破壊神の加護を持っていた僕は国外追放されました  ~喋る黒猫と世界を回るルーン技師の**候補冒険記~

剣之あつおみ

第1話 破壊神の加護

◇◇◇◇◇◆


その日、僕は結婚の約束をした。

その人との出会いは必然だったと思う。


・・・「運命」そう感じた。


容姿 仕草 匂い 性格

そんな知覚出来る感覚では無い。


今思えば多分「魂」が引き合ったのだと思う。


掛け替えのない自分自身の欠片かけらを見つけたような・・・

大切な思い出のパズルのピースが組み込まれたような・・・

表現出来ない程の嬉しさと楽しさと感動。


「大きくなったら僕と結婚しよう!」


相手もコクリと頷き、僕の提案を笑顔で了承する。

そして、自然にお互いの小指を絡めて指切りをする。


大切な約束


大人になったら必ず迎えに来る・・・

そして君の願いを叶えると約束を結ぶ。


――その瞬間。

世界の全てが輝きに満ちて溢れて僕達2人を祝福する。


こんなにも心が満たされた瞬間は無かった。




◆◇◇◇◇◇



瞬間的に頭部に衝撃を受けて身構える。

そこには僕の両腕と机。


意識が覚醒して僕は思い出す。


ここは学校で・・・今は授業中のはずだ。

僕はゆっくりと俯いていた頭を上げる。


何故か前の席のクラスメイトと目が合う。

後ろの僕の方を振り向いて、呆れているような気の毒な者を見るような視線。


更に顔を上げると毎日顔を合わせている男性教師が出席簿を持ち、呆れた表情で僕を見下していた。

なんだなんだ?不機嫌そうな顔をして・・・


40歳独身の冴えない教師。

しかし、何故か生徒には人気の高い国語教師で僕が在籍しているクラスの担任だ。

かくゆう僕も嫌いではない、むしろ話易さで言えば世界で104番目くらいにはランクインすると思う。


周囲を見渡すと同級生のほぼ全員がこちらに目を向けているのが見える。

友人達はそれぞれ違った意味を持った視線で見つめている感じがする。

半笑いだったり、気の毒な人を見る哀れみに似た表情だったりと、皆個性的だなと思った。


・・・あれ?

僕は何かしたんだろうか?


未だ微睡みの中にいる僕は、頭がぼーっとして思考が上手く纏まらない。

これは早朝の寝起きに良く有る症状だ、低血圧はつらい。


僕の状況を理解して無い表情を見て男性教師が溜息を付く。

もしかして彼女にでもふられたのだろうか?

溜息1つで幸せを1つ失うらしいぞ。


この教師の名前はゼイレン先生。

真面目で実直を絵に描いた教師の鏡だ。

時々天然な所が見え隠れするのが人間臭くて良い。


「6限とホームルームまるまる寝るとは良い度胸ですね。ラルク。」


どうやら僕は授業中に熟睡していたようだ。

まずいな、僕とした事が迂闊だった。


先生は基本的に優しい人だ。

きちんと謝罪をすれば大抵の事は許してくれる・・・はず。


「・・・ごめんなさい。」


僕は席から立ち上がり、本当に申し訳なさそうに頭を下げる。

いや、演技じゃないです。

心から申し訳ないと思っています、正味60パーセント程度は・・・。


教室から女生徒のクスクスと言った笑い声が聞こえる。

少しだけ気恥ずかしくて、俯いたまま赤面する。

異性はどうも無駄に意識してしまうというか・・・そういうお年頃なんです。


「もう少しで卒業なんですから、しっかりして下さいね。」


ゼイレン先生はもう1度出席簿で軽く頭を叩き教卓へと戻って行く。

1ポイントのダメージに愛を感じる。


今日は最後の授業を受ける日、皆進路も決まり自由登校となっている。

しかし無理して登校しなくて良いとなると、何故か全員出席すると言う異例の事態。


モラトリアムとかなんとか症候群と言うか思春期特有の行動原理。

「学校に行きたくない」から、「来ては駄目」になる境界線が、そういった意味不明な行動をさせるのだろう。

かくゆう自分も例外ではない。


今年、中等部3年生の僕らは来週には義務教育を卒業する。

皆もその後の進路をそれぞれ決めて、輝かしい未来へ希望を膨らませている事だろう。


もちろん僕の進路は既に決まっている。

両親の店を手伝い、立派な商人として店を継げるように頑張る事だ。


・・・と言っても両親と血は繋がっていないらしい。

僕は5歳の時に街で大規模災害に巻き込まれて両親を失い、偶然居合せた今の両親に拾われて育てられた。


ショックの為かは分からないが、5歳以前の記憶は一切覚えていない。

現在の家族構成は義理の父と義理の母、そして4歳年下の可愛い義理の妹が1人。

そして街の平民街で小さな雑貨屋を家族で営んでいる。


実の息子では無いのに実の娘と分け隔て無く育ててくれた両親には感謝の言葉も無い。

この恩は一生掛けてでも返して行きたい。


来週からは本格的に稼業を手伝い、仕入れ業務も父に教えて貰う予定だ。

そして面倒な学校の勉強から解放されると思うと自然と頬が緩む。


「叱られて何をニヤニヤしてるんだ?キモいぞラルク。」


不意に隣の席に座っている女生徒に口悪い言葉を吐かれる。

隣の席に座っているのは幼馴染のビクトリアだ。


短めに揃った金色の髪に長い睫毛、そして引き締まったスレンダーな身体。

彼女は気怠そうに頬杖をついて薄笑いを浮かべる。

”うざ絡み”も彼女がすると嫌味が無いのがとても不思議だ。

学校の七不思議に加えても遜色そんしょくはない。


彼女は幼い頃から見知っている。

幼馴染・・・俗に言う腐れ縁ってヤツだ。


「うるさいな、ほっといてくれ。」


僕は気恥ずかしくて席に着くと同時にそっぽを向く。


「ふふ、拗ねるな拗ねるな。」


そう言いながら僕の肩をツンツンと突き、揶揄からかってくる。

そんな彼女は気が強く男勝りな性格をしている。

喋り方もワザと男性を意識した喋り方をしており、僕としてはとても話し易い。


しかし幼馴染と言っても彼女は平民では無い。

伯爵位を持つ貴族の家系に生まれた言わば上級国民だ。


義務教育を終えた時点で彼女は高等部へ進学し貴族位を得て、やがて社交界デビューを果たすだろう。

本人は尊敬する父のように国王直属の騎士になると豪語していたが、女性貴族が騎士になる事が出来るのか疑問な所だ。


彼女は言葉を発しなければ本当に凛として可憐な女性だ。

騎士を目指している彼女は男性達に見下されない為に男のような言葉を使い、弱い所を見せない努力をしている。

本当に努力家で、そして意地っ張りなんだ。


「なんだよラルク?私の顔を見てぼーっとして。大丈夫か?」


「な、なんでもないよ!」


僕は無意識に彼女の整った横顔を見つめていた事に気付き思わず顔を逸らす。

いつからだろう、彼女を女の子だと意識し始めたのは。

いや、たまーに女性を意識させる仕草があると言うかなんと言うか・・・。


彼女は他人と接する時は基本1歩引いた所で壁を作る。

馴れ馴れしく接してくれるのは自分だけと言う事の優越感を感じないと言ったら嘘になる。

しかし子供の頃から一緒に過ごして来たせいか、恋愛とかそういった距離感じゃないのをお互い薄々感じていた。

しかし稀に感じる女性的な魅力にモヤモヤした感情が湧き上がるのも事実だ。

多分、いろんな意味で彼女を"好き"なんだろう。


異性の親友という特殊なポジションの彼女は、この学校で1番モテる。

それはもう同学年・下級生および男女問わずだ。

異性の幼馴染とは言え嫉妬すら覚えるレベルでとにかくモテる。


容姿端麗、成績優秀、性格は明るく社交性も高い。

そして王国近衛兵長に就いている父親に幼い頃より鍛えられた剣技は、既に並みの冒険者をも凌ぐ程の腕前だ。


彼女の武術と剣術は、15歳にしてB級冒険者に匹敵する。

喧嘩などしようものなら物理的にだろう。


たまたま実家が彼女の家の上得意様だったと言う理由だけで彼女とは昔から良くつるんでいた。

その為か昔から彼女を想う人々の僕に対する冷たい視線を痛い程感じていた。


彼女は平民と貴族という社会的格差を表面上気にして無いように見える。

本当の所は僕にも分からないけど、彼女は僕の事をどう思っているのだろうか?



ほどなく終業の鐘が鳴り、僕達は学校を後にする。

さも当然かのようにビクトリアと一緒に下校する流れになる。

こういう何気無い行為が周囲の嫉妬を産むんだけれどイチイチ気にしても仕方が無い訳で・・・。

もはや年中行事だと割り切っている。


「ラルク"検定"楽しみだな!」


「検定」とは中等部卒業と同時に大聖堂に赴き、「成人の儀」を執り行い「ステータス」という名称の特殊身体特徴を調べ、開示する事を指す。

そこで開示されたステータスを刻んだ個人カードが発行される。

それが成人した証として身分証明になると以前母親から教わった。

検定の結果次第で、その後の人生を大きく左右すると言っても過言では無い。


「そうか?僕に隠れた才能なんて有ると思うか?」


「分からないぞ?宝くじみたいな物だからな。」


宝くじなんて当たった事無いし。

期待値を考えると、それこそ晴天の日に雷が脳天に直撃する方が確立は高いだろう。

でも、やはり期待はしてしまうんだな。

1等が当たったら何を買おう?とか、どう使おうは庶民間の定番の話題と言っても良いだろう。


「ビクトリアは剣が使えるし、そう言った特殊才能ギフト持ってるんじゃないか?」


「・・・だと良いけどな。」


この世界には「加護」や「特殊才能ギフト」と言った先天的な物と、「特殊技能スキル」や「魔法スペル」と言った後天的に身に着くモノが有る。

冒険者になれば、おのずと身に着く事もあるらしいし。


極稀に神々の加護を刻まれた人も居るらしく、そう言った人々は国に保護されて高位役職で一生安泰な人生を送る事になるらしい。

なんとも羨ましい話だ。


ま、特別な存在や能力を持って無い事は自分が1番良く分かっている。

・・・ほんの少し奇跡的な事を期待しているんだけどね。


貴族街と平民街を別ける関所でビクトリアと別れ、実家へと帰宅する。

実家は街外れの小さな雑貨屋を家族で営んでいる。

上得意様が多いらしく、平民ながら何不自由の無い生活を送れていた。


「おかえり!お兄ちゃん!」


雑貨屋の裏口で馬車の積荷を下ろしている妹に出会う。

額に小さな汗を滲ませ積荷を運ぶ妹からヒョイと荷物を奪い家に運び込む。

結構重いなと思いつつ、これを持てるくらいになった妹の成長を実感する。

少し驚いた表情はすぐにパァっと花が咲いたように変わり、自然に微笑む。


「ありがとう。お兄ちゃん!」


この子は妹のエレナ。

初等部ながら、積極的に店の手伝いや家事仕事を手伝っている。

いつも笑顔を絶やさない、前向きで頑張り屋の良い子だ。


「偉いなエレナ。後は僕が積荷を下ろすから。」


「ありがと!じゃ私はお母さんの手伝いをして来るね!」


エレナは手を振って店の奥へと走って行った。

本当に素直な良い子だ。

もしエレナをいじめるヤツがいたら、真っ先にぶん殴ってやる!

喧嘩はほとんどした事が無いので勝てない可能性が高いけどな!


・・・と言っても、妹をいじめるヤツなんていない。

自分で言うのもなんだが妹は可愛いし性格も良い、きっと将来は凄く美人になるに違いないと断言できる。

そう常々思っている。


シスコン?上等だ!

成人の儀で「世界一のシスコン」と言う特殊才能ギフトが付いていても僕は誇りに思うね。

この子が幸せになるその日まで兄として守るんだ。


そして数日後の今日、僕達は9年間の義務教育課程を終え無事に中等部を卒業した。

僕はビクトリアの目を盗んでまっすぐ自宅へと帰り、自室のベッドへと寝そべる。


彼女は同級生や下級生に囲まれて身動きが取れない状況になっていたので、仕方が無かったんだ。

僕はと言えば伝説の木の下に呼び出される事も無ければ、わざわざボタンが複数付いた服を着て登校したにもかかわらず第2ボタンを要求される事も無く・・・同級生と雑談した後、帰路へと着いたのだった。


第2ボタンを渡す風習は伝説に記される異世界の習わしで、卒業記念品の役割を果たすと伝わっている。

今では思い出作りの一環として男性卒業生が女性在校生に送る親愛の印らしい。

・・・少しだけ虚しさを感じる。


「おーい!ラルク!生きてるか!」


ベッドでウトウトしていると自室の扉が勢い良く開き、思わず驚き戸惑う。

扉の前には息を切らせたビクトリアが立っていた。


間違い探しの得意な僕は彼女の服の違和感に一瞬で理解する。

朝と微妙に違うのはボタンが無くなっている所だ。

多分、たちの悪い追剥集団にでも毟られたのだろう。


それにしても鍵をかけ忘れていたとはいえ、ノックも無しに年頃の男の部屋にズカズカと入って来るのは正直どうかと思う。

見られたらマズイ事をしているタイミングだったらどうするんだよ全く。


「お前さぁ!勝手に帰るとか酷く無いか?!」


「あの状況で何言ってんだか。告白の順番待ちの行列とか正気じゃないだろ。」


伝説の木の下で行列を作って告白の順番待ちとか罰当たりにも程がある。

伝説の木を植樹しょくじゅして増やさないと学校にクレームが入るぞ。


「ぜ、全部断った!・・・それより大聖堂行こうぜ!」


・・・しかも全て玉砕とか、新たな伝説になるレベルじゃないか?


どうやら彼女のお眼鏡に適う相手は居なかったと見える。

何故か少しだけホッとした自分がいた。


不意にビクトリアが僕の胸の第2ボタンを素早く毟り取った。


「貰ってくれる相手がいなかったんだろ?記念に貰ってやるよ!」


彼女は悪戯っぽい笑顔を浮かべる。

なんなら10個以上付いてるボタンを全部貰ってくれ。


僕は眠い目を擦りながらビクトリアに引きずられるように大聖堂へと向かう事になった。

卒業式当日は混んで時間待ちが発生するから明日以降でも良いのに・・・。


「ほら!行こうぜ!」


ビクトリアに腕を掴まれ、渋々と家を出る。

家の入口でエレナとばったり遭遇する。


「あれ?お兄ちゃん出かけるの?」


「ああ、ビクトリアこいつがどうしても成人の儀に行こうと聞かないんだ。」


「そっか、お兄ちゃんいってらっしゃい!お姉ちゃんも気を付けてね。」


妹の笑顔に少しだけ心を癒して貰い、僕達は大聖堂を目指した。

この時、僕はこの後に起こる悲劇を知る由も無かった。


-大聖堂-


街の南端に存在する大聖堂は聖職者の中でも最上位の「教皇」や高位の聖職者が住む施設で、主に病気や怪我等の治療を有料で行ってくれる場所だ。


高位の聖職者ともなれば上位魔法ハイスペルを使い欠損した体を治す事も出来るらしい。

しかし、かなりの金額が掛かるので上位の貴族位を持った人々しか利用出来ない場所だ。

庶民の僕はお目に掛かる機会は一生訪れないだろう。


ステータスを調べる事は国が義務付けているだけ有って中等部卒業後1度目は無料で行える。

その後は有料になるが任意でステータスの記録更新は可能だ。


大聖堂の大広間は一般開放されており、中央通路の奥には巨大な女神像が聳え立っている。

懺悔室や僕らの目的の検定を行う場所は別室になっている。

到着時間が遅くなったのが幸いしたのか、思ったよりも人の姿は少なく閑散としていた。


約30分の待ち時間の後、僕達の番が回って来た。

聖職者の案内で部屋に通され、儀式を執り行う司祭の前へと並ぶ。


部屋には同学年と思われる男女が多数おり厳かな雰囲気の中、順番待ちをしていた。

卒業後と言う事も有り、同世代と思われる他の区画から来た人達が待機している。


最初はビクトリアが検定を受ける。

腰程の高さの台座に石板のような物が備え付けられている。

その石板に両手を置き瞑想をする、それだけで検定は終了すると言う。


眼前に設置された魔法の水晶で造られた大型モニターにステータスが表示され、それをカード状の身分証へ加工する訳だ。

ちなみに完全公開制で、大聖堂に居る誰でもそのモニターを見る事が出来る。


正直プライバシーとかそういうのは良いんだろうか?

実際、希少な特殊才能ギフトの持ち主をスカウトに来ている人間もいるらしい。


部屋には同世代の男女と聖職者達がモニターを食い入るように見ている。

これだけオープンだと自分の番で特殊才能ギフト「世界一のシスコン」と表示されたら恥ずかし過ぎる。

僕はあっさりと過去の安い誇りを破棄する決意をした。


巨大モニターが一瞬輝きビクトリアの能力が表示される。


加護:「大天使の加護」

特殊才能ギフト:「カリスマ」「剣聖」


滅多に無い加護が付いていたらしく周囲の聖職者や住民から騒めきが起きる。

大聖堂の職員の聖職者や聖騎士達も駆け付け大騒ぎになる。


「大天使様の加護だ!」

「初めて見ましたぞ!」

「い、急いで枢機卿にお知らせしろ!」


大天使様はかつて滅びかけたこの世界を救ったとされる伝説に語り継がれる存在だ。

確か破壊神がこの世界を消滅させようとした時に世界を救った異界の使者のリーダーだったと伝説が残る。


口伝に近い御伽話に出て来る人物の加護とは驚きだ。


「え!?ええっ!?」


本人も事態が飲み込めず挙動不審になり僕に助けを求めるような視線を向けていた。

結局、周囲の注目の中ビクトリアは奥の部屋へと通されて行った。


職員の話では1000年に1度の逸材的な加護らしく、間違いなく国王直属の重要ポジションへとなるだろうと話していた。


「ビクトリア凄いな・・・。」


僕の幼馴染が実は凄い人物だったんだなと改めて関心する。

何人かの後に自分の番が回って来た。


前の人達のステータスを見ていたが加護を持っている人物は1人もおらず、特殊才能ギフトすら「大工の腕」や「詩人の喉」と言った比較的聞いた事の有る物が多かった。

そう考えるとビクトリアの加護や特殊才能ギフトは本当に特別だったんだなと思う。


「さぁ、両手を石板に置いて瞑想をして下さい。」


少し緊張しながら、目の前の司祭に促されるままに石板に触れる。

少し冷たい石板にふれると、その石板が体の一部になったみたいな不思議な感覚を覚える。


ゴクリ・・・僕は周囲の視線が気になり生唾を飲み込む。

もしかしたら僕も「勇者」とか、超絶レアな特殊才能ギフトとか付いてるんじゃないか?


幼馴染のステータスを見て、少しだけ期待に胸を膨らませる。

そして目を瞑り瞑想をする。


「ぎゃぁぁ!!」「げぇ!!」

「ひぃ!!」「うわぁぁぁ!!」


周囲から今までで1番大きい歓声が上がる。


・・・・うん?

歓声じゃない、なんか叫び声や悲鳴だ。


僕は目を開き、眼前の水晶モニターを見上げる。

そこで信じられない光景を目にする。


加護:「破壊神の加護」

特殊才能ギフト:「不死状態」「魔族隷属」「意思超越」 


・・・とだけ表記されていた。


「なっ・・・!」


流石に自分でも目を疑ってしまった。

おおよそ一般人が得られるステータスには見えない。


破壊神の加護?

かつてこの世界を滅ぼそうとした伝説上の存在だ。


神や女神、天使や精霊の加護は極稀に得ている人が居るらしいが、破壊神なんて聞いた事が無い。


それに特殊才能ギフトに表示されている「不死状態」とか「魔族隷属」ってどういう事!?


不死状態と言えば闇を冠するモンスターの種族に不死種アンデッドという名称が付く者が居る。

腐敗生命種ゾンビ骸骨生命種スケルトン、そして吸血鬼種ヴァンパイア等の闇の眷属がそういう総称で呼ばれていると授業で習った。


「意思超越」というのが何か分からないけど、まるで魔王にでもなれと言うような禍々しい加護と特殊才能ギフトが水晶に映し出されていた。


「うわあぁぁぁ!」「ば、化物だ!!」


周囲から口々に悲鳴や罵声が飛び交う。


先程まで群がっていた人々も散りじりになって逃げだす始末。

その場に居た2人の聖騎士が武器を抜き、僕に向かって剣を構える。


「て、抵抗するな!」

「お、大人しくしろ!!」


騒ぎを聞き付けた大聖堂に常駐していた聖騎士が更に集まって来る。

そして10名の聖騎士が僕に剣を突き立てて取り囲む。


一体何だって言うんだ、これじゃまるで犯罪者だ。

僕は無抵抗のまま拘束されて強制連行される。


「何だよこれは・・・夢だと言ってくれ。」


僕は成人すると同時に、自分でも知らなかったとんでもない事実を目の当たりにしたのだった。

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