんを尻目に、僕は盛大にため息を吐いた。
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久しぶりに書こうとするとやっぱりリハビリが必要だなってなる今日この頃。愛華と口調もろ被りするからアイリスは基本敬語調にプロットで変えてたのに、気が付いたらタメ口調に戻ってたので修正しました。
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