ストリーム0:ミスト

六散人

【01】

ルクテロは、すべての武装を解除した平装のままでチルトクローテ艦外にでると、惑星ネッツピアの大気を思い切り吸い込んだ。その行為は、彼女の健康にとって著しく有害であったが、彼女が今置かれている状況では、それは些細なことでしかなかった。外は、ネッツピアが<霧の星>と呼ばれる所以である、濃厚な霧で覆われている。従って、ルクテロが吸い込んだ大気には、多くの霧が含まれていた。


――ソパムが言っていたように、この星の大気の臭いは、惑星ソタの臭いとよく似ているな。これはこの星を包む、この霧の臭いなのだろうか。

そんな感慨が、ルクテロの脳裏を駆け抜ける。そして今から少し前に、彼女の元から去って行った、部下の姿を思い浮かべるのだった。


――このような事態に陥ったのも、我々コジェムの驕りが原因だったのだろうな。

ルクテロはそう思った後、自分が無意味な自省の陥穽に落ちようとしていることに気づくと、

――今更だな。

と思い、苦笑するのだった。


――AIでも、この事態は予測できなかっただろうな。

彼女は様々な感慨にふけりながら、最後の一時を一人過ごしている。最早この惑星上には、彼女以外のコジェムは一人も存在していなかったからだ。


暫くすると、周囲の森林が騒めき始めた。

――いよいよか。これで私も、この星の進化の糧となるのだな。

彼女は、穏やかな心持のまま、静かにその時を迎えようとしていた。

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