地球にかつて住んでいた猿の一種

上面

最終話

 ある日、地球が宇宙人により買い取られ、人類は立ち退くことになった。当然地球から出て他に行くところなどないので人類は滅亡する。具体的には空間移動技術で強制的に地球から宇宙空間に放り出されるらしい。他の様々な生物も順次地球から追い出されるらしい。ノストラダムスの大予言ってこのことだったのかもしれない。

 そして俺は時間停止保存されコズミック博物館に猿の一種として保存されるらしい。なんか透明な棺桶みたいなものに入れられて。

「保存開始まで時間がありますので心残りの無いように」

 とグレイ型の宇宙人のコズミック不動産屋に言われたが、僅か一日で何をすりゃいいんだ。

 いつもと同じように学校に行くと俺以外は人類滅亡など知らんので、いつもと変わらん日常を過ごしていた。

 どうやって心残りの無い一日を過ごせばいいのか考えていると昼になり屋上に上がった。屋上には俺ともう一人しか来ない。

「セックスじゃないですか?」

 人類最後の日(俺以外)に何をすればいいのか野薔薇信濃(信濃野薔薇だったかもしれない)に聞いたらそのようなことを言われた。いわゆる絵に描いたような黒髪長髪大和撫子で高校二年間同級生で同じ部活なのでよく喋る。美術部だっけ?お互いにそれに所属しているが真面目に出た記憶がないので記憶が曖昧。たぶん友人だ。

「高校生は普通デリヘルを呼ぶ金なんてねえよ」

 デリバリーヘルスの業態については詳しく知らないがたぶん高校生が急に呼ぶぞとなって呼べる料金じゃない。今俺の全財産は五千円だぞ。いけるか?

「今日で仮に人類滅亡するならば私を押し倒すなりその辺の女子供を強姦するなりすればよろしいのではないでしょうか?」

「女子供を強姦するほどセックスに魅力を感じないな」

「そうですか」

 信濃はそう言って弁当箱を片づけて屋上の扉を開く。

「今日で仮に人類が滅亡だとしても、今まで楽しかったですよ『■■■■』」

 信濃は俺の名前を読んだ。ずっと昔に失って俺も忘れた名を。

 これはあの透明な棺の中で眠る俺の夢だったのだろうか。そうだ。

 俺は過去現在未来の連続性を失った中に生きている。時間停止されたといえど思考することはできるらしく、暇で暇でしょうがない。

 『俺』はコズミック博物館の太陽系第三惑星地球に住んでいた生物のコーナーに生体標本として置いてあるので皆さんも近くに来たときはご覧になるといい。俺は毛の無い猿の一種なので皆さんが見間違えることはないだろう。

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