学生トーク「箱編」

山田 武

学生トーク「箱編」



「──箱、についてどう思う?」


「仕舞う物?」


「それもある。けど、それ以外にもいろいろとほら……ハリーアップ」


 早く言え、と促してくる友人にイラッとするがグッと堪える。

 改めて考えれば思いつくこともいくつかあるので、それを発散するのは後にしよう。


「漢字で書くと『箱』……まあ、竹冠と木と目か。もともと竹で作っていたとか、そういう感じみたいだな」


「ふむふむ」


「だから物を仕舞う立方体とか直方体とか、そういう感じの物も箱の字を使うわけだ。たとえば箱舟、あと箱庭……囲われているような感じのものにもその字が入るんだな」


「おおっ、なるほどそれでか!」


 スマホで軽く調べられるのは、まあそれぐらいだろうか。

 詳しく調べれば分かるだろうが……その前に、ふと思いついたことを口に出す。


「──箱推し」


「!」


「アイドルのファンが言うヤツだけどさ、たしか個人じゃなくてグループとして応援していることを指す言葉だよな? この場合の箱も、今回の話題に入るのか?」


「……そう、だな。たぶんありだな!」


 こいつの判定はともかく、それならそれで俺も調べてみたい。

 さっそくスマホで『箱推し』と入力して、情報を集めてみる。


「……」


「ど、どうだ?」


「箱推し、ってのはアイドルとかが最初、ライブハウスで活動していることから派生したみたいだな。箱、つまりそのライブハウスに居るメンバー全員を丸っと応援したい、そういう意味で箱推しってことになるらしい」


「へぇ、でもライブハウスなのか」


「その辺はどうでもいいんじゃないか? 全然関係無いけど、テレビもある意味箱なわけだし。わざわざ現場に行かずとも、そうやってテレビ越しに見るグループのメンバー全員の応援をすれば、それも箱推しだろう」


「…………あれ、俺たちっていったい何の話してたっけ?」


「箱推しだし、アイドルのことだろう?」


「そう……だっけ? まあ、いっか」


 物質的に存在する箱、そして概念的な箱もまた存在するわけだ。

 ……奥が深い、改めて調べてみて分かることもあるんだな。


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