箱について

最時

第1話 箱の役目

 KAC今回のお題は「箱」

 広いお題だ。

 狭いお題で書くことを悩むのは当たり前なのだが、こういった広いお題も意外と書くことを悩む。

 そしてこの「箱」というお題は、これまで参加したお題の中で最も広いお題じゃないかと思う。


 「箱」と辞書でなく、インターネットで「箱 意味」で検索すると、ものを入れる器などと出てくる。

 多くの場合は方形、と言う注釈も書いてあったが単純に器と解釈するとあらゆるものが箱と捉えることが出来ると思う。

 一般的にも箱と呼ばれる建物や自動車、その中の部屋やギアボックスなどの部品も箱と呼ぶことが出来る。

 建物や機械は箱の集合体だ。


 器と解釈すれば一般に箱と呼ばれないものも箱と解釈することは出来ると思う。

 食器はその名の通りだが例えば袋も、ものを入れる器だ。


 そして器と呼ばれないものだって解釈で器になる。

 今、この作文に使っているパソコンも様々な部品を収めた箱だし、入力しているキーボードもキーを収めた器と捉えることが出来るし、キーもそれぞれが文字を収めた箱と解釈するのは少々強引か。


 そこまでいくと最早ありとあらゆるものが箱だ。

 空気や水も様々な物質を内包する器と見ることが出来るし、酸素O2や純水H2Oも原子などを内包する箱。

 原子は陽子や中性子の箱。

 最終的にはエネルギーやら質量とかの量子物理の話になって、宇宙は箱ででてきているとか。



 さて、話を戻して、箱は中身があっての箱だ。

 中のものを護ったり、また中のものを隔離したりする役割がある。


 明日は東日本大震災があった日だ。

 大津波により福島原発は電源を失い、中身の制御が出来なくなり、箱が破壊された。

 隔離されていた放射性物質が箱から出て、周辺を汚染し人々の生活にも大きな被害を与えて、復興の大きな妨げとなった。

 原子という箱を破壊して取り出すことの出来るエネルギーを原発という箱でコントロールしていたわけだが、想定を超える地震などでそれは大きな被害をもたらすと言うことが現実となった。

 現在ある程度、箱として機能しているようだが、完全な状態でないため中身を取り出して解体することになっているが、やはり想定していなかった事故でなかなか進まない。

 他にも原発はいくつかある。

 何があっても完全な箱になっているのだろうか。



 中身あっての箱だが、その役割以上に箱自体に大きな価値があるものもある。


 例えば、沈金や蒔絵で装飾された輪島塗の箱だ。

 職人の高度な技術と手間を掛けたその箱は、中に入れるものよりも遙かに価値があるものがある。

 そういったものは実際、箱として本来の役目は果たしていないと思うが、それ以上に多くの人に感動を与えていると思う。


 かなり前の話になるが石川県の美術館で輪島塗の蒔絵箱などを見せてもらったときは、精密さや美しさに魅入ってしまいそこから離れがたいものを感じたのを今でも覚えている。

 その後も各地の美術館で輪島塗を見ることがあり、やはり美しいと思った。

 自らの心を輪島塗の箱に例えるのも厚かましく思えるが、そのように装飾してもらったように思える。


 1月の地震で多くの工房や職人さん達が被害を受けたと思うし、そうでなくても伝統工芸を伝えていくことは大変な事だと思うが、後世に伝えていくべき価値あるものだと思う。

 早く能登が復興して、輪島塗の職人さん達が創作活動に集中できるよう祈りたいと思う。


 ずいぶん前に金沢に三年ほど住んでいたのだが、今回これを書いていて久々に輪島塗を見たり、落ち着いたら能登に行きたいと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

箱について 最時 @ryggdrasil

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説

呪いのささくれ

★0 現代ドラマ 完結済 1話