Go with the flow
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実家のダイニングキッチンのテーブルには、季節由来の食品がよく置かれている。春には春の七草といちごに蕗の薹、夏にはトマトやナスにとうもろこしなどの夏野菜、秋には裏山で採れたキノコと栗にさつまいもと新米。田舎の農家ならではの地産地消ラインナップ。
冬には、時たま高価な冬キャベツが親戚経由で送られてくるが、食べ盛りな子供の僕がいないうちに消費されている。そんな時期に、僕が家にいるあいだよく食卓にあがるのは、煮込んだホルモンでぎゅうぎゅう詰めの臭い鍋だ。
「これがねば冬は始まらねよな」
上機嫌でホルモン鍋をおたまでかき回しながらもう片方の手で喫煙する父の隣にて。僕は、野菜しか入っていない簡素なシチューをひとりで作る。
真夜中なのに換気のために開けられた窓から侵入して頬を撫でる夜風が首筋まで冷やしてくるので、真冬の今の時期は調理中にマフラーが欠かせない。
ワンカップの焼酎を飲み干した父親が、酒臭い息を吐きながら話しかけてくる。そこに煙草の匂いも合わさると悪臭でしかない。
「鶏肉入れねなが」
「鍋料理に入れる鶏肉って、食感が気持ち悪いから」
「あんべわりい感性だな、他の肉は?」
「僕の食欲がないから、今日は野菜だけで作るよ」
「とじぇねえ料理だ」
「やがましね、みったぐね仕上がりならねならいいべさ……」
このときの父の言葉が、
僕には理解できなかった。
料理に寂しいも虚しいもあるのか? それなら、楽しいとか苛つくとかもあるのだろうか?
僕がそれを理解したのは、
人のために料理を作ってから。
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